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輝く農女新聞内で特集された情報を紹介しています。

連載『農家になろう!』第一回/土地なしコネなし技術なしで農家になれますか?

2014.12.22

美味しくて安全な野菜や果物を“自分で”作って、みんなに食べてもらいたい!
改めて考えると、それが職業にできたらとっても素敵ですよね。

「でもウチは農家じゃないし、畑なんて持っていないわよ」
「憧れはあるけど、育てた作物なんてベランダのミニトマトが関の山……(爆)」
「作っても、いったいどうやって売るの? 生活できるの?」

わかります、その気持ち。だったら「輝く農女新聞」が、農家になるにはどうしたらよいのかを一から体当たり取材しちゃいましょう! 土地も、コネも、栽培技術もないフツーの社会人女子が、農業の世界で輝くには一体どんな方法があるのかを探しに!!

行け、農女候補生! 道なき道を進むのじゃ!! ……と言いたいところですが、“夢への地図”はあったほうがいいですよねぇ。まずはその道のプロに相談してみましょう。

はい、どーん!

「都道府県 新規就農相談センター」。こちらは埼玉県の相談場所で、埼玉県農林会舘という建物の一室にありました。県庁のお隣なのですが、意外と気づかないものですね。

お話を伺ったのは、埼玉県農業会議 相談員の田島貞治さんです。

漠然と「農家に転職したい」だなんて叱られるかも、と少々緊張していましたが……、気さくな田島さんにすっかり安心。ちなみに赤いアクセントが素敵なこのネクタイ、ご自身で選ばれているそうです!

■ 農業の世界にも存在する「サラリーマン」!?

さて、まずは素朴な質問を。

記者:「『農家』と言うと、パン屋さんや花屋さんのように何でも自分たちでやる……という『個人事業主』のイメージが強いのですが、それ以外の農家さんもいらっしゃるんですか?」

田島さん:「はい。自分で独立開業しなくても、大きい農家さんや企業で雇われている方もいらっしゃいます」

記者:「企業?! じゃあ農場で働けば、会社員のようにお給料がもらえて土日も休みになるんですか??」

田島さん:「そうですね。正式には『農業法人』と呼びます。株式会社や有限会社組織の法人では、従業員は就業規則できちんと労務管理されているんですよ。ただ、農業生産ですから、季節や天候、作目によっては必ずしも土日がすべて休みになるというわけではありません」

記者:「確かにそうですよね(苦笑) それにしても会社員ですか。じゃあ、もしかしてパートさんとかも……??」

田島さん:「もちろんいらっしゃいますよ(笑)」

まさか、サラリーマンやパートタイマーという働き方もあったとは。そういえば「受講生インタビュー」でお話を伺った川村夏恵さんも、農業法人に就職されていましたね。(記事はこちらhttp://www.jma.or.jp/kagayaku-nj/news/nj_interview/article009.html)農業って独立開業がすべてだと思われがちですが、とても幅広い働き方があるんですね。なんだか普通の転職活動と同じような気がしてきました。

とはいえ、それぞれのメリットデメリットは? 田島さんのお話をまとめると、こんな状況が浮き彫りになってきました。

【A】独立開業

メリット/トータルに自分の想いや方針を反映できる。
デメリット/技術の習得、農地の確保が必須。軌道に乗せるまでは正直大変。「3年は食えない」という覚悟は必要。実際、農業の傍ら飲食店などでアルバイトをする人も。

【B】農業法人に就職

メリット/収入も安定していて、年金や健康保険完備。
デメリット/・会社の方針に沿って仕事をするため自分の想いどおりにならない。採用されるかは、法人と本人次第。地域の人々との繋がりが薄くなる。

【C】パートタイマーとして働く

メリット/小さいお子さんがいたりして、時間に制約がある人に向いている。
デメリット/農業への関わり方が限定される。

なんだかどれも大変そうですねぇ。だったら、とりあえず今の仕事を続けながら「趣味の延長」でいいかも。不動産屋さんで畑でも借りて、知り合いに売ることから始めようかなぁ――という記者の脆弱な考えは、一瞬にして見透かされることに。

「甘い! 畑は不動産屋さんでは借りられません!!」

■ 畑をゲットするために、お金より大事な「アレ」って??

田島さん:「実は畑を借りるには、『農地法』か『農業経営基盤強化促進法』という法律の手続きが必須なので、そこに関われない不動産屋さんには扱う権利がないんです。まずは、最寄りにある市町村の農業委員会に相談してみて下さい。基本的に畑は、アパートを借りるような感覚で簡単に借りられるものではないんですよ」

記者:「えー(泣) でも『どう見ても使ってないだろう』という荒れ地なら、貸してくれそうですよね。遊ばせておくよりいいでしょうし」

田島さん:「それもほぼないでしょう(きっぱり)。農家さんが心配するのは、農地を農地以外の目的に使われてしまったり、貸した畑がきれいに管理されないことなんです。さらに農家さんにとって農地とは、『先祖から受け継いだ大切なもの』。だから、畑がきちんと使われないリスクがあるくらいなら手元においておこうということになってしまいます」

――では、どうしたら畑を借りられるのですか?!と泣きついたところ、「一にも二にも、農家さんの信頼を得ること!」と田島さん。 そしてこれは、決して精神論の話ではないとのこと。畑を借りるには市(町村)役所で法律に基づく手続きをしなければならないのですが、それ以前に、地主である農家さんや近隣の農家さんに認められることが、大前提らしいのです。

田島さん:「想像してみてください。例えば、無農薬栽培を実践してきた農家さんがいたとして、ある日突然、隣の畑に来た人が農薬を散布し始めたら大変ですよね。だから農地の使用希望者には、『そこをどんな方法で使うのか』ということを『就農計画書』または『営農計画書』にまとめて提出してもらうのです。営農希望者の計画や技術、そして人柄が信頼されれば、晴れて畑を手に入れられることとなります」

