ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2024

会期
2024.11.2011.2210:00-17:00
会場

東京ビッグサイト東展示棟ACCESS

EXHIBIT 出展のご案内

出展者インタビュー アイリスオーヤマ株式会社

アイリスオーヤマ株式会社

アイリスオーヤマ株式会社執行役員
ロボティクス事業本部 本部長
アイリス電工(株)取締役副社長
(株)シンクロボ 取締役
吉田 豊 様

当社が本気でロボティクス事業に取り組んでいることを周知したい

インテリア用品から家電、ペット用品、お米まで。アイリスオーヤマ様は「ジャパン・ソリューション」を経営理念に掲げ、生活用品の企画・製造・販売まで行う会社です。今、同社が投資を行っているのが法人向けDX清掃ロボット。ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO2023にはその新製品でご出展いただきました。狙いと効果について執行役員の吉田豊様にお話を伺いました。

ブース内で実機を稼働させ
性能をじかに見ていただいた

  • ビルメンヒューマンフェア2023では、水拭き清掃ができる自律走行型ロボット「BROIT(ブロイト)」を出展しました。強力な床洗浄が可能なスクラバーロボットで、当社としては初めての自社製造ロボットです。

    これまでも多くの清掃会社様に、除塵タイプの法人向けDX清掃ロボット「Whiz i(ウィズアイ)アイリスエディション」をご採用いただいておりますが、かねてより水拭き清掃用のニーズに対しても広くご要望をいただいており、「BROIT」は2024年半ばより販売開始を予定。今回のビルメンヒューマンフェアでもお披露目いたしました。

    当日のブースでは、大きなモニターで「BROIT」の紹介動画を流しながら、バッテリー交換による長時間運用やメンテナンスの簡単さ、導入のサポートサービスなどについてご説明しました。

    また、ブース内に実機の稼働スペースを作り、実演も行いました。床に擬似汚れをまいて清掃具合や、床にどのくらいの水が残っているかを確認していただくためです。

    水拭き清掃の際、清掃業者の方が一番気にされるのは、拭き漏らしです。万が一、拭き漏らしがあると、お客様が滑って転んでしまうかもしれず、大変危険です。「BROIT」のデモ走行を行ったとき、みなさん必ず床をじかに触って残水があるかどうかを確かめ、「うん、これなら大丈夫だね」とご満足いただけていたのが印象的でした。

    スクラバーを使った水拭きタイプの清掃ロボットにはこれまで、「使用後のメンテナンスに時間と手間がかかる」という課題がありました。そこで「BROIT」は、バッテリーや給排水タンクを着脱式に改良。給排水タンクを着脱式にすることで給排水場への移動作業を省略できるほか、着脱交換ができるリチウムイオンバッテリーを搭載したことで、充電中に清掃が中断するデッドタイムを大幅に低減でき、フレキシブルな清掃計画が立てられます。さらに、ブラシやホッパー、スキージーなど日々のお手入れが必要な各パーツを簡単に脱着して水洗いすることができ、作業者の負担が軽減します。

    実際、ブースにいらっしゃった鉄道会社や空港などのお客様からも「もう、これで十分だね。このサイズのロボットを何台も置けば良い」と高評価をいただいています。

  • 当日のブースの様子
    当日のブースの様子。営業担当者10人で対応したが、人手が足りなくなるほど大盛況だった。

「アイリスがすごいことになっている」
来場者の間でちょっとした噂に

  • 展示会への出展に際し、実のところ、出展前日までは不安もありました。今回のブースは会場入り口に近い場所だったので「来場者の方が素通りしてしまうのではないか」と心配していたのです。でも、いざ始まってみると、多くのお客様に足を止めていただくことができました。

    取引先の清掃業者様からは、「入り口付近でこんなに滞留するのはすごいことだよ」とか「業界の人の中で『アイリスのブースがすごいことになっている』って、すごい噂だよ」とお声掛けいただけました。本当にうれしかったですね。

    出展の目的として、新製品である「BROIT」のお披露目の他に、「アイリスオーヤマが本気でロボット事業に取り組んでいる」ことをアピールしていきたいと考えていたからです。

    当社は、この分野においては新参者です。インテリア用品や家電、LED照明など生活に必要な用品を企画・製造・販売する会社としてのノウハウはありますが、法人向けDX清掃ロボットは後発。それでも、肝煎りの事業と位置付けて取り組んでいます。

    当日のブースでは営業担当者を10人配置してお客様の対応したのですが、途中で人数が足りなくなり、私や広報担当者なども総動員でご説明をしました。様々な方に興味を持っていただくことができ、当社の取り組みを情報発信していくという目的は、ある程度達成できたのかなと思っています。

  • BROIT
    水拭き清掃ができる自律走行型ロボット「BROIT」。

営業担当者が一社ずつ現場を訪れ
実態に即した運用法を提案

  • 当社の清掃ロボット事業は、製品をお売りして終わり、ではありません。導入から活用までサポートし、お客様の目的である「清掃業務の改善」の達成までコミットしています。

