TECHNO-FRONTIER 2018 技術シンポジウム 幕張メッセ・国際会議場 技術者のための専門展示会 TECHNO-FRONTIER 企画委員インタビュー

第18回 熱設計・対策技術シンポジウム
副委員長が教える今年の注目ポイント

㈱サーマル デザイン ラボ 代表取締役
国峯 尚樹氏

国峯氏はエレクトロニクス機器の熱設計に携わる技術者の問題解決を支援する会社、㈱サーマル デザイン ラボを運営。シンポジウムでは副委員長としてご参加いただいています。

【インタビュー記事(PDF)ダウンロード】
TECHNO-FRONTIER 2018 熱設計・対策技術シンポジウム 副委員長インタビュー
──国峯さんには、この「テクノフロンティア技術シンポジウム」で長きにわたり企画委員をお務めいただいています。過去と比べて、プログラム内容で変わったところはありますか?

 今は、企業活動がメインで構成されているところが違いますね。学会とは差別化をした結果だと言えます。最初の頃の企画委員会は、どちらかというと学会の方々が中心になっていたので、企業の方はあまりいませんでした。今は、多数の企業の方に参加していただいているので、その方々の意見も反映した実務的な内容になってきていると思います。

 それに加えて、常に時代の先端の事例を1~2つ取り扱っていることですね。それが普通のセミナーとは違うところです。普通のセミナーだと、企業事例などは、もっとベッタリと現場寄りの話がメインになります。一方このシンポジウムは、「これは広く知らせなければいけない」というテーマもいくつか取り上げています。そういう意味では、業界の最先端をリードするシンポジウムになっていると思います。

──海外のカンファレンスとの違いとは?

 熱設計は1つの技術分野ですが、熱設計・対策技術シンポジウムのように毎年、継続して、企業の方が参加している催しは、日本国内でも少ないですよね。海外に関しては、委員長の石塚先生の方がお詳しいと思いますが、シミュレーションが中心です。今回のシンポジウムでは設計方法論のような話や、事例だけではなくて、もっと地道な設計方法論も取り扱います。例えば、F1 セッションの「高信頼性を実現するCAE」では、株式会社メイテック様が「上流の熱設計の取り組み」について、実務者の視点でシミュレーションのお話をしていただきます。解析技術を含めて、運用論についても話も含まれています。
 そういうことはあまり海外だとやらないですよね。海外ではほとんどが技術論や新しいシミュレーションで、「こんな難しい問題が解けるようになりました」というような話が中心になります。このシンポジウムは地に足のついたもので、「現実的にはこんなことをやっても答えられません」「効率的なやり方はこうです」というような話が散りばめられているので、そこがだいぶ違うと思います。

──プログラムを決めるプロセスについて教えていただけますか。

 僕の場合は、いろいろな会社に顔を出して「新しい取り組みや新しい材料を開発した」という話があったら、ピックアップしてメモしておいて、次の年に活かします。1年ぐらい経つと、結構ネタが溜まるんですね。

──今回のプログラムはどのようなことを考えて、構成しましたか?

 全体の構成については、毎年、紆余曲折してきました。シンポジウムとは別に講習会をやっていた年もあります。初期の頃は、チュートリアルセミナーも実施していました。どんな方が参加しても理解が深まるように、そのチュートリアルセミナーで熱設計の基本的なところを知ってもらい、残りの2日目、3日目で、シンポジウムがあるという構成にしていました。しかし、シンポジウムの時間が短くなってしまい、その後はチュートリアルセミナーなしでずっと開催しています。そこは揺れ動いているところなんです。新しく、熱設計に取り組まれる方も参加されますので、基礎を取り扱うことは大切ですからね。

 ですから、今回はチュートリアルっぽいこともやろうと思っています。多分、そういうふうにした方が今後も良いでしょうね。テーマが固まってきたということもあるのですが、熱設計は、ある程度、経験が必要になります。経験を積むと、学ぶべき内容が変わってくるので、ちょうど10年目前後くらいの技術者の方向けの内容なのかもしれません。

──今年、注目しているセッションは?