(「営農計画書」。呼び名や書式は自治体ごとに若干違うそうです)

記者:「ずいぶん長い道のりなんですね! 果たして自分が本当に畑を手に入れられるか、自信がなくなってきました……」

田島さん:「まぁ、独立して経営するなら今お話した方法なのですが、農家さんや農業法人に雇われて働く場合は、就農計画書や営農計画書は必要ありません。さらに、そこで一生懸命畑と向き合っていれば、(例え後々独立するとてしても、)技術や周囲の農家さんの信頼は自然と得られるようになっていきますよ。農家さんって、見ていないようでとてもよく見ていますからね。他には、研修制度などを受けた場合、指導してくれた農家さんのツテで畑を貸してもらえることもあります」

――あぁ、よかった。今のところ技術はありませんが、情熱と頑張りなら何とかなりそうです!

ちょっと安心したところで、寄り道タイム。
こちらは同じ建物の中にある、埼玉県の銘茶「狭山茶」の販売スペースです。
毎日、茶葉を臼で挽いて飲むほど、お茶を愛する田島さん。ついお茶談義に花が咲きます。

美味しい抹茶がすぐ飲める、「おてがる抹茶」(648円・税込)。
飲むのはお手軽ですが、決して「お手軽」ではない農家さんの手間隙と情熱とが、深い味として感じられます。ごちそうさまでした!

■ 農業のキホンはどこで教えてもらえるの? そして気になる「お金」の話

農業と一口に言っても、自分の状況に合わせて働き方が選べることが分かりましたし、畑も所有するしないは別として、なんとかなりそうです。
後は、肝心の「作物を育てる」技術を習得したい! 教えてくれそうな農家の知り合いもいないし、社会人にとって農業高校や大学の農学部などはちょっと遅いという気も。それに大学に通うには、学費が……。他に方法はあるのでしょうか?

田島さん:「各道府県にある『農業大学校』に通う方法や、自治体で行っている新規就農者向けのプログラムに参加する方法などがあります。最近は、『日本農業経営大学校』(東京都)のように民間の大学校も設立されています。よく勘違いされるのですが、『大学』と『大学校』は全く違います。管轄の違いもありますが、大学校の学費は安価です。例えば、『埼玉県農業大学校』は2年制の場合、必要経費は授業料や教科書代として1年につき15万円程度ですみます。
また、新規就農者向けの支援事業として、国の助成事業『農の雇用事業』があります。農業生産法人や農家に雇用されて技術を身につけ、そこで継続して働くか、将来独立を目指すことができます。

記者:「ちゃんと社員として採用してもらった上で、一から学べるなんて心強いですね! 正直、研修期間中の生活費が気になっていたので、ホッとしました(笑)」

田島さん:「現在、埼玉県内では約120名の方が各農業法人等で『農の雇用事業』の研修を受けています。うち、女性は全体の約20%ですが、中には研修先の農家さんに見初められて嫁いだ方や、研修生同士が結婚して、農家として独立したという話もあるんですよ」

記者:「キャー! それは農女的シンデレラストーリですね!! 一生懸命な姿は女性も男性も魅力的ですものね。あとは、補助金……などの制度は利用できるのでしょうか?」

田島さん:「『青年就農給付金』という制度がありますよ。就農前に研修を受ける人向け、独立・自営で農業を始めた人向け、それぞれ年間150万円が給付されます。給付を受けるには年齢や就農開始の期限についてなど一定の条件があるので、まずは農林水産省のホームページ(http://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html)などで確認するとよいでしょう。また、埼玉県では、原則1年以上の研修経験のある方を対象に『明日の農業担い手育成塾』という研修制度もあります」

■ 相談は、どこにすればいいの?

やはり一人で悶々と悩んでいるより、その道のプロに質問をぶつけたほうが次にすべきことが見えてきますね! 同じように農業を志す“初心者マーク”の人たちは、どこに相談したらよいでしょうか?

田島さん:「各都道府県にある『新規就農相談センター』ですね。ただし直接相談に行く場合は、担当者が不在の場合もあるので事前のアポイントメントが必要です。また、複数の関連施設が受け持っていることも特徴で、今日記者さんがいらしたのは『埼玉県農業会議』という団体窓口ですが、埼玉県の場合は農林業の紹介もしてくれる『埼玉県農林公社』(埼玉県行田市大字真名坂1975番1 TEL048-558-3555)のほうがベストですね」

記者:「相談ができるイベントなどはありますか?」

田島さん:「全国の相談窓口や農業法人などが集まる『新・農業人フェア』があります。ここにも同じような相談者さんがいらっしゃいますね。東京、大阪、札幌などで開催していて、直近ですと2月8日(日)に東京国際フォーラムが予定されています。詳しくはホームページなどに載っていますよ」

ここなら、移住して農業をやってみたいという人も、様々な土地のお話が聞けますね。また、全国新規就農相談センターのホームページ(http://www.nca.or.jp/Be-farmer/leafret/)には、農業に就くまでが分かりやすく書かれたハンドブックなどがいくつもあるそうですよ。田島さん、ありがとうございます!!

次回は一歩進んで、「作物の育て方を学ぶには?」を追いかけます。知っているようで知らない農業の世界、また新たな驚きに出合えそうですね。乞うご期待!!
(続く)

新規就農相談センター(埼玉県)
公益社団法人 埼玉県農林公社(農業・林業無料職業紹介所)
住所 埼玉県行田市大字真名坂1975番1
電話 048-558-3558