TECHNO-FRONTIER 2018 技術シンポジウム 幕張メッセ・国際会議場 技術者のための専門展示会 TECHNO-FRONTIER 企画委員インタビュー

第33回 電源システム技術シンポジウム
副委員長が教える今年の注目ポイント

九州大学 大学院 システム情報科学研究院 電気システム工学部門 教授
庄山 正仁氏

九州大学でエネルギー応用システム工学を教えている庄山氏に、今年の電源システム技術シンポジウムについて伺いました。 今回のお話では「スイッチング電源」についても詳しく解説いただいています。

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TECHNO-FRONTIER 2018 電源システム技術シンポジウム 副委員長インタビュー
──今回の電源システム技術シンポジウムの特徴はどんなところでしょうか?

 セッション全体の構成としては、これまでと大きく変わっていませんが、それぞれのプログラム内容については、今の技術動向を踏まえ、多くの技術者が特に関心を持っていると思われるテーマを選定しています。例えば、半導体のSiC利用(D4セッション「ワイドバンドギャップパワー半導体の未来とSiC量産応用の現在」)や、ソフトスイッチング(D5「チュートリアル: スイッチング電源、ステップアップのための回路設計とレイアウト設計」)がありますね。これは看板セッションと言っても良いと思います。みなさんのニーズが高い分野で、これまでも多くの参加者が集まっています。

 あとは、D6「最先端、共振型電源の実践的設計法とシミュレーション活用技術」ですね。共振型電源というのは基本的にはソフトスイッチングに関連する技術で、言い方を変えているだけです。ソフトスイッチングの技術というのは、動作が少し複雑なところがあるのですが、だからこそ話題にもなるんです。ソフトスイッチングには、良い面と悪い面があって、良い面はスイッチング損が小さく、スイッチングの高周波化による電源の小型化が可能なところや、低ノイズ化が実現されるところです。一方では、ソフトスイッチングさせるためには回路的な仕掛けが必要で、その仕掛けを作らないといけないというデメリットをなるべく小さくして、良い面を伸ばすことが重要になります。そのような実践的知識をこのセッションで得ていただくため、継続してテーマとして取り上げられてきたのだと思います。

 また、D5「チュートリアル: スイッチング電源、ステップアップのための回路設計とレイアウト設計」も、実践を踏まえた理論を披露していただくので、非常にわかりやすいと思います。
電源技術自体がいろんな技術領域で構成されいて、半導体もあれば、磁気素子、コンデンサもあり、いろんな要素からできていますから、6つあるセッションの中で、多様な議論が展開されていると思います。

──今年も自動車関連のセッションがありますね。

 そうですね。自動車関連のセッションは、例年参加者が多いですね。これはテクノフロンティア全体にも言える傾向だと思います。モータ、パワエレ、バッテリー、とみんな次世代の自動車の方向を向いていますね。だか ら、テクノフロンティアの共通項が自動車と言っても過言ではないでしょう。自動運転という新しいテーマも含めて、開発競争が非常に盛んです。我々研究者から見ても、経済規模も大きく、様々な技術分野を包含している自動車分野は非常に興味を持てる応用分野だと思います。

──これからの電源システムの領域で重要な課題と思われる事はなんですか?

 私の研究室は、グリーン・エレクトロニクス研究室と名付けているぐらいで、省エネには大いに注目しています。これは世の中の重要な課題でもありますから、それに応えられるように、多くの研究者が取り組んでいます。環境問題に対して、どのように取り組むかというと、いろんな考えで、いろんなアプローチができると思うんですよね。スイッチング電源は小型・軽量・高効率ということが基本ですから、環境に優しい技術だと思いますし、それをさらに推し進めることが必要です。また、スイッチング電源の場合は、ノイズを低減する技術も重要で、それも環境対応技術に繋がります。

──電源システムに関する課題は尽きませんね。

 分野の違う人から見ると「スイッチング電源という技術領域でそんなにいろいろテーマがあるの?」と思われるかもしれませんが、やっている立場からすると、問題が片付くどころか、逆に増えていきます。時代が変われば、どんどん新しい問題が出てきますから、それに応える必要があります。電源に関わる方はみなさんそう感じていると思います。

 課題が全て片付いて、何もやることがなくなってしまったら、完成領域ということで注目されなくなるし、研究する必要もなくなると思いますが、このシンポジウムが30 年以上も続いているということは、そうではなくて、もっとやるべきことがあるということだと思います。電源システムも常に進化してるという事です。

──材料による革新も大きな鍵を握っていますよね。

 そうですね。能動素子も受動素子も材料開発は非常に大事で、我々回路屋はそれをうまく使いこなす立場にあります。例えば、半導体のメーカーはその素子特性を高める事に注力するわけですが、その次にそれを使いこなして応用に活かす事が必要になります。そこで、材料を作る人と使う人の間のインターフェースも密である必要があって、そういう情報交流もこのシンポジウムでは得られるのではないでしょうか。そこを期待して参加している方も多いと思います。

 同様に、デバイスと回路についても、車の両輪のようなもので、お互いに深い関係があります。お互いの要求を聞きながら、発展していくものだと思うんですよね。だから、現在のいろんな技術課題に対して、様々な立場の方々が協力し合いながら発展させていくのが技術革新の本来の姿だと思います。

──このシンポジウムに参加される方にメッセージをお願いします。

 このシンポジウムには毎年、たくさんの方が参加していただき、おかげさまで好評をいただいています。それぞれの技術者が興味のある技術動向や、課題解決に必要な情報を求めて、全国から集まって来られます。私のような大学の研究者にとっても、定期的に産業界の新しい取り組みについて触れる場があることは、非常にありがたいと思います。電源技術に関わる様々な立場、技術分野の方々が、それぞれの課題意識を持って集まり、交流する機会があるという事は、大変貴重な事ですから、今年もぜひ多くの方々にご参加頂き、活発な意見交換をして頂きたいと思います。
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TECHNO-FRONTIER 2018 電源システム技術シンポジウム 副委員長インタビュー


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