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小会のさまざまな活動を紹介しながら、これからの経営課題を予見し、課題解決のヒントを探っていきます

INTERVIEW
理事
帝人株式会社
取締役会長
鈴木 純

1983年入社。2013年、取締役常務執行役員、高機能繊維・複合材料事業グループ長 兼 炭素繊維・複合材料事業本部長 兼 東邦テナックス(株)代表取締役社長。2014年、代表取締役社長執行役員CEO。2022年4月より現職。

鈴木 純氏

認知力と俊敏性で社会課題の革新に迫り、
未来にわたって独自の価値を提供し続ける企業に

―今のお立場やお役割、これまで担当してきたお仕事等について教えてください。

帝人グループは、複数の事業ドメインを有していますが、私は、そのうち、マテリアル事業とヘルスケア事業の二つの主力事業に携わり、2014月4月より、代表取締役社長執行役員 CEO、2022年4月からは、取締役会長を務めています。現在は、執行に関わらない取締役として、執行系への監視・監督・助言と、社外取締役と社内執行系とのインターフェイスの役を担っています。

―企業の永続的発展のためのお取り組みやお考えについてお聞かせください。

私どものような上場企業は、さまざまなステークホルダーの幸福度、満足度を総和として上げていくことが求められています。そのためには、その時々に社会が求める価値を提供する必要があり、価値提供ができなくなった企業は退場せざるを得ません。言い換えますと、時代により移り変わる社会が抱える種々の課題に対し、いかに企業が独創的資源を元に価値提供をできるかにかかっていると思います。新型コロナウイルスの蔓延とともに、社会の価値観、生活様式、あらゆる消費の仕方が、急速に、そして、大きく変化したことは、皆さんもご存知の通りです。このような社会の変容は、これからの未来でも起こりうるものと思います。変容していく未来の社会を想像し、その中で企業が独自の価値提供を行うことで、社会課題が解決していく、そのような、未来の社会を支える姿を想像することが肝要です。また、その姿を実現するため、私たち企業には、イノベーションやD&Iを起こす契機として資源をいかに有効活用していくかが、今、求められています。

―経営者としてどのようなことを大切にされていますか。

先に述べました通り、いかに、未来にわたって独自の価値提供が継続できるか、そのために、未来の社会を想像し、会社として、どういう方向に進んでいくのかということを、しっかりと決める、そして、社員全員のベクトルを、中長期の単位では、同じ方向に向けることが大事だと考えています。その上で、社会の急速な変容に対応するためには、「認知力と俊敏性」が必要だと思います。変化の中で、状況を正しく認知する能力、そして、素早く対応していく俊敏性です。これらは、経営者のみならず、企業人全てに求められているものと思います。また、この認知力や俊敏性を持つためには、自分自身の限られた視点や姿勢だけで十分とは言えません。異なる視点や認知力を持つ多くの方たちと、社会やお客様が求めていることがどのように変化しているのかについて、話し合う機会をできるだけ多く持つこと、それに加え、話し合う際には、多くの方からもたらされる、自分とは異なる意見にも、できるだけ耳を傾けるようにすることが大事です。実は、これこそが、ダイバーシティ&インクルージョンの第一歩だと思います。このようにして集まった意見は多様性に富み、社会を正確に捉えており、社会課題の核心に迫ることができるはずだと思います。そして、正しいと思える認知が得られたら、次は、試行錯誤で構いませんので、速やかに行動に移すことが必要です。このような試みが、変わりゆく社会に適合し、今までのやりかたとは異なる、イノベーティブな価値創造や価値提供につながるものと信じています。

また、価値提供を行うために繰り返される試行錯誤には、さまざまなリスクが付きまといますが、これらの「リスク」には、取るべき必然性があるものも含まれています。そして、リスクの大きさを認識し、リスクを限定するすべを考え、リターンとの見合いでチャレンジすること、こうしたリスクテイクはすべきことであると私は考えています。しかし、全ての試みが成功するわけではありませんし、成功することの方が少ないことも多々あると思います。そうした中でも、きちんとリスクテイクをした試みは失敗とはしない、そのような企業文化がいま求められていると思います。

―日本能率協会に対する期待をお聞かせください。

先に述べた通り、私たち企業にはイノベーションが求められています。いろいろな新鮮なアイディアに基づく真のイノベーションを起こすためには、自社の文化、事業、そして、あらゆる会社の枠すら超えての交流や、挑戦が必要になると思います。日本能率協会には、研修・セミナーによる、経営革新を起こす人材育成のための、「学びの場」のみならず、シンポジウム、展示会、そして支援事業等により、イノベーションを起こすための、「企業人の交流の場」にもなってもらいたいと思います。