JMA MANAGEMENT ロゴ

小会のさまざまな活動を紹介しながら、これからの経営課題を予見し、課題解決のヒントを探っていきます

時代の変化に応えつつ、原点に立ち返り「半歩先」へ進み続ける

産創立時に掲げられた、変わらない原点

日本能率協会(JMA)は、2027年に創立85周年を迎えます。私自身も1975年の入職から50年以上にわたり、JMAとともに歩んできました。

1942年の創立以来変わらない私たちの使命は、「経営革新の推進機関」であることです。「産業界にどう貢献するか」という基本的な考え方は80年以上を経た今も変わっていません。

会長室には、創立当時から歴代の会長に受け継がれてきた基本原則の楯があります。そこに記されているのは、「日本的性格の能率運動」「理論よりも実行」「重点主義」という三つの言葉です。私は毎日それを目にしながら、JMAが何のために生まれ、何をすべき組織なのかを考えています。

「能率」の原点は、人が持つ能力を最大限に引き出すことです。人の力を高めることで、組織や産業、社会をより良く変えていく。だからこそ、JMAは創立以来、人材育成や組織開発、ものづくり支援、産業振興を大切にしてきました。

「理論より実践」は、まずやってみる、挑戦してみるというマインドを忘れないこと。「重点主義」は、力を分散させず、重要な一点に集中して突破することです。1942年に掲げられた言葉ですが、現代の経営にも通じる考え方だと思います。

時代が変われば、事業の形や求められる役割は変化します。しかし、確かな「原点」があれば、その時々の状況に合わせて柔軟に変わることができます。守るべきものと変えるべきものを見極めることが、長く続く組織には欠かせません。

4つの事業で、産業界の課題に応える

現在のJMAは、「人材育成・組織開発」「ものづくり支援」「産業振興」「ISO審査・温室効果ガス検証・第三者認証」という4つの事業を柱としています。

かつてのJMAには、現在のグループ各社や関連団体が担うコンサルティング、調査研究、ビジネスツール、手帳、設備管理などの機能も含まれていました。時代の要請に応じて分社化や独立を重ね、現在の姿になっています。しかし、すべての根には「産業界に貢献する」という共通の使命があります。

人材育成では、特に次世代の幹部や経営者を育てることに力を入れています。教育は生き物です。時代の変化を捉えてカリキュラムを更新する必要があります。ただ一方で、人として何を大切にするのかという基本は、決して失ってはいけません。

ものづくり支援は、JMAの原点ともいえる領域です。これから人口が減少し、働き手が少なくなるなかでも、日本の製造業は高い品質を保ちながら生産性を向上させなければなりません。今後は、AIとものづくりをどう融合させ、人がその技術をどう使いこなすかが大きなテーマになります。

産業振興では、米国のショー&カンファレンスという考え方を持ち込み、さまざまな展示会を育ててきました。物流、プラントの展示会から、現在の「国際ホテル・レストラン・ショー」「FOODEX JAPAN」へと領域を広げ、製造業だけでなくサービス産業やホスピタリティ産業の発展にも取り組んできました。

ISOなどの審査・検証は、企業の品質や安全性、信頼性を客観的に示す仕組みです。現在は食品安全や環境問題をはじめ、社会の変化に応じて対象を広げています。日本企業が国内外で信頼を得るためにも、第三者による評価の重要性は増しています。

4つの事業を、すべて同じ企業に利用していただく必要はありません。大切なのは、必要なときに「JMAに相談すれば選択肢がある」と思っていただけることです。企業ごとの課題に応じて必要なものを選び、2つ、3つと組み合わせて活用していただく。その相談にいつでも応じられる組織でありたいと思っています。

現場の声を聞き、「半歩先」を形にする

JMAの事業は、産業界の声を聞くことから始まります。

評議員会では、企業の経営層や各分野の責任者の皆様から、現在の課題やJMAへの要望を伺っています。こちらが提供したいものを一方的に押し出すのではなく、「何を望まれているのか」を知り、その中からJMAがやるべきことを選び、形にしていく。この姿勢は創立当初から変わりません。