    私たちが参入を決めたころ、清掃ロボットの業界では、「ロボットを導入しても、日々の業務にどう組み込めばいいか分からない」というお声がお客様からたくさん上がっていました。ビルのオーナーさんによっては玄関先で稼働させ先進性をアピールする方もいらっしゃいました。
    たしかに先進性をアピールできるのは、清掃ロボットを導入するメリットの一つです。でも、せっかく導入されるわけですから、しっかり活用していただきたいという思いもありました。

    そこで当社では、ロボットを販売したあとのサポートにも注力することにしたのです。

    具体的には、まず営業担当者が一社一社すべての現場にお伺いして、清掃員の方のシフト表や作業工程表、あるいは図面を拝見し、ロボットを導入した際の運用案までご提案していきます。どこにどういった清掃ロボットを配置するのがいいのか。清掃員の方がいつロボットを出し、どのタイミングでエレベーターに載せればいいのか。また、ロボットを導入した場合の清掃コスト削減シミュレーション、清掃仕様書、シフト表などを作成します。

    さらに、実際に運用してみての現場検証、運用上の課題の洗い出しや適正評価なども行います。清掃ルートはすべてクラウド上で確認でき、思ったほど成果が上がっていない場合は、機能が合わなかったのか、サイズが合わなかったのかなどを検証、うまくいくまで改善していきます。
    当事業部には、長年ビルメンテナンス業界に携わってきた者も数多く在籍しており、清掃現場の実態についても一定の知見があると自負しています。

    また、技術開発面では東京大学のスタートアップ企業をM&Aするなど、先行投資も積極的に行い、現場に即した製品開発やサービス向上に取り組んでいます。

  • 動画を使ったセミナー
    「BROIT」の機能やサポートサービスは、動画を使ったセミナーで丁寧に解説した。

なぜアイリスオーヤマが
法人向けDX清掃ロボット業界に参入するのか

  • 「なぜ、アイリスオーヤマが業務用清掃ロボットをやるのか」。そういう疑問を抱かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、当社は経営理念として「ジャパン・ソリューション」を掲げています。

    これは「日本の社会課題を解決する」という考え方で、新規事業に参入する際には、この理念を特に大切にしています。例えば、家電事業に参入した際は、リーマンショックに伴い日本の家電メーカーの技術力が海外に流出するのを防ぐためでした。さらに、LED照明事業は節電需要のため、精米事業は東日本大震災の被災地支援と農業復興のためです。

    法人向け清掃ロボット事業への参入には、「少子高齢化に伴う労働力不足の問題を解消したい」という思いがあります。労働力不足の問題は、日本国内のみならず世界的な課題でもあります。

    当社調べですが、清掃業界に限らずすべての産業分野において、近い将来、国内の労働人口5000万人に対しておよそ700万人分が不足することが予想されます。こうした不足分は、ロボット導入など業務の効率化などによって補うほかありません。

    一方で、清掃ロボット産業はまだ始まったばかりの業界ですから、「オートスタートとオート充電をどうするか」「エレベーターとの連携をどうするか」「遠隔操作」や「格納場所」など、市場全体で課題も山積みです。どれも一朝一夕で解決できる課題ではありませんが、取り組みながら地道に一つずつ、解決していくしかありません。

    当社は「ロボティクス事業」に本格参入してからまだ3年間あまりですが、その間、多くの小売企業様に導入していただき、5000社以上(※)の企業様にご活用いただいています。そのなかで得た様々な知見やノウハウを活かしながら、日々、製品とサービスの改良に努めているところです。

    ※:2020年1月~2023年12月までのサービスロボットの累計導入社数(アイリス電工株式会社での販売分、及びトライアルを含む)。

  • 吉田様
    吉田様「労働人口減少社会をロボットで解決し、社会課題解決に貢献します。」

法人向けDX清掃ロボットという市場を
一過性のブームにしないために

  • 私個人としては、清掃ロボット事業は現在、キャズム(谷間)に差し掛かりつつあると考えています。キャズムとは「アーリーアダプター(初期採用者)とアーリーマジョリティ(前期採用者)の間には谷間があり、ここを超えられない商品は一過性のブームで終わってしまう」とするマーケティング理論の一つです。

    清掃ロボットは、感度の高いビルオーナーさんや清掃業者様には普及しつつあります。すなわち、アーリーアダプターにはそれなりに周知できている段階です。ここからさらに市場拡大を行い、一般的な市場として定着させていくには、アーリーマジョリティに広くリーチしていく必要があります。

    このアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にあるキャズムを超えるためには、どうすればいいか。私は、ビルメンヒューマンフェアのような展示会に積極的に出展し続けてアピールしていく必要があると考えています。

    現状ではまだ、「ああ、こういう清掃ロボットも出てきたんだ」という見方が一般的です。それがそのうち、「ロボットが掃除をするのは当たり前だよね」という意識になれば、普及も加速していくはずです。

    少子高齢化による労働力不足の問題を解決するためにも、ロボット業界を盛り上げていくためにも、今後もこうした展示会に出展して、業界全体で切磋琢磨しながら、市場を切り開き、盛り上げてきたいと思っています。