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女性農業コミュニティーリーダー塾 実践編
大阪会場 第2回講義レポート
多様な関係者を巻き込む4つのステップとは?


2018.08


8月27日・28日、大阪で実施された第2回研修。「持続性のあるコミュニティづくり」に必要な6つの手順のうち、今回は「多様な関係者を巻き込む」にはどうしたらいいのか?を学びます。

このリーダー塾では、「持続性のあるコミュニティづくり」に必要な6つの手順について、順を追って理解・実践していきます。


その手順とは

1 現状を把握し、将来の理想像=ビジョンをつくる

2 多様な関係者を巻き込む

3 集まった人たちを組織化する

4 ビジョンを実現するためのアクションプランをつくる

5 実行する

6 結果を評価し分析、さらなる改善のための仕組みをつくる


このサイクルを回していくことで、コミュニティのパワーが増していくわけですね。


宿題「仲間とミーティングを開く」その成果は?

前回、1のビジョンづくりを学んだ際には、「身近な仲間とミーティングを開く」という宿題が出されました。まずは、その成果を聞いてみましょう。

林先生の軽快なナビゲーションのもと、グループ内での結果報告がスタート!


会合が実施できた人はその結果、できなかった人はその要因などを3分間で報告。次の2分間で、メンバーからの感想、疑問などのフィードバックをします。


「農村生活アドバイザー」のグループで支部長を務める中村さんは、「Hey!Sey!ジャンプ!!」という、平成最後の夏にふさわしいタイトルで会合を実施したそう。「Say」が「Sey」 になっているのは読みやすさを重視したとのこと。楽しいキャッチフレーズで、気軽に参加してもらえるよう心掛ける…。前回の金子先生のアドバイスを見事に取り入れています!


そして、健康によいとされるキク科のイモ「菊芋」を栽培する江尻さんは、地域おこし協力隊などを集め、菊芋の魅力をアピール! ビジョン実現のイメージがわくように、写真などのビジュアルを多用したそうです。魅力的なチラシは人を動かしますね。


さて、今回の研修では「知り合いとの会合」から一歩進んで、2の「多様な関係者を巻き込む」について学んでいきますよ!


【ステップ1】利害関係者をリストアップしよう


まずは、なぜ「身近な友人や仲間だけでつくるコミュニティ」ではダメなのか、考えてみましょう。金子先生が、前回塾生がつくったビジョンを元に説明してくれました。

「たとえば、『農産物をブランド化したい』というビジョンがあった場合、最終的な目標としては『商標登録を取る』『協議会をつくる』『加工品を5種類つくる』などが想定できますよね」

そうなると当然、自分が普段つきあっている“お友だち”だけでは実現できません。そこで「同じ問題意識」を持った、さまざまな分野の利害関係者のチカラが必要になってくるそうです。しかも、加わってもらうタイミングがとても重要だとか。

「コミュニティの内外にいる利害関係者には、コミュニティづくりの『初期の段階から』加わってもらうことが、とても重要です。卸業者、飲食店、消費者、学生など間口を広げることで、思いもよらないアイデアが生まれてくるからです」

まさに「多様性」を確保することで生まれる効果ですね。農産物の加工やマルシェの実施なら「近隣農家」、学校給食で地産地消を進めたい場合は、「生徒の父兄」や「給食センター」や「教育委員会」、「管理栄養士」など、関わりのありそうな人たちは多岐に渡りそうです。

では、実際に自分のビジョンに関係しそうな人たちを、リストアップしてみましょう。



みなさん黙々と作業を進めていますが、心なしか前回の研修時よりもペンがさらさら動いている様子。少しずつ「俯瞰的に物事を見る」という思考回路が強化されているのかもしれません。


ただ、「巻き込みたいけど協力してくれなさそう……」という相手もいますよね。塾生をはじめとした若手農業者や女性の悩みとして多いのが、「農家のお年寄りたちとの意見の相違」です。これには、「最初に巻き込む相手」を変えることで効果が期待できるのだとか。

「もともといた地域の農業者の集まりと自分のやりたいことの相違を感じているときは、地元ではなく遠隔地や外部と連携するのも一つの手です。たとえば、都市の消費者が農業体験して買ってくれるような仕組みをつくれば、いずれ地元の人たちも外に目が向き、『効果があるなら協力しようかな』と考えが変わることもあります」

