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小会のさまざまな活動を紹介しながら、これからの経営課題を予見し、課題解決のヒントを探っていきます

【第14回】2026 GOOD FACTORY賞® 受賞企業講演会〜優良工場の実践事例に学ぶ〜

受賞講演(6) ファクトリーマネジメント賞
伊藤忠丸紅鉄鋼 Premium Steel Processing Co., Ltd.
Release June. 2026

2026 GOOD FACTORY賞 表彰式イメージ
[講演内容]事業変化に伴い、事業ポートフォリオの変更と日本・タイ融合型マネジメントを目指して挑んだReborn Project(企業再生プロジェクト)
伊藤忠丸紅鉄鋼 Premium Steel Processing Co., Ltd.
President
昼田 和弘 氏
Chief Manufacturing Officer
Udom Notesiri(ウドム・ノトシリ) 氏
※掲載の所属役職については、2026年3月時点といたします。

会社沿革と活動前の状況

Premium Steel Processing Co., Ltd.(以下、PSPC)は、タイ・チョンブリー県北部に位置し、現在は、自動二輪・四輪車用鋼管の製造、切断加工・熱処理加工事業を展開しています。
当社は1997年、現地の鉄鋼問屋の鋼板加工事業として操業を開始しました。2004年、タイで自動車部品加工事業を展開するタイサミットグループのタイサミットオートパーツが出資し、翌年から鋼管製造事業もスタート。2008年、伊藤忠丸紅製鋼が株式の57%を取得し、タイサミットグループとのJVAを締結しました。
伊藤忠丸紅製鋼(MISI)は、伊藤忠商事と丸紅の鉄鋼製品部門が分社統合して誕生した鉄鋼の総合商社であり、鉄鋼製品のトレードはもちろん、PSPC同様の製造系事業会社も有しています。また、タイサミットグループは、タイ国最大の自動車用部品加工メーカーです。PSPCにとっては株主であり、自動車メーカーへのサービスをともに供給する最良のパートナーでもあります。当社は現在、日本人マネジメントはMISIから出向している社長と現地採用の技術アドバイザーの2名のみで、ほかはすべてローカルメンバーで運営しています。
今回受賞の対象となった活動は、鋼板加工事業からの撤退と鋼管事業の強化をはじめとする企業再生の取り組み「Reborn Project」です。2010年代、タイの自動車生産は右肩上がりで上昇し、当社の鋼管製品も順調に生産を伸ばしていましたが、コロナ禍による生産台数の落ち込みとともに業績が悪化しました。そのタイミングで事業の将来性を見極め、2021年、鋼管事業の強化を決定。この方針転換を「Reborn Project」と名付け、企業再生のための活動を開始しました。
Reborn Projectの具体的な取り組み内容は、製造部門のChief OfficerでReborn Projectの中心人物であるウドムより紹介いたします。

Reborn Project:活動の背景

2021年当時、当社の鋼板加工事業は設備の老朽化が進み、厳しい製品仕様への対応が困難な状態にありました。さらに、ローカル加工メーカーとの競争激化、採算性の低さなど、多くの課題を抱えていました。そこで、将来に向けて持続的、安定的に発展していくため、鋼板加工事業から撤退し、技術の高い鋼管事業に特化して生産能力の拡大と技術を高める設備投資を行うことを決定しました。
事業環境の変化に伴うこの「選択と集中」を実施するとともに、会社再生のためタイ人従業員が同じ目標に向かって自ら考え、行動し、全従業員にとって幸せと誇りある会社に生まれ変わることを目的とした活動が「Reborn Project」です。

Reborn Project:①マネジメントスタイルの変更

Reborn Projectには、大きく5つの柱があります。①マネジメントスタイルの変更、②「MISI WAY ものづくり」の導入と実践、③事業の効率化、④人材育成制度開発、⑤SDGs取組項目の拡大です。
まず①マネジメントスタイルの変更ですが、日本人主導によるトップダウン経営から、日本人とタイ人による融合型経営体制に転換。日本人社長1名とタイ人副社長3名による「Top4」とChief Officer体制を構築し、各Chief Officerは担当分野に対して高い責任感とリーダーシップを発揮するようになりました。
さらに、組織を全社統一の階層とし、各階層の責任をKPIで見える化しました。これにより、全従業員に経営方針・目標を明確に共有することが可能になり、各種活動に向けた意識とモチベーションが向上しました。Top4が経営方針、目標、KPIを明確に打ち出し、それを各階層に伝達して、部、課、係、最終的には個人レベルまで目標を展開します。
方針の説明・伝達はトップダウンで行われる一方、目標達成のための施策はボトムアップで策定しています。現場の従業員は、スーパーバイザーやマネジャーを通じてゼネラルマネジャーに提案や提言を行い、ゼネラルマネジャーとTop4による会議体で対応を検討します。また、四半期ごとに開催される労使委員会でTop4に対して各活動の問題や課題を提示し、課題解決に向けて協議を行います。こうしたトップダウンとボトムアップを組み合わせたスタイルで、持続可能な透明性の高いマネジメントを実現しました。

