JMA MANAGEMENT ロゴ

小会のさまざまな活動を紹介しながら、これからの経営課題を予見し、課題解決のヒントを探っていきます

【第14回】2026 GOOD FACTORY賞® 受賞企業講演会〜優良工場の実践事例に学ぶ〜

受賞講演(3) ものづくり人材育成貢献賞
トヨタ自動車 TOYOTA KIRLOSKAR AUTO PARTS PVT. LTD.
Release June. 2026

2026 GOOD FACTORY賞 表彰式イメージ
[講演内容]電動化時代を勝ち抜くためのモノづくり人材の育成とサプライチェーンの競争力向上
~内製化・現調化・手の内化による実践的アプローチ~
トヨタ自動車 TOYOTA KIRLOSKAR AUTO PARTS PVT. LTD.
Corporate/Managing Director
Tabrez Ahmed(タブレズ アハメド)氏 ※掲載の所属役職については、2026年3月時点といたします。

会社概要と活動背景

TOYOTA KIRLOSKAR AUTO PARTS PVT. LTD.(以下、TKAP)は2002年に設立され、インド・バンガロールに3つの工場を保有しています。マニュアルトランスミッションおよびアクスル、電動化製品であるHEV・BEV向けトランスアクスルを生産し、2025年は年間約44万台を生産しました。現在、電動化製品の拡大とともに、さらなる成長段階に入っています。
2002年の設立当初、当社はトヨタのものづくりに関する知識やスキルが十分ではなく、現場運営は日本人スタッフへの依存度が高い状態にありました。そこで、自立的な運営体制を構築するため「内製化」の活動を開始しました。さらに2014年、国内販売と輸出量の減少、コスト競争力不足に対応して「現調化」の取り組みを始めました。2022年からは、業界全体が電動化製品へ移行する中、工程、設備、製品の知識、スキル、マネジメント力強化を図る「手の内化」の活動に取り組んでいます。
本日は、設立以来、事業環境に応じて進めてきた内製化、現調化、手の内化の段階的な取り組みについて、(1)製造、(2)製造技術、(3)品質管理、(4)保全の部門ごとに紹介します。

(1)製造部門

製造部門では、具体的な取り組みとして「日本での研修・自主研活動」「3本柱活動」「マイライン・マイプライド活動」を実施しました。
まずトヨタ生産方式(TPS)への理解を体系的に強化するため、2002年から従業員を継続的に日本での研修に派遣。これまでに計233名が受講し、トレーナーとしてトヨタの知識や技術を社内に展開する重要な役割を果たしています。さらに、製造メンバーが主体となり、ムダや付加価値のない作業を改善しながらTPSへの理解を深める自主研活動を開始し、TPSを実践できる人材の育成を図りました。
また、グローバルKPI未達成やコスト競争力不足に対して実施したのが、3本柱活動です。3本柱活動は、トヨタの現場力強化を目的とした仕組みであり、「標準の徹底と改訂」「加工点マネジメント」「自主保全」を柱としています。この活動は、日々の取り組みとKPIの成果を結び付け、継続的に改善を進める必要があることから、活動定着のためブロンズ、シルバー、ゴールドの認定制度を設けました。2022年には全てのラインでゴールドレベル100%を達成。その後、電動化製品導入に伴って再びブロンズレベルからスタートした新ラインも、ゴールド取得に向けて活動を継続中です。
マイライン・マイプライド活動は、電動化製品の導入と期間従業員比率の上昇に対応した取り組みです。各メンバーに担当設備(マイマシン)を割り当て、異常に気付く力の強化と改善マインドを醸成、技術力やマネジメント力の向上、人材育成を図りました。
こうした取り組みを通じて、マイライン・マイプライド活動のシルバー認定メンバーは310名、ゴールド認定メンバーは172名まで増加し、四半期ごとの提案活動、ヒヤリハットなどの件数も増加しています。

(2)製造技術部門

製造技術部門では、コスト競争力強化に焦点を当て、「からくりを使った自働化、内製AGVの開発」「設備現調化の推進」「設備製作の手の内化」の3ステップで人材育成を進めました。
最初に内製化の取り組みとして、当社独自のからくり道場を設立し、全職場にトレーニングを展開しました。“からくり”の内製は、シンプルな治具に始まり、リフター、装置へと段階的にレベルアップし、最終的に部品搬送や組立用のからくりロボットへと発展。さらに社内製のAGVの開発にも取り組み、現在第5世代が実際の現場で稼働しています。生産性向上のみならず、開発プロセスを通してメンバーのスキル向上を図ることができました。
次に、設備現調化を図るため、自社の技術員育成と現地パートナー企業の育成を推進しました。パートナー企業に当社が基礎から指導を行い、回路設計や機器選定も常駐して支援。当社の技術専門性とパートナー企業の技術を融合させるとともに、双方の人材育成によって、戦略的に設備現調化を拡大させました。
さらに、設備製作の手の内化の取り組みでは、トヨタ工機部門でメカ・電気・組立の高度なスキルを習得したマスタートレーナーが中心となり、社内向け教育カリキュラムを構築。OJT・評価・実践経験を連動させた教育を実施しました。その結果、電動化製品向けモーター生産設備の中で、最も高速、高精度で構造が複雑なコイル加工の設備を、トヨタとして初めて日本国外で製作するなど、現調化率は着実に向上しています。