後から金子先生が話してくれたことですが「コミュニティづくりへの誤解の一つに、既存の地域の集まりや団体に入っていかなければならないというイメージがありますが、それは違います。自分のビジョンに合わせて一からつくり上げてもいいんですよ」

まちづくりの外部連携なら、「市民活動支援センター」も強い味方になってくれるとのこと。市民と行政が連携してまちづくりをするための、団体同士の交流や人づくり、補助金申請などをサポートしてくれるそうです。


【ステップ2】巻き込みのシナリオづくり

さて、巻き込みたい相手は特定できたものの、今まで接点のなかった人たちに参加を促すにはどうしたらよいのでしょう? これは意外と難しい課題です。「くれぐれも巻き込みやすい人だけの仲良しクラブにならないように」と厳しく釘を刺しつつ、金子先生からコツが伝授されます。

「そういう方たちを誘うときは、直接会ってお話しする『フェイスtoフェイス』を心がけましょう。また、間接的に繋がりのある人を探して、まずはその人の強力を得るというのも有効です」

ある大学を巻き込みたいがそこに人脈がない場合、大学と接点のある商工会の〇〇さんにまずは協力をお願いする、といった手順が考えられます。


休憩時間にも、やっぱりコミュニティづくりのことで頭がいっぱい!

講義時間外にも、金子先生と林先生に疑問をぶつける古閑さん。このような個別の相談で「講義の内容が自分のケースに活かせる」ようになる塾生も少なくありません。


【ステップ3】不足情報やノウハウは、外部のチカラを
活用しよう

さて、利害関係者に声かけができたら、話し合いの場を準備していきます。

さて、ここで基礎編のおさらい!
コミュニティを成長させるために、リーダーに求められる大事な要素は……

・チームをまとめるマネージャーとしての能力
・会議などで、多様な意見をまとめたり整理したりするファシリテーターとしての能力
・地域の人材や外部の専門家を集められるネットワーカーとしての能力
・活動を魅力的にわかりやすく共有するためのデザイナーとしての能力

などがありましたね。でも、こんなスーパーマンみたいな能力をそろえるのは大変! そんなときは、外部の力を活用することを検討しましょう。

「専門家の派遣サービスは、案外簡単に使えるんですよ。各分野の専門家がボランティアで社会貢献している『プロボノ』という活動や、地域活性化と支援する大学、社会貢献に取り組む企業も有力です」


【ステップ4】ワークショップでは相手の特性を
尊重すべし

多様な立場、考え方の人が話し合いをするときには、「ワークショップ」という手法が有効だそう。一般的な会議よりも、上下関係のない自由な意見交換がうながされ、それぞれの個性や価値観も尊重されるという特性があります。それによって、今までになかったアイデアや連携効果が生まれるんですね。

そのためには、いくつかの工夫が必要です。

「会議中に意見が脱線して暴走し、それを止められなかったという経験はありませんか?(笑) 全員が平等に発言するためには、意見をカードに書いたり、1人5分と発言時間を決めるなどのルールを作っておきましょう」

また、岡先生からは、多様な関係者を巻き込むためのヒューマンスキルの講座がありました。

行動特性で整理する自己分析ツール「DiSC」の手法によると、人の特性は以下のタイプに分かれるそう。

D「主導」 はっきりした態度と成果を求めるタイプ
ⅰ「感化」 相手と打ち解けたい、注目されるとうれしいタイプ
S「安定」 変化を望まず、感謝の気持ちを大切にするタイプ
C「慎重」 人付き合いは最小限に、正確さを重視するタイプ

映像では、「企業の本社にある人事部が、支店の営業チーフに部下の引き抜きを打診する」という設定で、各タイプのチーフとの円滑な交渉の仕方を学びました。



役立つのに、どこかユーモラスで笑顔もこぼれる映像でした。

さて次回は、コミュニティづくりの現場を視察するため、東京・大阪それぞれの受講生が愛媛に集合! ビジョンを実現させた先輩方のお話しも伺う予定。そこで得られる気づきとは、いったいどんなものがあるのでしょうか? 乞うご期待!