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連載『農家になろう!』第二回/農業者の9割が辿る王道ルートも1つじゃない

2015.2.4

 

■ゼロから農家になるためのへ王道ルート

土地なし、コネなし、技術なし、でも農家になりたい!
そんな農業界のホープたちに愛を込めて送る連載の第二回。
お待たせいたしました!
第一回では農家になるための定番ルートを3つご紹介してきました。
前回登場いただいた埼玉県農業会議の田島貞治さんによると、
ゼロから農家になるためのへ王道ルートとしては・・・

農業大学校で1、2年間学ぶ

農業法人で2、3年勤務

農家として独立

という流れで、おおよそ9割以上の人がこの道を歩んでいるとのこと。
この「農業大学校」という部分ですが、
必ずしも「農業大学校」ではなく、民間の農業学校や
自治体が農業の担い手を育成するために行っている講座など
学びの場はさまざま。

とはいっても・・・
いまの仕事を辞めて学校で通うってこと?
学費っていくらかかるの?
何を教えてもらえるの?
などなど、逆に疑問が湧いてきたという方もいらっしゃるのでは?

そこで今回は一般企業に勤めていたキャリアを捨てて”農業道”に進んだ4人の輝く農女たちを取材!
では早速ご紹介しましょう! 学びの方法ラインナップは、

@就農後のネットワークも心強い「農業大学校」
A金銭的なサポートも受けられる 自治体の「担い手育成事業」
B先輩の“背中”を見て学ぶ 「民間の農業研修」

の3本。
まずは、ルート@からのぞいてみましょう!


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@ 就農後のネットワークも心強い「農業大学校」

農業大学校は、各道府県に設置されていて基本は2年制。
以前は入学にあたって年齢制限がありましたが、今はありません。
入学必要経費は各学校によって異なりますが、
例えば埼玉県の場合は授業料や教科書代として1年間につき15万円程度だそうです。

去年の記事でも登場いただいた岡山県「オルトファーム」の森安かんなさんは、
現在、お米と小松菜の農家さんですが、実は彼女も農業大学校の卒業生。
下の写真は学内イベントものだそうで、左から2番目がご本人。

サンタクロースとバカ殿さまという「両手に花」(?)状態で、とっても楽しそうですね。
(農業大学校については、第一回記事や森安さんの記事でも取り上げています)

 

Q 農業大学校に通った期間と、そのいきさつを教えてください
学校に通ったのは2年間です。
前職は東京の銀行員だったのですが・・・
30歳になる前に自分の人生を変えたいという気持ちがありました。

もともと地元の岡山に帰りたかったのと、
母の家庭菜園を手伝っていたときの楽しい記憶がありまして……。
そんなときに母から農業大学校の話を聞き、
ここでのんびり学生生活を送ってみるのもいいかなぁと思ったんです。

 

Q 専攻などはあったのですか?
花卉(かき)専攻でした。
入学時に希望の専攻を提出するのですが、やっぱり一番人気は野菜でしたね。
「私も野菜がやりたかったのに」と先生にこぼしたら、
「野菜だって花を咲かせられなければ、実らないでしょ」と一蹴されちゃいまして(笑)

でも始めてみると、家庭菜園とはまったく違う装置の本格的な感じやその大きさに興奮しました。
ハウスに水ひとつ撒くにしても大掛かりなホースですし、
観賞用の菊の花を支える仕組みだとか、
カーネーションの土を消毒する機械なんかも面白かったですね。

 

Q 入学試験は?
私は「一般入試」で、学科(数学・国語)と面接でした。
あとは農業高校の生徒などが受ける「推薦入試」もありました。

 

Q 在学中はどんなことを学びましたか?
1年目では、午前中は農業全般の座学。
野菜や畜産のことなども幅広く教わりました。
午後は実習や2年生のお手伝いですね。

また2年目は、各人が自分のハウスを持たせてもらうのですが、
そこで課題を立てて研究などを行います。
私は、ポットマムという鉢植えの菊を担当して、
その仕立てと販売価格について研究しました。

