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「KAIKA Awards 2022」
表彰式レポート

コマニー、ニトリホールディングス、 日立製作所、ミールケア
が大賞受賞!

2022年3月16日、「KAIKA Awards 2022」の表彰式が、東京ミッドタウン日比谷BASE Q HALL1において開催された。「KAIKA Awards」とは、JMAが推進する「KAIKA」の理念に基づき、社会価値を生み出す持続的な経営・組織・人づくりに取り組む活動を表彰するとともに、その事例を広く公表し、産業界の活性化につなげることを目的とする表彰プログラムだ。実践的な取り組み例が紹介された当日の模様をレポートする。 集合写真

大賞受賞企業に共通する「3つの要素」

表彰式

第8回を迎えた「KAIKA Awards 2022」では、厳正な審査の結果、KAIKA大賞を4社に、KAIKA賞を6つの企業・団体に贈賞することが決定。さらに応募のなかから、テーマの重要性、取り組み方のユニークさを踏まえ、今後応援したい「特選紹介事例」として11の企業・組織が選ばれた。

当日の表彰イベントでは、特選紹介事例を含むすべての受賞事例を発表。KAIKA大賞、KAIKA賞の代表者が登壇し、日本能率協会会長・中村正己より表彰状が授与された。

続いて、有馬利男審査委員長による全体講評、大賞受賞の4社によるプレゼンテーション、フォトセッション、審査委員からの解説などが行われた。なお今回のKAIKA Awardsは、新型コロナウイルス感染防止に配慮する形で開催。初の試みとして、YouTubeにて受賞関係者以外にも当日の模様がライブ配信されている。

有馬委員長

当日の全体講評で、有馬審査委員長は「今回のKAIKA受賞事例には3つの共通する要素がある」と話した。それは、『パーパス重視の姿勢』『本業を通じたSDGsの推進』『社員の主体性重視』。「パーパス」とは、自社が何のために存在し、社会に対しどんな価値を提供するのかという存在意義のことである。コロナ禍を経て経営環境や社会情勢がますます激変するなか、経営戦略や事業展開の起点としてパーパスを重視する企業が増えている。また、世界的にSDGs推進の機運が高まっていることを受けて、社会課題の解決に取り組む企業も多い。

しかし、パーパスもSDGs推進も、単なるお題目として掲げるだけでは意味がない。有馬審査委員長は「自社の存在意義やSDGsのテーマを、社員一人ひとりが自分事として捉え、具体的な行動に落とし込んでいくことが不可欠となる」と指摘した。今回のKAIKA Awardの受賞事例は、いずれも社員の主体性・自律性を重視し、それを原動力とすることで経営改革・事業改革に成功しており、その点はとくに注目すべきだろう。

「社員の主体性・自律性」を重視した大賞4社の事例

受賞事例発表1

この視点で、改めて4つの大賞受賞事例を見てみよう。イベントでは、各企業が来場者やライブ配信視聴者に向けて、自社の取り組みをプレゼンテーションした。以下はそこで発表された事例の内容である。

まず石川県に本社を置くコマニー株式会社は、従来のパーティションメーカーのイメージを刷新するような事業展開に挑戦。耐震性能を備えた間仕切りや、防音性に優れた個人ワークブースなど、社会課題の解決に貢献するような新製品を次々と開発してきた。その出発点は、2008年のリーマンショックを機に、社員同士の対話を重視し、主体性を引き出す人材教育に力を入れたことだったという。同社がSDGsに積極的に取り組むようになったのも、社員からの主体的な提案がきっかけとなっている。

同様に株式会社ニトリホールディングスは、自主的な改善サークル活動であるNWC(ニトリ・ワールド・サークル)をはじめ、主体性を育む人材開発を以前から強力に推進してきた。一般に、個人や組織の成長が社会課題解決につながるのが理想ではあるが、現実にはそう簡単ではない。とくに企業の経営規模が大きくなればなるほど、個の成長が社会課題に連動しないといった状態が起こりやすい。その課題に対応する施策の一つとしてスタートしたのが、2016年に始まったNWCだ。あくまで自主的なサークル活動だが、2021年時点で344サークル、2154名が参加。お客様の視点に立ち、「使う・買う立場で考える」ことを活動の起点にしており、社会性を意識した新事業・新サービスがいくつも生まれているという。

また株式会社日立製作所は、「一人称のマインドセット」という独自の改革方針を提唱。社員参加型のアイデアコンテスト“Make a Difference!”などを通じて、一人ひとりが成長に向け自発的にマインドセットを働かせるような意識改革・企業文化の醸成に努めてきた。社員には、自ら燃える「自燃(じねん)性社員」、燃えている人に近づくと燃える「可燃性社員」、なかなか燃えない「不燃性社員」の3種いるとしばしば言われる。アイデアコンテストなど日立製作所の取り組みは、自燃性社員が一歩踏み出すきっかけを提供することで、そのマインドを可燃性社員に波及させるのが狙いである。最近ではさらに、可燃性社員も自ら点火するような新たな工夫を取り入れており、コロナ禍においても引き続き主体性を育む社内風土が醸成されている。本活動のプログラムマネージャーは人財統括本部シニアマネージャーのリン・アモール・ドブレ氏が務め、海外からの提案も多く、グローバルな活動も特徴的だ。

受賞事例発表2

長野県に本社を置く給食事業者の株式会社ミールケアは、従業員の幸せを大切にし、一人ひとりの成長意欲や社会に対する貢献意識の醸成に注力してきた。その基盤となっているのが、創業30周年を迎えるにあたって2019年に完成した「ミールケアフィロソフィー」だ。同社の経営理念をわかりやすくまとめたもので、朝礼で輪読するなど、その内容を社員全員で共有し行動に結びつけるような工夫を地道に積み重ねてきた。その結果、社員の主体的な姿勢が育まれ、「会社の周辺敷地の緑地化」「パン工場の整備」「社内業務のデジタル化」などの意欲的な取り組みの原動力にもなっている。

アフターコロナでますます意義を増す「KAIKA」の理念

挽野さん

イベントの最後には、審査委員を代表してアイロボットジャパン合同会社社長の挽野元氏が登壇した。挽野氏は、「今般のコロナ・パンデミックは世界中の人々が自分の価値観や人生観を見直す大きな契機となった」と語る。労働環境も大きく変化し、リモート環境を踏まえた新しい働き方やマネジメントのあり方が模索されている。

「こうして世界が激変しているのを実感するなかで、改めて『KAIKA』が推進する理念が非常に重要になってくると感じました。個人が自律的に行動して成長し、かつ組織の理念・戦略・実行が有機的に結合して、社会と接点を保ち続けながら課題を提起していく。そんなサイクルが、今まさに求められています。大賞受賞者の皆様のプレゼンテーションを拝見して、それらがすべてカバーされていると思いました。KAIKAの理念を実践した受賞事例は、いずれも多くの日本企業の皆様の参考になるはずです。私自身も経営者として大いに刺激を受け、たくさんの元気をもらいました。本当にありがとうございました」(挽野氏)