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女性農業コミュニティーリーダー塾 実践編
東京・大阪合同研修 第3回講義レポート
世界農業遺産「大崎耕土」で学ぶ地域価値の発掘

2019.12

12月9日、10日に行われた第3回の研修は「先進的地域調査」として、宮城県大崎市で現地研修。それぞれのコミュニティで行われた成功事例に学ぶことが目的です。

初日は3つの講演を聴講するという超過密スケジュール。まずは、国連食糧農業機関(FAO)が「世界農業遺産」に認定した「大崎耕土」(おおさきこうど)の概要についての講演。 その後、家の周りを林で囲む屋敷林=「居久根」を活用した西大崎地区のコミュニテイについて。さらにNPO法人「おおさき地域創造研究会」の児玉順子さんのお話を聴講し、ワークで気づきをまとめました。

JR古川駅に集合した東京会場・大阪会場の塾生がバスに乗り込み、向かったのは宮城県大崎市にある大崎耕土。ここは、国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」。 世界的に文化的価値があり次世代に継承すべき技術があると認められた、いまなお現役で営農している地域。 移動のバス車内には世界農業遺産に詳しい大崎市の車田敦さんをお迎えし、大崎耕土の概要と、認定された経緯についてのお話を伺います。

車田さんによると、伝統的な水田耕作地帯で、生物多様性を確保している点が評価されたとのこと。 伝統的な水管理システムと、それを維持する仕組みが継承されています。塾生はこの地の特徴である屋敷林「居久根」について解説いただき、水路の見学も行いました。

その後は、西大崎地区公民館で講演。引き続き車田さんに、大崎耕土はどんな運営をして維持しているのか解説していただきました。

つづいて、自宅の居久根を活用した地域コミュニティを運営する片倉さん(写真右)の講演。

野草摘みや昼食交流会など、居久根を活用する取り組みや、直売活動の「ばっつぁん市」「ごみリサイクル研究会(とまとクラブ)」など、地域の人々とどんな活動をしているか、 実践例をたくさん紹介いただきました。

次の会場に移動する車内では「自分の地域ではこうなっている」など盛り上がります。 車田さんにも同乗し「誰が旗振り役なのか」といった取り組みについての話だけでなく、「後継者問題は?」「米の販路は?」など多岐にわたる質疑応答が行われました。


■「NPOおおさき地域創造研究会」の活動から学ぶコミュニティづくり

次の会場では、NPO法人おおさき地域創造研究会の事務局長/児玉順子さんに、組織の成り立ちから活動内容についてお話を伺いました。

平成5年(1993年)からNPO活動を始め、海外のNPOを視察して回った児玉さん。 コミュニティ活動に取り組むきっかけから、活動で感じた危機感や問題意識、一緒に行動を起こした仲間についてのお話や…どのように課題を整理し行動していったかなど、組織の大枠について語ってくださいました。

その後は「おおさき地域創造研究会」の具体的な活動内容について。 地域の合併にともない、行政の人数が減ったことで、地域の人たちが参加するまちづくりの必要性を感じた児玉さんは、合併後のまちづくりのために勉強会を開催。その時、いかにして講師をつかまえたのか? 移住支援センターの業務を受託し、行政や工務店と協力体制をつくり、継続して移住者を増やしていったことなど、多岐に渡る活動実績と成功例に塾生たちも興味津々。

長年の活動で得た成果に驚くのはもちろんのこと、活動を妨げるハードルや苦難についてのお話には、自分と重ね合わせる塾生も。 人を巻き込む難しさに加え、女性が発言する場の少なさは、塾生にとっては他人事ではありません。 それでも工夫して続けてきた体験談は、ドラマチックで、その話に引き込まれるように聞き入っていました。

講演後の質疑応答では、あらゆる視点から質問が寄せられました。 「モチベーションアップはどうしているのか」「活動で苦しくなったらどうしているのか」「継続的に取り組むための資金はどうしているのか」 「現在の収益」「男性社会で発言していくための工夫」「児玉さんのこの先のビジョン」などなど…。どの質問に対しても丁寧に詳しくお話しいただきました。

その後はチームに分かれてワーク。グループでディスカッションし、児玉さんの活動での成功要因を模造紙にまとめます。

各グループごとに発表・共有し、1日目の講義は終了。


一日の締めくくりは、児玉さんを交えた懇親会。 ここでも熱いトークが各テーブルで展開。率直に意見を言い合える場は、地域にはまだまだ少ないのかもしれませんが、モチベーションを上げて「みんな頑張ろう」と一つになれた懇親会でした。