 

Q 1日のスケジュールは?
全寮制だったので、朝の7時か8時ごろに点呼があり、その前までには起床。
16時には授業が終わり、その後はハウスを閉めるなどの当番がないかぎり、
バイトに行ったり自由にしたりしていました。

夜の22時ごろにも同様の点呼があるので、夜間の外出は届出が必要でした。
もっとも、周囲には遊ぶ場所もありませんでしたが(笑)
実は今の夫とはこの学校で知り合ったのですが、
デートといえば一緒に近隣の農家さんを回って見学させてもらったりしていましたよ。
食事はもっぱら学食でしたね。

 

Q 在学中の「生活費」はどうしていましたか?
昔から貯金が趣味だったので、それでなんとかなると思っていました。
(2年間で100万円あればいけるなと思った記憶がありますが、今はもう少し必要なようです)
足りない分は、時給が良いので家庭教師のバイトや季節労働をしたり、
先に夫が卒業して研修をしていたころは土日に私もそこへ行き、お昼をごちそうになっていました。

 

Q 学校に入ってよかったことは?
就農する上で欠かせない人たちとのネットワークが、事前に築けたことです。
学校の先生はずっと先生だけやっているワケではなく、
人事異動で県が運営している「農業普及指導センター」の普及員にもなるんですね。

私は卒業と同時に就農という形をとったので、
元先生の普及員さんが就農や研修について色々と相談に乗ってくれたり、
就農する地域の普及所と連絡を取り合ってくれたりしました。

あとは同級生との繋がりも財産になりました。
実際農家として独立すると、一人では不安になることもあるんですよね。
そんな時にフェイスブックなどで励ましあったりして、元気をもらっていますよ。

―― 森安さん、ありがとうございました! さぁ、次はルートAへ!


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A金銭的なサポートも受けられる
自治体の「担い手育成事業」

「学校」というカタチでなくても、もちろん農業を学ぶことは可能。
実は各自治体ではそれぞれ「担い手育成事業」というものを行っているんです。
研修を初めとしたその活動は幅広く、年間150万円が支給される「青年就農給付金(準備型)」や
第一回記事で紹介した「農の雇用制度」もその中に含まれているんですね。

育成塾の塾生でもある宮城県の「サンクチュアリますぶち」代表の早坂幸野華さん
「担い手育成事業」で研修を受けた女性のひとり。
いったいどんな経験をされたのでしょうか?

Q 「担い手事業」を利用した期間ときっかけは?
20年も前の話になりますが、2年間です。
もともとイチゴが大好きだったのですが・・・
地元のイチゴまつりに出かけたときにちょうど新規就農についてのブースが出ていまして……
ふらりと立ち寄ったときにこの制度の存在を知ったのがきっかけです。

 

Q 具体的にはどんな研修を受けたのですか? 1日のスケジュールは?
研修の拠点は、地域の「花卉(かき)園芸センター」でした。
基本的にはそこの作業を手伝う中で、作物の育て方を学んでいくんですよ。
私は主にイチゴのお世話をしました。
学科に例えると、生物とか化学のようなことも学びましたし、独立後に欠かせない経理のことも一通り教わりましたね。

学校のように時間割が決まっているわけではなく、
手の空いたときはワークショップや打ち合わせをしたりして流動的でした。
時には、地域のお祭りや直売所の手伝い要員として出動することもあってほぼ毎日休みなし(笑)
でもそのおかげで知り合いもたくさんできたし、作物育成以外の農業の現場も見ることができたと思っています。

 

Q 当時早坂さん21歳、しかもご夫婦で(!)研修を受けていたそうですね。
その間の生活費はどこで工面していたのですか?
当時は「担い手育成基金」という制度があって、夫婦それぞれが2年間お金を借りられたので、
これでどうにか生計を立てていました。
県が建てた研修生用の住宅があったので、これも助かりましたね。

