JMA MANAGEMENT ロゴ

小会のさまざまな活動を紹介しながら、これからの経営課題を予見し、課題解決のヒントを探っていきます

内発的動機から始める挑戦が、未来をつくる。

JMAで確信した「人」と「つながり」の力

2027年に創立85周年を迎える日本能率協会(JMA)は、人と人が出会い、互いの課題や思いに触れることのできる「場」をつくってきました。そこから新しい挑戦や価値を生み出すことが、これからのJMAの役割だと思っています。

私自身は、JMAが創立60周年を2年後に控えた2000年に、中途採用で入職しました。

最初に配属されたのは、ISOの審査機関(JMAQA)です。外回りの営業や見積書の作成、規格の習得に追われる毎日で、仕事内容だけを見れば、民間企業と大きく異なるものではありませんでした。

一方で、最も大きな違いを感じたことは、新聞などの報道で見聞きするような著名な経営者の方々が、日常的にJMAへ集う姿を目にすることでした。

さらに、入職早々、大手電機メーカーの社長を務められた方の大阪出張に同行する機会にも恵まれました。その際に掛けていただいた言葉を、今でもよく覚えています。

「周りをよく見てごらん。できることがたくさん見つかるはずだよ」

その後も多くの経営者の方々と出会うたびに、JMAが長い年月をかけて築いてきた「信頼」の重みを実感しました。同時に、企業の皆様から寄せられる期待に応えていかなければならないという使命感も、日々強くなっていきました。

私はもともと、ISOの仕事に携わりたいと考えてJMAへ入職しました。しかし、2年後には研修部門へ、その3年後には展示会部門へと異動し、比較的短い期間に三つの異なる事業を経験することになりました。

当時はまだ視野も狭く、希望していた仕事から離れる異動を不本意に感じたことも正直に言えばありました。しかし、審査・検証、教育・研修、展示会という異なる事業に携わったからこそ、JMAが「経営革新の推進機関」として、産業界にどれほど幅広いネットワークを築いているのかを実感できたのです。

役員となった現在は、外部理事の皆様をはじめ、評議員を務めていただいている各社の役員の方々とお話しする機会も増えました。そうした経験を重ねるなかで、「人脈の広さ」と「つながりの強さ」こそが、JMAに産業界での独自の役割と立ち位置を与えてくれていると確信しています。

AI時代に求められる「自ら考え、新しいものを生み出す力」

各社の経営課題を持ち寄って議論するJMAの評議員会は、現在8つの部門と地域で開催されています。

「失われた30年」や「技術で勝ってビジネスで負ける日本」といった表現を持ち出すまでもなく、企業には、変化する時代に対応した「経営革新」が求められています。

そのなかで、ここ数年、評議員会の議論が生成AIそのものではなく、むしろ「人」に焦点を当てることが増えている点を興味深く感じています。この「生成AI」と「人」の関連については、JMAが毎年実施している「経営課題調査」の2025年度版でも、象徴的な結果が出ました。

生成AIの普及に伴って「低下が懸念される人の能力」として、最も多く挙げられたのは「自ら考え抜く力・やり抜く力」です。次いで、「文章作成力」「創造的思考(新たなものを生み出す力)」が続きました。

一方、生成AIの普及によって、「今後さらに重要性が高まる能力」として最も多く挙げられた圧倒的1位は、「創造的思考」です。

文章作成のようにAIが一定程度代替できる能力がある一方で、新しいものを生み出す力は、今後むしろ重要になる。そこには、「AI任せ」や「AIへの過信」によって、自ら考える力が弱まり、企業が目指す新しい価値づくりへの取り組みが弱体化するのではという、経営者の皆様の強い危機感が表れているように思います。

「私はこれをやりたい!」から創造は始まる

AIの回答をそのまま受け入れるのではなく、時には疑い、自らの先見力や直観力、決断力を磨いていく。その上で、私がもう1つ重要だと考えているのが、「内発的動機」です。

つまり、「私はこれを実現したい」「これをやってみたい」という、自分の内側から湧き上がる思いです。

会社や学校で「新しいものを創造してください」と求められても、すぐに新しいものを生み出せるわけではありません。新しいものを創造することは、他人に言われてやるだけではできず、自分自身の意志があってこそ実現できるものです。そのため、「新事業創造室」のような部署を設けても、自ら創造しようとする意志がなければ、期待した成果にはつながらないことがあるのです。

一方で、会社の正式な方針や上司の指示とは別に、「ヤミ開発」や「密造酒づくり」と呼ばれるような自主的な活動から、世界的なヒット商品が生まれた例は少なくありません。

その違いはどこにあるのでしょうか。

それは、「どうしてもこれを実現したい」という強い思いがあるかどうかです。誰かに命じられたからではなく、自らの意思で始めた挑戦だからこそ、困難に直面しても考え続け、工夫を重ね、最後までやり抜くことができます。

この「内発的動機」は生成AIには持ち得ないものです。だからこそ、AI時代が進むほど、人が自ら動こうとする意思や情熱は、これまで以上に重要になるでしょう。

人の思いが集まり内発的動機が生まれる、JMAのプラットフォーム

では、「これをやりたい」という内発的動機は、どのように育まれるのでしょうか。

もちろん、日頃から何に興味や関心を持っているかという個人的な要素も影響します。しかし、広い視点で見れば、JMAの特徴であり強みでもある「他者とつながっている感覚」が、大きな助けになると思っています。