私は大学を卒業した1975年にJMAへ入職し、展示会事業を担当しました。「FOODEX JAPAN」が始まった年に入職したので、FOODEX JAPANの歴史は、私自身のJMAでの歴史と重なるところがあります。一緒に育ってきたというより、私のほうが育ててもらったという感覚です。

展示会事業で大切にしてきたことは、常に「時代の半歩先」を捉えることです。

一歩先では、まだ現場から遠く、夢物語になってしまうことがあります。しかし半歩先なら、「現実・現場・現物」とつながり、企業の方も納得して未来を描くことができます。少し先に必ず必要になるものを、現場の声から見つけて提案する。それがJMAらしい産業振興だと思います。

その後、私は教育事業に移り、現在の「JMAマネジメント・インスティチュート」や新任取締役向けの教育、個社の要望に応じて教育制度をともにつくるソリューション事業の基盤づくりに携わりました。

新任取締役セミナーの修了者を訪ね、「何が良かったか」「何が足りなかったか」を率直に伺ったこともあります。そこで得た生の声から内容を改善し、やがてその方々が評議員や理事となり、JMAの応援団になってくださいました。

現場の声を聞き、改善し、信頼を積み重ねる。JMAの事業とネットワークを育ててきたのは、生の声を何よりも大切にする姿勢だと思います。

会長は、組織を支える「一番下」の存在

私は2016年に会長になって以来、「JMAのファンを増やすこと」を自分の使命のひとつとしています。

JMAは、多くの企業や経営者、専門家の皆様に支えられています。そのつながりをさらに広げ、応援してくださる方々を増やしていくことが、会長としての役割だと感じています。

組織の中で、会長は一番上ではなく、「一番下」にいるものだとも私は考えます。なぜなら、会長は最後にすべての責任を取る存在だからです。

最前線で働く職員が安心して挑戦できるよう、下から支える。「最後は会長がいるから大丈夫」と思ってもらえる存在でありたい。私自身、仕事を任せ、失敗したときには責任を引き受けてくださる先輩や歴代会長に恵まれてきました。

人を育てるには、失敗を許す土壌が必要です。上司は部下に仕事を「投げる」のではなく、「任せる」。そして最後は自分が責任を取る。人が思い切って挑戦するためには、安心感が必要です。安心感なくして挑戦はなく、挑戦なくして成長はないと考えています。

日本の強みを信じ、前を向く

日本の産業界が抱える課題を挙げれば、きりがありません。人口減少、働き手不足、技術革新、国際競争など、環境は厳しさを増しています。

しかし、大切なのは前を向き、未来を描くことです。

日本には、真面目さや勤勉さ、高い教育水準、ものづくりの力、そして世界に誇れるホスピタリティがあります。海外へ行くと、あらためて日本の素晴らしさに気づかされます。私たちは、もっと自信を持って良いと思います。

未来に自信を持てれば、そこに投資が生まれ、挑戦する空気も生まれます。W杯やWBCで多くの人の心が1つになるように、日本にはまだ、心が躍る可能性がたくさんあります。JMAは、その可能性を見つけ、形にしていくお手伝いをしたいと思っています。

企業の規模にかかわらず、重要なのは、経営トップが明確なミッション、ビジョン、パッションを持っていることです。私はそれらを「MVP」と表現しています。

ミッションとビジョンがあっても、実現したいという「情熱」がなければ人は動きません。せっかく仕事をするのであれば、夢を持ち、楽しみながら、思う存分取り組んでほしいと思います。

多様な人に会い、自分と異なる意見に触れることは、財産を増やすようなものです。自分にとって心地良い意見だけに囲まれていては、成長が止まってしまいます。自分の軸を持ちながら視野を広げる力がリーダーには必要です。

JMAは皆様と一緒に考え、一緒に取り組み、ともに成長する。それが本当のソリューションだと思っています。その土台となるのは、「信頼」です。だからこそ、「嘘をつかない」「ごまかさない」。一度失われた信頼を取り戻すことは、簡単ではありません。

これからも私たちは「原点」を大切にし、産業界の声を聞き、誠意と真心と対話を基軸としながら、半歩先の未来を皆様と歩み続けていきたいと思います。