このときは、仙台の街中から園芸センターのある米山町に移住してきたばかり。
しかもまだ1歳の息子を保育園に預けながらの研修で……。ほんと若かったというか無謀というか(苦笑)
色々なハードルはあったと思いますが、その気さえあれば、道は開けるものなんですよね。

 

20年前、研修生としてスタートをきった直後の家族写真。
ご主人はすでに他界されており、この可愛い赤ちゃんは今ではたくましい青年に――。
早坂家の歴史に残る貴重な一枚です。

Q イチゴを育てていたときのご苦労は?
うちはケーキに乗せるような業務用のイチゴを育てていたのですが、
一番注文が増えるのはなんと言ってもクリスマスシーズン。
本来の収穫時期は春先なので、それを真冬にもってこようとすると、
ハウスの温度を外の季節と逆に設定しなければならなくなります。

そうすると……冷暖房代が、なんと年間ウン百万円!
個人規模なのに目玉が飛び出るようなコスト高になってしまうんです。
とは言え、普通に豊作のシーズンに出荷しても需要と供給の関係で、単価が下がってしまいますし……。
あとは、ケーキにデコレーションしたときに見栄えが良くなるよう、
イチゴの大きさを一定に保つのにも苦労しました。
当時はMAサイズといって、LとMの中間でしたね。

さらに胸が痛んだのは、ミツバチのこと。
当時ハウスでは受粉をさせるためにミツバチを飼って巣箱を置いていたのですが、
不自然な環境にいるせいか皆1年足らずで死んでしまうんですよね。
イチゴは大好きだったけど、自分としては「もっと自然な環境で農業を続けていきたい」と思いまして、
今はハーブ農園として仕事を再開しています。

当時のイチゴたち。土ではなく水溶液から養分を吸い上げる「水耕栽培」でした。

業務用(ケーキ用)の苺なので、一粒ずつトレー詰め(汗)
選別に48時間かかった事もあったそうですっ!

 

Q 現在生業としているハーブは、どこで勉強されたのですか?
イチゴ研修と同時に、別口でハーブも勉強していたんです。
実はまだハーブが一般的じゃなかった小学生時代からすでに魅力にとり付かれていまして・・・
偶然ハーブ研究家さんを紹介されたときについ
「私は将来、ハーブのインストラクターになりたいんです。だから私の先生になってください!」と(笑)
その後、先生のもとには月に1回、8年間通いました。

―― 「これまた無謀でした」と笑う早坂さんですが、こういう熱い気持ちと行動が周りの方をも動かして、今に至るのでしょうね。


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また、同じ「担い手育成事業」に含まれる「農の雇用制度」。
どちらかといえば新規就農者にノウハウを教える研修農家さんのための制度ですが、
新規就農者にもメリットがあるようで……。

 

この制度を活用した、埼玉県の農業法人「内野農場」にお勤めの大塚靖子さんにもお話を伺いました。

これは定植と言って、万能ネギの苗を植えているところ。
大塚さん、いい笑顔ですね!
「種の殻がついたままのネギは、何回見ても愛らしく感じています。
こんなに小さくても、もう立派なネギの香りがするんですよ。不思議ですよね」とのこと。

 

Q ちなみに、上にかかっている網は何ですか??
これは、ネギがたおれないようにするためです。
細いネギなので、風や自分の重さや消毒の水圧に負けて倒れるのを防ぐために、網をかけて支えてあげています。
ちなみにハウスの中でも風は吹くんですよ。
冬は閉めていますが、ハウスの側面には側窓があって天井にはちゃんと天窓もあります。

ほら見てください。上写真のネギはまだ小さくても、3カ月も経つと……

網の間から、こんなに立派にネギが伸びてくるんです!

