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日本CTOフォーラム特別企画
「リニア中央新幹線にみる価値創造と事業展開」

リニア中央新幹線イメージ

2023年4月15日、日本CTOフォーラム特別企画「リニア中央新幹線にみる価値創造と事業展開」がJR東海 山梨実験センターで開催され、日本CTOフォーラムメンバーをはじめ、JR東海からは宇野護副社長や森厚人副社長、トーケル・パターソン取締役、寺井元昭専務執行役員リニア開発本部長、髙橋幸生山梨実験センター所長らを中心に約50名が参加した。

日本CTOフォーラム(主催:日本能率協会)は2004年の発足以来、主要企業のCTO(Chief Technology Officer)を中心に約50社が参画するネットワーキング。企業の長期的な成長・発展のため、メンバー相互が、本音でイノベーションやビジネスを考察・洞察する活動を展開している。

当日は、まず、JR東海宇野副社長、寺井専務執行役員より、東海道新幹線が開業する2年前の1962年(=国鉄時代)から続く超電導リニアの技術開発の歴史や推進・浮上走行の原理、リニア中央新幹線計画の概要や東京~名古屋間の各地で行われている工事の進捗状況などの説明があった。その後、先頭車両の視察や乗降装置を見学し、実際に、超電導リニア車両「L0系改良型試験車」を試乗した。試乗走行ではまず、新幹線の国内最高速度である時速320km走行を体感後、時速500km走行(概ね2分間)を2回体感した。超電導リニアは、タイヤでの走行後、時速150km前後に達すると浮上走行(停車する場合は、浮上からタイヤ走行)に移行し、車内では、速度計がなければ速度が分からないほど、静かで安定した走行を実感することができた。座席にはシートベルトはなく、車内でも会話をすることができ、立って歩くこともできる。CTOフォーラムメンバーは時速500kmに達した後、速度計で記念撮影を行った。

試乗後は、質疑応答をはじめ、「リニア中央新幹線にみる価値創造と展開可能性」と題し、宮部義幸パナソニックホールディングス取締役・副社長執行役員、森本典繁日本アイ・ビー・エム常務執行役員CTO兼研究開発担当、特別ゲストの得能摩利子三菱マテリアル社外取締役によるパネルディスカッションを行った(コーディネーターは、五十嵐弘司日本能率協会上席アドバイザーが務めた)。

質問やパネルディスカッションでは、リニア新幹線がもたらす未来や価値創造などについて、CTOフォーラムメンバーから以下のような意見が出た。

  • ◆人口減少社会の中で「すでに東海道新幹線があるのになぜリニアが必要なのか?」といった声があるが、試乗した感想としては、乗り心地も走行の仕組みも従来の鉄道とは全く違う乗り物だ。JR東海はリニア技術の魅力をもっと「言語化」していくといい。
  • ◆そもそも軌道(レール)もない。「中央新幹線による東海道新幹線のバイパスを」という打ち出し方もあるが、『日本発で世界のスタンダードとなる次世代交通システムを開発している』と打ち出してはどうか。
  • ◆リニアは素晴らしい総合技術の集大成であることが分かった。それぞれの技術を分解してみたときに、そこから新たな別の価値を生み出せるかも知れない。もっと多くの人々にこの技術を知ってもらうべきだ。
  • ◆単なる乗り物としてではなく、日本として、超電導リニアという交通システムをどう活用するのか、もっと議論すべきだ。

また、JR東海のパターソン取締役からは、高速鉄道システムの海外展開の意義について説明があった。パターソン取締役からは超電導リニアの米国のワシントンDC~ニューヨーク間の北東回廊にもたらす効果として、日本の中央新幹線で東京~名古屋~大阪間と同様、米国の北東回廊も一つの「巨大都市圏」になることや北東回廊の競争力が強化されること、超電導リニア技術が国際的な標準となり得ることなどについて、説明があった。

(リニア中央新幹線についてさらに詳しくお知りになりたい方は、JR東海「リニア中央新幹線」サイトをご覧ください)
https://linear-chuo-shinkansen.jr-central.co.jp/

参加者記念撮影