Reborn Project:②「MISI WAYものづくり」の導入と実践

「MISI WAYものづくり」は、MISIグループ製造系事業会社の指針として作成されたものです。それをPSPC向けにアレンジし、タイ語に翻訳して従業員に配布して教育・周知を図りました。
「MISI WAYものづくり」における「ものづくり診断」では、方針管理、安全衛生管理、5S活動、品質管理、コスト&歩留まり、生産性向上、点検・保全、人材育成の8項目について、管理系、活動系、結果系の3要素に重点を置いて評価しています。診断で明確になった課題は、対策、改善し、次年度の診断でレベルアップするというPDCAを回しています。
着実で継続的な取組の結果、市場シェア、販売数量の拡大につながり、連続休業無災害(2026年3月9日現在1294日)も継続中です。各評価で基準を上回る高得点を獲得し、2024~26年度は親会社より「モデルファクトリー」に認定されました。

Reborn Project:③事業の効率化(鋼板加工事業から鋼管製造事業へ)

3本目の柱が、事業の効率化です。自動車産業は、原材料分野を含め、競争が一層激化しています。軽量かつ高い耐久性を備えた材料の開発が求められるとともに、鋼管の製造プロセスにおいても、急速な需要変化や市場動向に柔軟に対応できる体制が必要とされています。
当社では、新製品・新技術開発は内製でエンジニア部門が主導し、製造工程の改善、新製品開発の実現可否や製造工程設計など、製品戦略について検討しています。また、タイ国内の鉄鋼メーカーと共同で原材料の開発を行い、高付加価値製品である高張力鋼管、GIメッキ鋼管の製造技術を確立。原材料の調達からコイルの加工、製造、焼入に至るまでの一貫した鋼管生産プロセスの改善を実現しました。高付加価値製品の製造拡大により、収益率は向上しています。

Reborn Project:④人材育成制度開発

人材育成制度開発では、主にキャリアパス・コンピテンシーの明確化、能力開発や座学・実践研修の拡充に取り組みました。
公正な基準に基づく新たなキャリアパスは、7つの階層と、各階層内に5つの位を設定し、レベルアップ・昇格条件を明確にしています。業務で高い技能や能力を発揮して結果を出した従業員は、「High Potential」として特別に昇格できるルールも導入しました。
さらにキャリアパス、コンピテンシーに応じた研修をローカルが自主的に実施し、溶接などの特殊技能の教育機会も設けています。高度なスキル、資格が必要な業務、リスクのある場所での作業などについては、特別手当の支給を検討しています。
評価制度についても、公平性を高めました。以前は上司の評価と出勤率で評価していましたが、評価対象を上司評価、個人活動、個人KPI、上司KPIとし、公正で明確な基準を設けています。
こうした取組の結果、従業員のエンゲージメントが大幅に向上し、自信と誇りを持って働ける職場環境が実現しました。

Reborn Project:⑤SDGs取組項目の拡大

CO2排出量の削減、再生可能エネルギーへの切り替えを進め、電気自動車の活用も推進しています。従業員参加型活動として、生産性やヒヤリハットアイデアなどの改善活動を展開し、積極的に行った従業員には報酬を付与しています。また、働きやすい環境づくりに取り組む「Happy Workplace活動」では、更衣室やトイレのリノベーション、健康月間やウオーキングイベントなども実施。CSR活動として、教育機材や遊具の整備などの教育支援も展開しています。
さまざまな活動を通して安全で誇りを持って働くことができる職場環境が整備され、過去6年間の当社の離職率は約5%です。これは、タイ国内や同業他社に比べて5~10%低い数字となります。

今後の取り組み・まとめ

PSPCは、設立以来のスローガンである「CHANGE CHALLENGE CHANCE」の精神を原動力とし、変化とともに生まれ変わることを決して恐れず、顧客・社会・地域に豊かさをもたらすとともに、全従業員及びその家族に対して幸せで安全な生活をもたらす会社として成長していきます。

コーディネーター総評

活動成功のポイントは、ローカルのプロパーであるウドムさんを製造担当役員に抜擢し、ウドムさんが推進キーマンとして活躍することで、ローカルメンバー全体の士気が向上したことにあります。キャリアパスの明確化により目指す道が従業員に提示され、役割を作ることで自律的な成長が促進されました。また、上司の成績が上がると従業員も評価される人事評価システムにより、職場の一体感も醸成されました。その上で、今後の成長戦略となる次なるチャレンジの方向を提示したからこそ事業所全体の一体感が生まれたのだと思います。

株式会社 日本能率協会コンサルティング
シニアコンサルタント 石山 真実氏
GOOD FACTORY賞®を受賞して

商社系製造業として初めてGOOD FACTORY賞®を受賞し、本当にうれしく思っています。代表である私自身、製造業経験がなかったにも関わらず、2024年11月にこの賞の存在を知り、12月に会社方針として受賞を目標に取り組むこととしました。2025年頭のカンパニーポリシー1番目にGOOD FACTORY賞®受賞を掲げ、会社再生のためタイ人従業員が同じ目標に向かって自ら考え、行動し、幸せと誇りある会社に生まれ変わることを目的とした活動「Reborn Project」を1年間の取り組み、従業員も企業も変わったと思っています。受賞して終わりではなく、次の目標に向かってがんばっていきたいと思います。