みらいのたね賞
「みらいのたね賞」は、建築家が選ぶ、優れた建築を生み出すことに、貢献しうる優れた製品、未来への布石となる製品に送られる賞です。毎年ゲスト選考員を迎え、テーマに基づき製品を選考します。
Japan Home & Building Showの出展者だけが選考対象となる限定の賞です。
毎年出展製品の中から、ゲスト建築家の視点や思想をもとに受賞製品を決定します。
今回、2018年~2022年に受賞した企業から14社/14製品が福岡に集結します!
毎年秋に東京ビッグサイトにて開催しています。住宅をはじめ、商業施設、オフィス、複合型施設などにおける建材・部材・サービスを一堂に集めた総合展示会です。
本展は次回の開催に向けて、東京大学 松村先生を実行委員長、積水ハウスの上木常務執行役員を副委員長 とする実行委員会組織を設けております。
業界関係者に向けて質の高い様々な企画・情報が発信され、みなさまから 高い評価をいただいております。
住環境や商環境・働く環境における変化に対応した新製品や新たなサービスなどを 展示会を通じて知っていただく機会、触れていただく場、ビジネスの場として開催しています。
詳しくはこちらをご覧ください。
堀部安嗣建築設計事務所
建築家
京都芸術大学大学院教授
堀部 安嗣氏
小堀哲夫建築設計事務所
建築家
小堀 哲夫氏
プランツアソシエイツ 代表 宮崎 浩氏
HEAD研究会
名誉顧問
松永 安光氏
山本想太郎設計アトリエ 代表
HEAD研究会 副理事長
山本想太郎氏
この製品は一般の戸建て住宅の筋交いに取りつけるだけで耐震・制振性能を画期的に高めることが出来る制震金物でこれは高減衰ゴムを採用したハイブリッド構造で地震エネルギーの吸収を一極集中から分散型とし、建物の隅々まで制震効果を発揮させることが出来る。本製品のアイデアは西日本工業大学デザイン学部長・古田教授の開発によるもので、その制震力のシミュレーション解析ソフトは公開されている。筋交い部をゴムで包み込むというアイデアはきわめて独創的な発想で、みらいのたね賞受賞にふさわしい。(松永安光 氏)
現在では従来のコンセントに電源を接続しなくてもワイヤレスで様々なものを点滅することが出来るようなシステムが急速に発展しており、その世界の広がりは無限であるように思われる。そのような中でワイヤレス給電とワイヤレス充電を専業としているB&P社は様々な製品を意欲的に開発しており今後のさらなる成長が期待される。思いもかけないような照明器具や玩具など魅力的な製品は多くの人々に驚きを与えるであろう。このように画期的な発想はまさにみらいのたね賞の受賞にふさわしい。(松永安光 氏)
ウイルス禍のなかで一気に普及したテレワークのみならず、生活のさまざまな局面でモバイル IT 機器が使用されるようになった。その際の基本的な空間環境として、給電をはじめとした有線接続端子も、あらゆる場所に求められるものとなってきている。ところがいわゆる「家具用コンセント」製品はまだまだ色、形バリエーションも少なく、ディテールが追求されるインテリアに対応しきれていない。そのような状況下でドイツ BACHMANN グループとの協力製品も含め、この洗練されたデザインのラインナップは有難い。生活空間における「設備」の存在感を 肯定的に変革していくための部品として、高く評価 したい。(山本想太郎 氏)
さまざまな改修工事において水回り設備の配置変更をしようとすると、だいたい床上での横引き排水の問題がおこる。限られた床下スペース内に径の大きな排水管を、勾配を確保しつつ納めることは容易ではない。これは改修に限らず新築の設計でもおこりうる問題なのだが、いずれの場合にも活躍するのが排水圧送ポンプである。世界的に知られるフランス発祥の排水圧送ポンプ・メーカーであるSFAによるこの製品は、雑排水専用の大容量ポンプの定番であり、キッチン、浴室などの大きな配置変更にはかかせない。同社のその他の排水ポンプ製品群とともに、水回り設備の配置の自由度を広げることで、建築プランニングに大きく貢献してきた実績を高く評価したい。(山本想太郎 氏)
本製品は浴室改修FRP防水の工法であり、同種の工法が各種ある中で、既に防水メーカーとして実績30年以上を得ておりUR都市機構「保全工事共通仕様書」に採用されている。特に特筆されるのは最短1日施工可能を標榜している一方、シックハウス原因物質の不使用、ノンスチレン、粉塵回収、火災予防に留意した安全性を担保できる工法を採用していることである。施工にあたっては在来工法、化粧フィルム工法、防水パン工法、リニューアル工法など多彩な工法が提供されている。このような地道な工夫を凝らしてきた実績に敬意を表して本賞を授与するものである。(松永安光 氏)
日本における現代住空間において一般的に普及している床仕上げ材料は限られており、そのほとんどが普及品のフローリングと、樹脂系シートである。その上、フローリングの大半が同じような色(茶系中間色)、張り方であることもあって、住宅の床材で個性を発揮するのはなかなかに難しい。海外でよく見かけるヘリンボーンのフローリングは存在感のある大変魅力的な床仕上げだが、真っ当にそれを再現しようとするとかなりの技術とコストを要することになってしまう。そこで本製品のような、合理的なパーツと工法でありながら確実に特徴のあるものをつくろうと考えたセンスをまず評価したい。そしてその結果として、爽やかにデザイン性を主張する、独自の現代的な表現が生み出されたことも素晴らしい。(山本想太郎 氏)
ほとんど毎年のように激甚災害が絶えないわが国では、被災者のための避難所が必要不可欠である。しかし仮設の避難所に付随するトイレについてはあまりその清潔度に気配りがなされているとは言えない。