 

Q 「農の雇用制度」を受けてみて、よかったことはありますか?
この制度を受けたのも、今勤めている「内野農場」です。
2年間で何をやるかの計画書が必要だったのですが、これを書き出してみたことは役に立ちました。
本当はネギだけでなく米や麦の作業もやってみたかったのですが、
1年目はあまりできていなかったことに気付けたんです。

上司にお願いしたところ、翌年からはかなり手伝わせてもらえるようになりました。
今では、お米の配達や販売の現場にも関われているので、
将来の独立に向けて、少しずつ見識を広げることができそうです。

―― 大塚さん、夢に向けてぜひ頑張ってください! 農女新聞も陰ながら応援させていただきます。さて、最後はこの人!


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B先輩の“背中”を見て学ぶ 「民間の農業研修」

一般の農家さんから農業を学んだのは、真木美里さん。
真木さんは東京で工務店や店舗デザインなど10年間建築業に携わった後、

自然が身近にある場所で生活したいと農業の道へ進みました。
現在は、研修時に一緒だった女性と二人で有機農業を営んでいます。

スーパーに並んでいるような野菜のほとんどを扱っていて、
真冬を除いて常に畑には10〜15種類の作物があるという「少量多品目」の農家さんです。

Q 研修の期間は? また、研修先はどうやって探したのですか?
長野県の「織座農園」というところで1年間研修を受けました。
特に期間が決められていたわけではなく、長い人で3年間、短いと1週間という人もいましたね。
有機農業を学びたくて東京都文京区にある「日本有機農業研究会」という機関に研修先を問い合わせたところ、

紹介してもらったのが先ほどの農園さんだったんです。
正直、研修がどういうものかはよく分かりませんでしたが、
「だめなら戻ればいいや」ぐらいの気楽な気持ちでスタートしました。

 

Q 研修ではどんなことをしていたのですか?
特に格式ばった研修ではなく、種まきや手入れ、
収穫などを農園の方と一緒に作業していく中で、自然とコツを身に付けていく感じでした。
長野は冬の訪れが早く厳しいので、「限られた期間の中でどれだけ早く作物を育てるか」が重要な点です。

冬の間は、有機農業の集会や講演会に参加したり、味噌を仕込んだり、
1シーズン分の薪をまとめて割ったりしていました。
おかげで最初は、筋肉痛が絶えませんでしたよ(笑)

 

Q 1日のスケジュールは?
朝は5時に起きます。
犬や家畜の世話や、おからや米ぬかをあわせて作る「ぼかし」という肥料をかき混ぜたりします。
朝食を食べた後は、種まきや育苗、農薬を使わないので雑草の管理にも時間を使います。
作業が終わる時間は時期によりますが、出荷前はそれなりに遅くなりますね。

 

Q その間の「生活費」はどうしていましたか?
住み込みだったので、衣食住には困りませんでした。
お給料や報酬は一切出なかったのですが、
農閑期以外は忙しくほとんど「食べて寝るだけ」状態だったので使い道もないですし(笑)
後は失業保険と、研修生にも少しお金が下りてくる「里親制度」というシステムに助けてもらいました。

 

Q 日々作物を育てる中で、強く感じることは何ですか?
「人間ができることって、限られているんだなぁ」ということです。
私たちは自然の成り行きにまかせた農業の方法をとっているので、
雨が何日も降らなければ作物はダメになりますし、農薬を使わないので虫も食います。
だから大量生産はできないですし、収穫の量も読めません。
でも、そうやってできたものだからこそ、自然のありがたみを感じるんだなと思いますね。

―― そう穏やかな声で語ってくれた真木さん、ありがとうございました!

 

次回は、いよいよ農業経営の世界へ!

農家になる前に身につけておくべきノウハウを得るルートはひとつじゃない!
というコトがよ〜く分かる4人の方々のお話。
就農希望の方は自分に合ったルートから農業への道を登ってみてはいかがでしょう。


さて、次回はいよいよ販売や経営の世界。
「できた作物でどう生計を立てるか」にフォーカスします。


じつは皆さん、これが一番知りたいんじゃないでしょうか???
今回登場していただいた「農女」の皆さんからも、
かなり突っ込んだお話を聞けちゃいましたので、どうぞ楽しみにお待ちくださいね!


(つづく)
*第三回は3月上旬掲載予定です。