TECHNO-FRONTIER 2020 技術シンポジウム

第34回 EMC設計・対策技術シンポジウム
企画委員インタビュー

企画委員インタビュー
三菱電機㈱
先端技術総合研究所 電機システム技術部 主席研究員
白木 康博氏


2019年開催のテクノフロンティアシンポジウムにはたくさんの技術者に参加をいただきました。現在、2020年の「EMC設計・技術対策シンポジウム」に向けて、開催内容の検討が進められています。次回シンポジウムの聞きどころを中心に、企画委員の白木氏にお話を伺いました。

普段聞けない話が聞けるシンポジウム


--- 白木さんの経歴を教えていただけますか?
1991年に三菱電気電機に入社し、当時材料研究所で磁性材料や変圧器等の開発に携わっていました。その後、96年に兵庫県尼崎地区の当時中央研究所(現先端技術総合研究所)に転勤し、EMC、ノイズ対策に関する開発に取り組むことになりました。
近年、自動車や鉄道分野などに用いる車載電気・電子機器では、小型化・低コスト化・高効率化により、EMC対策が困難になっています。そこで、高性能なEMC対策部品を試作後に追加するだけでなく、設計段階で低ノイズ電子デバイス実装やEMC対策部品の最適実装を開発するEMC設計がますます重要になってきています。

--- 社内、社外で技術者の教育にも関わっているとお聞きしていますが?
弊社の場合、全社に教育を担当している部署があります。
全社向けの教育講座があるのですが、そこで講座長や講師を努めています。
ノイズ対策は共通基盤技術になりますので、幅広い若手に対して教育をしています。また、社外で講師をすることもありますし、このシンポジウムでは、EMCの企画委員とコーディネーターも務めさせていただいています。
今年でEMCの委員は4年目になりますが、1年目は3日目のEMC対策関連の講演コーディネーターを務め、2年目と3年目にはパワエレに関するコーディネーターを務めました。
来年度は静電気放電(ESD)に関するコーディネーターを務める予定です。

--- テクノシンポジウムでは他のセッションも積極的に聴講しているとのことですが?
このシンポジウムは、情報収集の場として、非常に優良ですので、興味を持ったセッションにはできるだけ参加するようにしています。
私自身がコーディネイトしているセッション自体も私自身が聞きたい内容の講演を依頼しています(笑)。
弊社でも大学の先生を呼んで個別に講演会をさせてもらっていますが、民間企業での講演に躊躇される先生もいます。そういったことを考えると、普段お聞きすることができない先生のお話を聞けるこのシンポジウムは非常にありがたいです。


静電気放電(ESD)を網羅的に解説


--- 今回のセッションでコーディネーターを務めていただきますが、セッションの内容について、解説していただけますか?
EMC対策設計には大きく分けて2つの方法があります。「ノイズを抑えるエミッションに関する技術」と「入ってくるノイズに誤動作させない、イミュニティ技術」です。本セッションはイミュニティ技術の一つである「静電気放電(ESD)」に着目して構成しています。
ノイズを抑える技術は学会や文献でも発表されていますが、ノイズを誤動作させない技術はなかなか見つけにくいところです。一般的にノイズを出す伝播経路と出さない伝播経路が同じ場合には、ノイズを出さない機器はノイズを受けにくいと考えられます。しかし、イミュニティ試験は、様々な電圧振幅、周波数、印加場所で試験するために、ノイズの出す伝播経路と異なる場合が多く、ノイズを出さないから誤動作しにくいというものでもありません。そういうことで、技術者が情報収集しにくい分野の技術を選びました。
静電気は昔から課題とされていましたが、その課題がさらに顕在化してきていると思います。しかし、だんだんとその仕組み自体が解明されてきて、設計で対応できるようにもなってきています。今までは熟練者の経験で対応してきたことが解明されてきているので、明確な技術として提示できるのではないかと考えました。

--- どのようなお話が聞けるのですか?
最初にルネサスエレクトロニクス株式会社、奥島様に半導体の視点からお話をしていただきます。次にシステム設計の面から、パナソニックの徳永様に「基板に実装するESD対策素子」について講演いただきます.最後にノイズを印加する機器ですね。一般にはESDガンと呼ばれています。それについてノイズ研究所の戸沢様にお話ししていただく予定です。

--- 聞きどころは?
ESDなのですが、半導体の視点やシステム設計の視点、試験機器からの視点と、あらゆる視点からの話が聞けることですね。幅広い技術を網羅的に聞くことができます。各講演者がメーカーの第一線者なので、定性的な話だけでなくて、実験結果に基づいた具体的な話が聞けると思います。ノウハウもお話いただけるのではないかと思います。


初学者から熟練者まで


--- 参加者のみなさんからの質問にも答えていただくようになりますが、白木さんにも深いところを講演者に聞いていただければと思います。
そうですね。私自身も半導体の中身などは理解していないこともあります。
試験の機器は知っていますが、規格に書かれていないパラメータでも印加レベルが変わるということもあるので、そういった話もしていただけるのではないかと思います。コーディネーターとして、ご参加いただく方が役に立つ情報を引き出したいと思っています。

--- どんな方に参加していただきたいですか?
2019年までは、このシンポジウムの3日目はEMCの初学者を対象にして、EMC対策のやり方や基本的な考え方を教える講演にしてきました。しかし、今回の静電気放電の講演に関しては、実務経験者にも学ぶことが多いセッションになっています。初学者だけでなく、EMCを実際に設計されている技術者にも十分に満足していただける内容だと思います。多くの技術者の参加をお待ちしています。


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