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輝く農女新聞内で特集された情報を紹介しています。

2019年度女性農業コミュニティリーダー塾 講師座談会
今後の女性農業リーダーに、必要なスキルとは?

2020.3

「女性農業コミュニティリーダー塾」が修了したことを受け、講師陣で2019年度を振り返る座談会が行われました。

本来であれば塾生のみなさんが東京に集結してアクションプランを発表する予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、課題提出へ変更。 卒業式に講師のみなさんからの言葉が聞きたかった!というみなさんのため、3月31日に「2019年度女性農業コミュニティリーダー塾 講師座談会」を緊急開催。 遠隔会議システム「Zoom」を活用したリモート座談会の模様をレポートします。

講師陣は、金子和夫先生、高橋和美先生、林聖子先生。司会は事務局の水沼勉さんです (キャプチャー画面/上段左=林聖子先生 上段右=高橋和美先生 下段左=水沼勉さん 下段右=金子和夫先生  *以下、お名前は敬称略)。


■4タイプの女性リーダー像が見えてきた


水沼:2期の「特徴」、やってみての感想はいかがですか?

金子:塾生のみなさんからは、リーダーとしての4つのタイプが見えてきました。

1つ目は「農業経営法人のリーダー」。
組織のリーダーとして頑張っている人たちですが、もしかしたらコミュニティというより、マーケティングやブランディングなどの経営戦略をつき詰めたほうがよいのかもしれません。

2つ目は「若い農業チームのリーダー」。
ワークショップの手法を活かして、先輩の部会会議の運営を変えたり、マルシェなどを実施して成果を出しています。 こういう人たちが地域を活性化して、農協や農業委員会のリーダーになっていくのだろうと期待しています。

3つ目は「地域づくりのリーダー」。
男性と張り合うのではなく、女性の身近な感覚を活かして行政や外部機関と連携しながら地域を変えていけそうです。

4つ目は「移住者のリーダー」。
いわゆるいい意味での「よそ者」が、新しい視点を持ち込んでがんばっているケースですね。地域に固執するのではなく、 都市部や山間部との連携など広域ネットワーク型の新しいリーダーがどんどん生まれていくといいですね。

それぞれのタイプに、効果的な研修の形があるように思います。

高橋:私は今回、はじめての講師でしたが…「女性農業者のリーダー」と「他の女性のリーダー層」との違いを考えたときに、女性農業者は、 古い慣習や年功序列の人間関係などで「見えない制限」を感じることが多いですよね。
それが、リーダー塾で講師からアドバイスを受けたり、同じようなスピード感や熱いハートを持つ塾生と出会えたことで、パッと視界が開けて制限が取り払われたように見えました。 自信が持てるようになったという印象です。

林:よかったと思うことは、同じ塾の中にいろいろなステージ、フェーズの人が混在していたことです。自由時間の交流を見ていても、リーダーとしては先に踏み出している先輩が、 まだこれからという後輩にアドバイスしたり、逆に後輩の新鮮な意見が、先輩の気づきになったりもする。相乗効果があったと思います。


■自分をさらけ出せば、周りが変わる

水沼:印象的なエピソードはありましたか?

林:最初は「仲間同士のコミュニケーションが苦手なのかな…」と心配だった塾生さんが、研修の間に柔らかく変化して、周囲との距離が近づいていったことです。 きっかけは、ご本人が「自分をさらけ出した」ことにあったように思います。コミュニケ―ションに難を感じているリーダーは、突破口としてそういうタイミングをつくるといいのかもしれません。

高橋:さらけ出すという意味では、1回目の研修で「ライフライン」のワークをしましたね。自分の人生を曲線グラフにしてグループのメンバーに説明するというものでしたが、 みなさんの自己開示ぶりには驚きました。ふだん背負っている鎧を解き放って、新しい自分になりたいという意志を感じました。