本製品は使いやすく快適なバリアフリー対応高機能水洗トイレユニットでありコンテナユニットのメリットを最大限生かして、画期的な快適空間を提供してくれる。
運搬用の専用台車も用意されており、どこにでも運んでいくことが出来る。自治体として常備しておくことが望ましく思われる。外観のデザインにも十分な気配りがなされており、公共の福祉に多大な貢献をする製品として「みらいのたね賞」の対象として表彰する次第である。(松永安光 氏)
リビングに「シースルー階段」を設置すると快適な暮らしと家族のコミュニケーションが見えてくる。ということを自宅の新築時に確信した創業者が、(1)室内を出来るだけ広く感じさせるシースルー階段、(2)現場に搬入がしやすい、ノックダウン工法にこだわる、(3)家具などのインテリアと同じように美しいデザイン、という3 原則を守って現在では国内外に工場を建て、発展を続けていることは驚嘆に値する。製品は今では階段以外にアスレティックの分野まで広がり海外のデザイナーとタイアップして新しい分野にチャレンジを始めているようだ。ともあれチャレンジ精神に富み、美的センスにこだわったこのようなメーカーが発展することはわが国の建材メーカーにとっても刺激となって世界に雄飛するメーカーが続出することを願いつつ、「みらいのたね賞」を授賞したい。(松永安光 氏)
マグネットがつく壁面、というシンプルな仕掛けがもたらす可能性を、様々な形で提案する製品群。
ベースとなる壁材(磁石がつく石膏ボードや鋼板入り積層パネル)と、そこに設置するマグネット一体の壁装材や棚、水回り備品、さらにはテレビまでがラインアップされている。この「半固定」のもっている「生活者への近しさ」は、これからの建材のひとつの方向性を示すものだろう。
さらに同社が「マグネット」という技術を携えてさまざまな建材メーカーとコラボレーションするという方法も、企業を超えた情報や技術の共有によって新しい概念の建材が生み出される典型的なモデルのひとつとして評価したい。(山本想太郎 氏)
木炭の物性を残したまま水性塗料とした製品。炭の素材感の内外装塗料というだけでなく、調湿、有害物質除去、抗菌など、炭のさまざまな性能も発揮する。
また注目すべきは「電磁波減衰効果」を謳っていることである。5G 時代も近づき、日に日に私たちが晒される電磁波の線量は増加しており、今後、その人体への有害性の検証とともに、建築も対応を迫られていく可能性がある。
同社は同様に炭の通電性をいかして電磁波をシャットアウトする「正電フリーシート」も製品化しており、建材界ではまだあまり意識されていないこの分野にスポットライトを当てていることは興味深い。
これからの建築・建材の中心テーマのひとつとなる「健康性」の観点で、さまざまな可能性をもつ製品である。(山本想太郎 氏)
苗木から丹念に育てたニュージーパインを使っている。ニュージーパインは反りがなく均質で真っすぐな木目が特徴的。さらに加工時にはその美しい柾目を生かし、浮造り仕上げとしている。そこに今回のKITOIROは名前の通り様々な色が足される。木目が活かされた色味となっており、88色の色さらに様々なパターンもラインナップも揃えている。木にここまで鮮やかな色を木目を殺さずに表現できていることに驚いた。今までは限られた色数の中から選んでいたが、この技術によってパターンも含め自由に木の表現を楽しめるようになる。特にグラデーションシリーズの色の自由なセミオーダーは、以前、木のグラデーション塗装を試そうとしていただけに、とても興味深いと思った。まさに木の特性を活かし”美しさ”を持った商品だと思う。(永山祐子 氏)
エレベーターの内壁は、ほとんど常に何らかの保護材で覆われていて、その裏に隠れた本来の仕上げを目にする機会は実は少ない。グレーの薄汚れたフェルトやプラ段のカバーが、事実上、我々の上下移動時に目する「生活景」となってしまっているのである。この現実への気づきが商品開発の原点にあり、その視点をまずは高く評価したい。
この前提事実に立って、グレーのフェルトやプラ段に代わる「好ましい」内装保護材として絨毯地のシートが提案されている。クリーニングに出すことこともできるだろうし、あるいは季節によってパターンを変えることもできるのだろう。日常の生活景を豊かにする提案である。(原田真宏 氏)
内外装材としての木材使用は多くのユーザーから求められているにもかかわらず、防火仕様が求められる法規定により断念せざるを得ず、やむを得ず代替疑似製品を使用するケースが多い。本製品はホウ酸注入などにより国交省認定の不燃木材に指定されており、26色の着色済みの製品が塗装付きの認定を受けている。いずれも無垢材と集成材を選択でき、スギとヒノキが選択できる。羽目板とルーバーに関してはメーカーに常備しているので、スピーディーな納品が可能である。本製品はカラフルな木質内外装を可能にする極めて画期的な製品と認め、本賞の趣旨に合致するとしてこれを表彰するものである。(松永安光 氏)
この工法は、複数のメーカーが、一つの考え方で作った省エネの工法として評価できる。このようにある目標に沿って、調整してアッセンブルすることはむずかしい。この工法で作られた住宅の性能は現行の目標値としては十分と言え、日本の住宅の高断熱化に大いに寄与する。加えて、通気などを通して建物の耐久性を視野に入れた優れた商品と言える。一方、床下に外気を取り込む必要があるのかについては、これからの時代の断熱性能の向上を考えると課題があると思われる。これからの時代はよりオープンなシステムが求められると思う。(竹内昌義 氏)