TECHNO-FRONTIER 2018 技術シンポジウム 幕張メッセ・国際会議場 技術者のための専門展示会 TECHNO-FRONTIER 企画委員インタビュー

第38回 モータ技術シンポジウム
企画委員長が教える今年の注目ポイント

東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻
教授 堀 洋一氏

電気自動車、モーションコントロール、ワイヤレス電力伝送を研究

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TECHNO-FRONTIER 2018 モータ技術シンポジウム 委員長インタビュー
──先生の今のお立場を教えていただけますか?

東京大学の工学部電気工学科がいわば本籍ですが、今は新領域創成科学研究科、これはフロンティア・サイエンスという英語名がついていますが、その中の先端エネルギー工学専攻が本務になっています。
モーションコントロールが研究テーマで,最近は電気自動車の研究にも力を入れています。
シンポジウム関連では、このモータ技術シンポジウムの委員長以外に、キャパシタ・フォーラムというフォーラムもしています。これは短期間ですが、世界電気自動車連盟の会長も務めています。

──モータ技術シンポジウムの印象は?

私が委員長をさせていただくようになった時に、電気自動車用のモータがこのモータ技術シンポジウムでも議論されるようになりました。
元々は、小型モータシンポジウムと言っていて、小型モータの専門メーカーが集まる場だったのですが、最近は電気自動車用のモータも扱うようになり、カーメーカーやその周辺のメーカーさんがたくさん参加するようになりました。
ファナックなどのロボットメーカーさんも参加いただくようにもなりました。流れが大きく変わったというわけではありませんが、そんなふうにこのシンポジウムも変化をしていると思います。

──モータ技術シンポジウムの特徴とは?

モータについて勉強する場としては、もちろん学会があります。電気学会などですね。モータに関してはそういった大きなアクティビティがあるのですが、このモータ技術シンポジウムが決定的に違うのは、産業界を主眼にしているので、数式があまり出てこないとか,現場で役に立つことを意識して議題にするといったことですね。もちろん、役に立てばいいというだけではなく、アカデミックな項目も含まれています。

モータ技術シンポジウムは、入門者にとっては非常に良い内容になっていると思います。会社に入って「モータをやれ」と言われた若い人たちが勉強するには、とても良い機会でしょう。それから、産業界の現状を知るのにも役立つ。
中堅の技術者がスピーカーになっているので、あまりよそでは聞けない話を聞くことができます。業界の将来動向についても、話が出てきますので、方向性をつかむことができる。他にはないモータに特化した硬派なシンポジウムだと思います。

──オススメのセッションを教えていただけますか?

例えば、B5セッションの「モータ製造技術」、B6セッション「センサレス制御」ですね。
セッションを構成する時には、定番の内容が必要です。
全部が流行のものではいけませんから、定番も忘れずにしつつ、新しいことにも取り組む。大変バランスが取れているセッション構成だと、私は思っています。

モータの技術については、私も携わって30年くらいになりますが、ソフトウェアが注目されたり、ハードウェアが注目されたり、その時々のトレンドがあります。私が若い頃は「ハードウェアはもうやり尽くした。これからはマイコンを使った制御技術つまりソフトウェアの時代だ」と言われていました。
それで、みんながそっちに行ってしまった。それが最近は、またハードウェアに戻ってきています。モータは少しずつ改良されていって、気がつくと、とんでもなく進化している。
そういうことがわかるのも見所だと思います。ちょっと業界に乗り遅れてウカウカしていると「それは昔の話でしょう?」となってしまう。セッションを聞くとそれがわかると思います。

B2の「可変特性・新構造モータ」やB3「超高速モータ」、C4「IPMモータの新しい設計技術と高効率化」も注目ですね。モータの大きな流れを押さえているセッションです。

それから、今回の見どころとしては、B1「自動車用主機モータ」。これは目玉です。4つそれぞれ良いのですが、その中でも日本電産の「トラクションモータビジネスの現状とEV/PHEV向けトラクションモータの開発」。これは人が集まるのではないかと思います。2番目の「ハイブリッド車用重希土類フリーモータに対応したNVH低減技術」では、最近のHONDAのEVについてのお話があると思います。三番目は元デンソーの方のお話です。四番目は東京大学の先生の発表ですが、これも非常に評判がいいんですね。このような内容が揃っているので、このセッションはお得感があって、オススメです。

それに、B4も面白いんです。
「航空機の電動化とモータの技術動向」。電気飛行機の内容ですが、これはJAXAの西澤さんとIHI 森岡さんに話をしてもらいます。JAXAが真面目に電気飛行機をやっていまして、IHIの森岡さんは情熱的に夢を語ってくれると思います。これは楽しみなセッションです。現在と近未来と遠い未来が混在しているような壮大な内容になるのではないかと思います。

モータ技術シンポジウムと言いますが、モータを超えた内容も多いんですね。
C3の「パワーデバイス」も、普通はSiCが有名なんだけど、むしろSiCの先を行くワイドバンドギャップデバイスもやる。
これは専門家から見ても、一味違うセッションになっています。
これからの動向を知る一般常識として、聞いてもいいでしょう。


──入門からプロまでおすすめできるラインナップになっているということですね。

C5「ロボティクス」も今、流行りの分野ですが、現実的な、地に足がついた内容になっていると思います。実務経験がある方がしっかりとお話をしてくれます。オススメですよ。

──電気自動車の未来は?

昨年、手前味噌でモータ・キャパシタ・ワイヤレスというセッションを作ったんですよ。残念ながら、あまり人が集まりませんでした(笑)。
でも、大きな方向は間違っていないと思います。将来、自動車は電気モータで走るだろうと考えています。
車のモータはサーボモータのようになるのではないか。
そうなると、タイヤが滑りにくくなり,自動車は非常に省エネになる。今はエンジンのように力を出していれば良いとなっていますが、それだけでは意味がありません。自動運転がブームになっていけば、ますますそうなっていくでしょう。
ロボット化と言われていますが、まさにそうで、その時に電気モータは、アクチュエータとして核を成していくと思います。

──参加者へのメッセージをお願いします。

モータ技術シンポジウムには、ヒントがいっぱいあります。そのヒントを正しく自分の頭で判断して考えて欲しいですね。
そして、流行に流されないことも重要です。
自動運転が盛り上がると、猫も杓子も自動運転になってしまう。
AIが盛り上がると、AIに関係なくても全てAIに向かってしまう。
もちろんそれらは重要な技術なのですが、同じように電気自動車が盛り上がると、全てが電気自動車になるように思ってしまう。
実際には、そんなことにはならないでしょう。

若い人は、ぜひなんでも面白がってください。
世の中面白いものばっかりですよ。僕はもうそろそろ人生が終わりそうだから(笑)、残念なんですが。面白がれなくなるとおしまいだと思います。

それから、僕が若者によく言っているのは「40歳ぐらいまではたくさん浮気をしなさい」ということです。
40歳を過ぎると挑戦しにくくなる。シンポジウムにはいろんなネタがありますから、「それは私に関係ない」と言わないで、色々行ってみて、学術的な浮気をしまくる。荒唐無稽に思うような話があっても、それを面白がる。それが大事だと思います。 【インタビュー記事(PDF)ダウンロード】
TECHNO-FRONTIER 2018 モータ技術シンポジウム 委員長インタビュー


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