 セッション的にはシミュレーション系と放熱材料、それから計測と大体決まっているのですが、今回は「難しいシミュレーションができるようになりました」という話だけではなくて「それをどうやって実施設計の中で使っていくのか」という内容のセッションがいくつかあります。ですから「シミュレーションの先端動向」ということではなく、もう少し引いて、「現場でどんな使い方をすると、うまく設計にマッチングするか」という話が入っているセッションがいくつかありますので、どれも聞き応えがあると思います。

 私が聞きたいと思うのは、F4「普及が進む新しい冷却技術」の「水没コンピュータ」です。この辺りの新しい技術は随分参考になると思います。

 熱設計というのはターゲットが難しくて、モーターや電源、バッテリーなど品名がついているものがありますが、EMCや熱はどちらかというと、もっと漠然とした技術ですから、ある意味何を取り上げてもいいわけです。その分、選択が難しい。例えば、製造工程でも熱設計の問題はいっぱいあります。そういうことをどこまで広げたら良いかが手探りになりますが、参加者の様子を見ながら、毎年考えています。

 学会を見ていると、話題の新しい技術も出てくるし、雑誌などでも新しい技術が紹介されるので、そういうものをピックアップして、できるだけ取り上げようとしているのですが、話題になっていても、意外と内容が参考にならない場合もあります。一度どこかで発表しているなら良いわけですが、未発表でどんな中身になるか分からないというものを、タイトルだけで面白そうだから、といって選んだことがありました。結果的にはタイトルが面白いと人は集まるのですが、アンケート結果があまり良くありませんでした。

──シンポジウム参加者へのメッセージをお願いします。

 熱設計の技術というのは、技術の進歩が遅いと思います。実装技術が変わって、部品が小さくなるという進歩や、ソフトウエアの進歩はすごく速いのですが、熱設計の技術というのはなかなか進みません。部品が小さくなって表面実装になってきて、だんだん部品が厳しくなってくるのですが、今までの技術だと、例えば部品の温度を管理するために、空気の温度を管理するということを未だにやっているのです。小さくなると熱は空気に逃げないで、プリント基板に逃げてしまうからです。空気の温度を測っていても、温度が低いのに部品が壊れたりします。そういう技術は、変化がゆっくりだとあまり気がつきません。

 そういう話がシンポジウムには散りばめられているので、他の会社がどんなことをして、どこに悩みがあるのかということを知ることはとても参考になると思います。自分の会社で、どうしたら良いかが見えてくる。実際に会場では「各企業がどんな取り組みをしているか」「体制はどうなっているか」「シミュレーションの人数」といった質問が多く寄せられます。

 もう1つ、他のシンポジウムと違うのは、討議時間をちゃんと設けてあって、なおかつ紙に書いて質問するというところです。日本人は恥ずかしがり屋だから、紙に書く方法にすると、質問がいっぱい出ます。聞きにくいことも書けるし、ちゃんと答えてくれるから、本音ベースでいろいろな話ができます。

 終わった後も、ほとんどの方が会場に残って、名刺交換をしたりして、盛り上がっています。普通の講習会と違って、コミュニケーションの場にもなります。どこが問題かというようなことを議論できたり、それがきっかけで技術講習会を開催したりしていますから、ぜひ参加していただければと思います。

 「熱設計」は進歩が遅いということもあり、熱設計に取り組んでいる人というのは、各会社の中ですごく少ないと思います。ですから、相談相手が社内にいません。シミュレーションなどで答えが合わなくても人に聞けないこともあります。冷却もそうですが、社内にはわかる人がいないというケースが結構多いです。チャネルづくりとして、熱設計をやっている人同士がつながって情報交換できる場というのは、多分ここぐらいじゃないでしょうか。貴重な場だと思います。

【インタビュー記事(PDF)ダウンロード】
TECHNO-FRONTIER 2018 熱設計・対策技術シンポジウム 副委員長インタビュー


ページトップへ