TECHNO-FRONTIER 2018 技術シンポジウム 幕張メッセ・国際会議場 技術者のための専門展示会 TECHNO-FRONTIER 企画委員インタビュー

第32回 EMC設計・対策技術シンポジウム
副委員長が教える今年の注目ポイント

大阪大学 工学研究科 教授
舟木 剛氏

舟木氏は電力・エネルギーや交通・物流等の社会インフラストラクチャ・システムのあり方をシステムおよび構成要素の両面から研究。今年のEMC 設計・対策技術シンポジウムについてお話を伺いました。

【インタビュー記事(PDF)ダウンロード】
TECHNO-FRONTIER 2018 EMC設計・対策技術シンポジウム 副委員長インタビュー
──先生のキャリアについて教えていただけますか?

 大阪大学の電気工学部を卒業し、平成5年に修士を得て、そのまま博士課程に入りました。平成12年に学位を取得し、平成20年に大阪大学の教授となりました。

 EMC設計・対策技術シンポジウムの委員を務めていますが、実は、学位を取るまでは、電力系統制御が専門だったんです。直流送電の電力を制御して、系統を安定化させる。システム寄りの分野を研究していました。

 システムの検討には、モデルが必要になりますが、実物で検証をすることも必要です。そのため、インバータなどを自分で作って評価するようになった。システムのシミュレーションのモデルが、実際のハードの動きと合っているかを検証することで、ハードに研究対象が移っていきました。インバータが理想的な動作をせず、非理論高調波や電磁雑音を出すので、それをきちんと評価しないといけない。そこでEMCの研究をするようになったんです。

 だから、どちらかというと私は「何でも屋」なんです。ハードウェアもやるし、シミュレーションもする。インバータのシミュレーションもありますが、その構成部材もきちんとモデル化しないといけない。パワー半導体デバイスやパッシブコンポーネントのモデル化もする。

 そんなふうに、これまでのキャリアの中でいろんなことに取り組んできました。いろいろな分野と関わってきたので、このテクノフロンティアでは、「EMC設計・ 対策技術 シンポジウム」以外のシンポジウムに参加されている方にたくさん知り合いがいます。

──今年からシンポジウム名が「EMC設計・対策技術 シンポジウム」に変わりましたが?

 名称を変更したのには理由があります。システム設計には「フロントローディング」という考え方があります。ある程度のところまで負荷をかけて開発して、評価しておくことです。

 以前のEMC・ノイズ対策は、とりあえず作ってみて、ノイズが出たら対策するというやり方だったんですね。対策を後でおこなう。これはスマートではない方法で、本来はきちんと設計の段階でノイズ等を抑えて、余分なものをできるだけつけないようにするべきです。ですから、タイトルを「EMC・ノイズ対策技術シンポジウム」から「EMC設計・対策技術シンポジウム」に変えました。

──先生はいつからこのシンポジウムにご参加いただいていますか?

 実はEMCのシンポジウムに参加する前に、電源シンポジウムにスピーカーとして参加しているんですよ。EMCより電源の方が先でした。

──このシンポジウムの特徴を教えていただけますか?

 このシンポジウムは研究の発表ではなくて、セミナー的なものなので、最新の技術をわかりやすく伝えるのが目的ですよね。そこが学会の目的と違います。そういう意味では学会とは被らないイベントだと思います。

 学会は最新技術、最新の成果を問うところですからね。学会では、自分の研究成果の発表になりますが、このシンポジウムでは自分の結果というよりは、他人の成果結果も含めて一般論として講演します。基本的に一般論しか議論されませんから、ベーシックで重要な技術を学ぶにはとても良い機会だと思います。

 シンポジウムでは、EMCが初めての技術者に対しても理解できるように話をします。難しくせず、平易に誰でもわかるように噛み砕いて説明してくれるのがこのシンポジウムのいいところです。

 学会の発表と違って、こなれつつある技術を紹介しているのも特徴ですね。いろんな会社の方に、設計業務・開発業務で活かせる技術を紹介することできるようにプログラムを構成しています。「この部品は手に入らないけど、とても良い性能を出します」という話では、全く役に立たないですからね。

──このシンポジウムは昨年、参加者が多かったですね。最終的には、410人ほどになりました。

 入門的、原理原則的な内容なので、参加者が増えているのだと思います。

──EMCで注目していることはありますか?

 携帯電話が4Gから5Gになると言われていますが、EMCについても考えなければいけないと思っています。5G自体の規格は、まだ厳密に規定されていません。規格が決まってからでないと、なかなか評価ができない。将来に向けて研究しなければいけない問題がそこにあるのではないかと思います。あらかじめ対策しておかないといけないと思うんです。現在、デバイスがどんどん良くなってきて、動作周波数が高くなってきている。その動作周波数で問題なく動作することができるのか。そこを検討しておく必要があると思います。

──5Gの運用は2020年を目標にしていますね。

 オリンピックのタイミングですね。5Gになったら、下り速度がかなり早くなるので、携帯電話で4K動画を観れるようになる。そのあたりを狙っているのではないですか。5Gの周波数はプラチナバンドよりも上の方になります。その周波数に対して、電源やインバータのノイズが問題になるのかどうか。そのあたりを検討しておく必要があると思います。

──来年以降のEMCシンポジウムで扱っても面白いかもしれませんね。最後に、シンポジウムの活用方法についてお話いただけますでしょうか?

 EMCだけではなく、他のシンポジウムで扱われるような複合技術を知っていないと最終的な製品を作ることはできません。今、抱えている問題に付随することに注目することが大切です。関連する技術にアンテナを張って、関心をもっておく。

 テクノフロンティア全体でたくさんの講演がありますから、その中で自分に必要なセッションに参加し、必要な情報を取る。そのようなアプローチを取ることがいいと思います。「仕事がEMCだから」とEMCだけに拘らず、自分の抱えている問題に関係する講演に参加すると良いと思います。
【インタビュー記事(PDF)ダウンロード】
TECHNO-FRONTIER 2018 EMC設計・対策技術シンポジウム 副委員長インタビュー


ページトップへ