ともに働き、支えてくれる同僚がいる。信頼と期待を寄せてくださるお客様がいる。困った時に相談でき、時には自分が力になれる相手がいる。JMAには、組織の内外を問わず、多様な人とつながり続けることのできる環境があります。

「こうしてほしい」「この課題を一緒に解決してほしい」という期待に触れることで、「自分なら何ができるだろう」「私はこれをやってみたい」という思いが自然に生まれることがあります。

さらに、お困りごとの解決を支援し、相手から感謝される経験を重ねると、「次も誰かの役に立ちたい」という新たな意欲につながります。内発的動機が次の行動を生み、その行動がまた新しい内発的動機を育てていく。そうした前向きな循環を生み出せることも、JMAのプラットフォームの価値だと思います。

AI時代に高まる「リアルな場」の価値

ここでも、中心にあるのは「人」です。

インターネットにつながっていれば、膨大な既存情報にアクセスできます。生成AIを使えば、世界中に蓄積された情報をもとに、類推や分析をすることもできます。これは非常に大きな力です。生成AIによって世界が変わるという見方も、決して大げさではないでしょう。

一方で、インターネットに掲載されていない「生の情報」や「人の思い」「人のエネルギー」に直接触れられるのは、人でしかあり得ません。

指示された仕事や、すでに決められた作業であれば、AIのほうが速く、正確に対応できる場面も増えていくでしょう。しかし、「何をやりたいのか」「どんなものを創造したいのか」は、人間が自らの内発的動機によって生み出すものです。

「もっと良くしたい」「今の状態を、ありたい方向へ変えたい」という経営革新につながる内発的動機も、AIとの対話だけで生まれるものではありません。人と人が対話し、互いの課題や思いに触れることで、初めて動き出すものだと思います。

JMAが、セミナーやカンファレンス、展示会、研究会など、多くの人がリアルに集まり、交流できる場を提供している理由もそこにあります。

業種や役職、世代、さらには国境を越えて多様な方々が集まり、時間とエネルギーを共有する。そうしたJMAの「場」は、AIが発展する時代だからこそ、これまで以上に高い価値を持つと確信しています。

「失敗」を「学び」に変え、若者の挑戦を支える

これからの時代と「人」について考える時、欠かすことのできない存在が若い世代です。

各企業はもちろん、日本の未来を担うのが若者であることは言うまでもありません。私たちJMAも現在、中途採用を中心とした人材構成から、新卒採用にも積極的に取り組む組織へと変化しています。

JMAが主催する分科会にて、内閣府による日本と欧米諸国の若者の意識比較調査が話題になったことがあります。その中で、日本の若者は「挑戦意欲」と「自己肯定感」が、欧米諸国と比較して30ポイント程度も低いという結果が示されていました。

文化的背景によって回答傾向が異なる可能性は考慮しなければなりません。しかし、実際に企業の方々からも、「若手社員が失敗を恐れている」「どうすればチャレンジしてもらえるのか」という声をよく聞きます。

若者が失敗を恐れる背景には、「成功」の反対を「失敗」と捉えすぎていることや、「正解か不正解か」を過剰に気にする傾向が見えてきます。しかし、「成功か失敗か」という二項対立を、「成功か学びか」へと変えることはできます。さらに「成功」を「成長」と捉え直すこともできるはずです。

期待した結果が出なかったとしても、そこから何を学び、次にどう生かすのか。その経験によって本人が成長できたのであれば、決して無駄ではありません。

若い社員が思うような成果を出せない時、「能力が足りない」と考えるのではなく、「まだ経験が足りない」と捉え直す。そうすれば、組織側が若者のためにできることは、数多く残されているはずです。

実際、ビジネス以外の分野に目を向ければ、日本から世界で活躍する若者が次々と生まれています。若者に能力がないわけではありません。力を発揮し、挑戦できる環境を生み出し続けることが重要なのです。

長い歴史を持つJMAは、役員研修など比較的上の年代を対象とした事業のイメージが強いかもしれません。しかし現在は、20代や30代のビジネスパーソンを対象とした「HR Camp」「JMAマーケターズ・パーティー」「ネクストリーダーズ」などの場に、多くの若者が参加しています。

そこでは、業界や企業の枠を超えた方々が集まり、それぞれのビジネスの未来を切り拓こうと切磋琢磨しています。

JMAだからこそ提供できる、「業界を超えたプラットフォーム」。そこで生まれる「リアルな人とのつながり」を通じて、一人でも多くの若者が「私はこれをやりたい!」という内発的動機を持ってほしいと思います。

そして、誰かに言われるのを待つのではなく、自分の意思で「社会を変えたい」「新しいものを創りたい」と動き始める。そうした若い世代が増えていけば、これほど頼もしいことはありません。

JMAが掲げる行動指針には、「新たな挑戦を楽しみ、新たな価値と未来を創る」という言葉があります。私自身も挑戦を続けながら、若い世代の方々と一緒に新しい価値と未来を創り続けていきたいです。そしてその先に、日本の産業界をポジティブに変えていけることを楽しみにしています。