エゴグラム(性格分析)では、先頭に立つタイプや黒子に徹するタイプなど「リーダーとしての自分のポジション」を自覚して公言なさる方も多かったです。


■コミュニティづくりの第一歩は「自分を知ること」

金子:僕が印象的だったこととしては、リーダー経験のないシニアの方でも、とても柔軟に「コミュニティ」と「自分」を結びつけていたことです。 その方は、企業で働いた経験を活かして地域を理解し、すんなり入っていきました。

一方で、自分の生き方に固執しすぎたり、迷いがあったりすると、「コミュニティの中で何がしたいのか」が探せずなかなか前に進めないのかなと思います。 成果が出やすいのは、「リーダー塾で自分を変えよう」とか「地域の想いや危機感をなんとかしよう」など、目的意識をはっきりしている人ですね。

林:地域の課題や自分のやりたいことにあわせて「コミュニティを新しく作る」という方法もあるのに、 「既存のコミュニティに執着してしまう」ことで停滞してしまうこともありますよね。

金子:近場で仲間がいなければ、広域ネットワーク型のコミュニティをつくればいいんですよ。

高橋:コミュニティづくりには、まず「自分」を知る必要があります。思い浮かぶアイデアの根っこには、どんな本音や信念があるのか掘り下げることが大事です。 もっとみなさんが自分と対話できるようなサポートについては、検討する価値がありそうですね。


■ピンチに直面! その時、リーダーはどうする?

水沼:現在は、新型コロナウイルス感染症で世界中が混乱しています。100%の正解はないと思いますが、予期せぬ危機やトラブル、災害などのとき、 リーダーはどうあるべきだと思われますか?

高橋:あらゆる危険を想定しておくことは大切ですが、その上でピンチを楽しむことですね。
変化のときに迷ったり不安を感じるのではなく、変化の中にこそチャンスがあるという。その感覚を農業に携わる女性の多くは持っていると思います。ピンチをチャンスに変えることですね。

金子:困ったときは「助けて」と言える人でいることです。素直に助け舟を求められると、人間はつい気になって関わってしまうものです。

林:情報のアンテナをはっておくことが、とても大事です。他ではどんな対策をしているんだろう? こういう課題に対して、先に動いているところはないかなど、 ネットで調べるのでも人に聞くのでも、きちんと情報のアンテナを張って、自分たちのコミュニティに取り入れられるように、普段から準備は必要ですね。


■PDCAとワークショップに、ことこんこだわる!

水沼:塾生のみなさんには、女性リーダーとして活躍するために身につけてほしいことはありますか?

高橋:研修中に「自分の特性を知る」ワークをくり返し行ってきました。その特性をどう発揮して活かすかを探求し続けてほしいです。 苦手な相手だからと諦めるのではなく、理解し合うことで、ネットワークが繋がったり自分の可能性が広がっていきます。地道にコツコツ続けてほしいです。

金子:「PDCA」と「ワークショップ」には、とことんこだわりましょう。仕事の休憩時間に作業場で30分だけ「ワークショップ」を行っても成果は上がりません。 仕事と違う環境を作って、楽しそうな場づくりが人を変えます。我流でやっても30、40点で留まってしまいますが、研修でお伝えした手法を守れば80点はとれるはずです。 大変かもしれませんが、がんばってください!

林:これは自分がリーダーのときに心得ていたことでもありますが…、自分の苦手なことは無理してやろうとせず、できる人を仲間に引き入れて行う。 結果的に凸凹が埋まっていて、チームを維持していけばいいというスタンスが、持続可能なコミュニティに繋がります。

水沼:講師のみなさん、今日は貴重な時間をありがとうございました!今日の振り返りをもとに、塾の運営自体もブラッシュアップさせたいと思います。

最後は、塾生みなさんへのエールをこめて、記念写真をパチリ!1年間お疲れ様でした。みなさんのさらなるご活躍を心よりお祈りしております。