(3)品質管理部門

品質管理部門では、部品現調化を通したサプライチェーンの強化、部品費低減による競争力強化を図る活動を展開しました。
まず、トヨタ品質を満たすサプライヤー不足を解消するため、重要工程の専門知識とスキルを備えたエキスパートを育て、そのエキスパートを中心に現地サプライヤーとの協業、部品の現調化を推進しました。一方で、部品現調化拡大の体系的な施策がなかったことから、その体系づくりにも取り組みました。トヨタグローバルのサプライヤー管理システムをインドに導入し、量産までに複数の関所を設けて状況を見えやすくしたほか、量産開始後は、品質不良率を可視化して課題が多い重点サプライヤーを選定。品管メンバーがサプライヤーに常駐して現地現物で課題を把握し、技術支援を行った結果、不良率は大幅に低減しました。多くの部品の現調化を達成しただけでなく、サプライヤーと何でも言い合える関係が構築され、課題の早期発見・早期解決につながっています。
最後のステップとして、サプライチェーンの競争力強化、地政学リスクへの対応という課題に対し、現地サプライヤーの強みを活かした製品仕様見直しによる原価低減、海外サプライヤーのインド誘致と新規サプライヤーの開拓を進めています。原価低減では、樹脂製品の工法に強みを持つサプライヤーとの協業で、日本コスト比70%を実現したという事例もあります。

(4)保全部門

保全部門でも人材育成を重点戦略とし、社内設備のオーバーホールによる専門知識の習得、バディシステムと新道場による育成を進めました。
工場立ち上げ当初は、保全管理体制が不十分で多様な設備に対応できず、MTBF(平均故障間隔)が短く、MTTR(平均修理時間)は長いという課題が生じていたことから、トヨタの保全管理システムを導入。その後、設備の老朽化に合わせて、メンバーの設備理解や工程知識の不足を解消するため、設備の内製オーバーホールを開始しました。この活動でメンバーの保全スキルが大きく向上し、予防保全の強化によって故障件数の削減、保全コストの低減も実現しました。
さらに、電動化製品の立ち上げに伴い、新規配属メンバーのスキルアップを図る「バディシステム」、電動化製品の知識不足を解消する「新道場」の2つの仕組みを導入しました。バディシステムは、新人一人一人に先輩をバディとして配置し、先輩が責任を持って継続的に指導する仕組みです。成長への当事者意識と学び合いの文化が醸成され、チームワークも向上しました。新道場には、新技術要素を組み込んだ教育専用の設備を整備。メンバーが自由に触り、分解し、理解を深めることで不安が解消され、自信を持って保全対応できるようになりました。

活動成果と今後の進め方

各部門が進めてきた内製化、現調化、手の内化のさまざまな取り組みを通じて、当社の安全、品質、生産性は改善を続け、安定した製造基盤を確立してきました。安全面では、3本柱活動開始以降、災害件数が年々減少。5速MTラインは、品質KPIで工程内不良率0.05%以下、生産性KPIもライン可動率98%以上で安定し、継続的な改善活動により安全性向上、低不良率、高可動率を達成しています。
コスト競争力をさらに強化するため、2024年からスマートファクトリー実現に向けたDX活動がスタートしました。また、3本柱活動のサプライヤー展開を進め、サプライチェーン全体の競争力強化を目指しています。また、ほかのトヨタ関連工場への支援も行い、トヨタインドのみならず、トヨタグローバル全体の競争力向上にさらに貢献していきたいと考えています。

コーディネーター総評

人を育てることこそが課題解決につながる、しかも育てるだけでなく能力開発して新しいことに向き合おうという思想が根本にあり、改善活動の推進が人、組織、事業を育てるという信念を感じます。さらにポイントとなっているのは、全員参加の助け合いによる成長へのこだわり、現実を見える化して理解を高める配慮、現実とゴールのギャップを段階的に埋める共通の仕組みと、その仕組みに落とし込む基本動作の徹底です。20年間諦めず、おごらず、他社と比較しながら課題・問題に取り組んできた姿勢が、TKAPの素晴らしいところだと思います。

Transformation Consulting合同会社
CEO Management Consultant 松田 将寿氏
GOOD FACTORY賞®を受賞して

アセスメント準備において全部署の代表を集めて活動をまとめ、精査していく中で、部署間の連携が向上し、多くのアイデアが生まれ有意義なものになりました。50分の発表時間で内容の全てを伝えることは大変でしたが、チャレンジでき、よい機会でした。この度は受賞でき大変うれしく思っています。