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女性農業コミュニティーリーダー塾 実践編
東京会場 第1回講義レポート
コミュニティの課題を確認してみよう!

2018.07


平成30年度の「女性農業コミュニティーリーダー塾 実践編」は、自分たちの地域・コミュニティをもっと盛り上げたい! できれば、地域・コミュニティ発のブランディングを実現してみたい! という方々が女性農業者のみなさんが集う講座です。

冒頭、主幹講師の金子和夫先生が「内容としては、極めて実践的なものにしたい。今日からプランづくりが始まっていると考えてほしい」と語る通り、今日から始められそうな内容がいっぱい詰まった講義となりました。


■現状を把握し、納得のいくデータを集める

金子先生に加えて、プログラムアドバイザー・メンターとして地域コーディネーターの林聖子さんが参加。塾生の中には、2015年度〜2017年度にかけて行われた『女性農業次世代リーダー育成塾』1〜4期生の中から、再び学ぶために参加された方も!

まずは「基礎編」のおさらい(「基礎編」は、8回で学ぶ内容をギュッと2時間にまとめた短縮版です)。


コミュニティづくりの進め方は、下の6つの流れに分けられます。単発のイベントで終わらせるのではなく、この流れに沿ってPDCAをきちんと回していくことが大事です。

  1. 1 現状を把握する
  2. 2 多様な関係者を巻き込む
  3. 3 組織化する
  4. 4 アクションプランを作る
  5. 5 実行する
  6. 6 評価・継続的改善の仕組みづくり

今日の研修では、まずは1の「現状を把握する」を、具体的に学んでいきます。


■いまを知ると将来の目標が見えてくる!?


現状を把握するための第一歩は、「コミュニティの課題を確認する」こと。

話し合いで出た意見や「今、何が問題なのか」というコミュニティの課題を整理して、構造化してみると、「将来どうするのか」というコミュニティの目標が見えてきます。そこで大事なのは、情報を整理して紙に落とし込むこと。

「会議で『やろうね』と話しているだけでは進まない。紙に落とし込んで、仲間と共有しましょう」(金子先生)

さらに必要なのは「みんなが納得いくデータ」。たとえば「人口が減っている」という課題がある場合は、なんとなく減っているという感覚で終わらせるのではなく、自治体のホームページをチェックし、人口データの推移をチェックしておくことです。

「役所などと渡り合うには、直感的な発言では歯が立ちません。みんなが納得のいくデータを、そこで見せられますか?」(金子先生)

必要なデータの例は、農家数、農地面積、農協出荷と個人出荷の数量、加工施設や直売所の有無など。自治体のHPで、「市の施策」、「統計情報」という項目を探せば、データを集められます。「農業プラン」なども閲覧できるんですよ。

「自分が住んでいる地域のこういう情報は、おさらいをしておく価値はある」(金子先生)ということで、今回の宿題は「コミュニティの課題について、データを整理しましょう!」

農福連携(農業者と社会福祉法人やNPO法人などの福祉団体が連携して、障害者や高齢者らの農業分野での就労を支援する取り組み)をしているのか?
自治体として、どんな機械を持っているのか?
六次化だと、JA以外に販路があるのか?

自分がやりたいことによって調べる項目は違うので、項目は自分で変えてOKですよ!


■コミュニティの宝をリストアップ

課題を確認したら、次は「コミュニティの宝を探して再評価する」ことです。
コミュニティには、資源(宝)がたくさんあります。「うちの地域には資源がない…」とないものねだりをするのではなく、あるものを探して「これは使える!」とその価値を再評価して活用するのが近道です。

地域の資源といえば、たとえば「教育機関」。農業高校や農業大学は、商品開発をすることもあり、力になってくれるはず。ほかには「人材」「施設」「住民」「事業者」「支援機関」など、改めて見直すべき地域の資源はたくさんあります。

ここでグループワーク。それぞれの地域の宝(資源)をリストアップし、塾生同士で発表して共有!(5分記入し、1人1分発表します)思いもよらなかった人材、施設などがどんどん出てきます。


地域コミュニティのコンサルティングを手掛ける金子先生は、さすが現場をご存知だけあり、「○○という組織は経験上、保守的なところが多いけど、何かやってくれそう?」など、それが現実的かどうかもその場で確認していきます。

「公民館はけっこう協力してくれる」「プロに頼む予算がない場合は、地元のママ起業グループはいいですね」「地域興し応援隊もいいね」「道の駅はもっと活用されていい場所だと思います」「地元流通業は大きな連携先」「金融と商社はもっと注目されるべきかな」---。

最新の事例も交えながら、すぐに実践できそうなアイデアがどんどん出てくれ講義は、メモが間に合わないほど!

「こういうのものを踏まえながら、自分のパートナーを見つけていきましょう」という金子先生の言葉に、塾生の表情も前向きに輝いたように見えました。


■黙々と書き込む時間を作ることも大事なんです

「とくにコミュニティでは、ビジョンがしっかりしてないと、みんなの心がひとつにならない」ということで、講義の後半はビジョンの話です。

ビジョンとは「こうありたい将来の姿」で、自分の希望や意思の部分。そのビジョンと現状とのギャップが、つまりそのコミュニティの課題でもあります。

ビジョンを描いた上で、マーケット開拓などの「戦略」を立て、商品の加工事業をどうするかなど「計画」を立て、実施するための「予算」を作っていくのが流れです。金子先生はこれを、各地域で、基本的に3年かけてやっているのだそう。

「いいものを作れば売れる時代ではない。たとえば米にしても、トップブランドで行くのか、外食産業用で行くのか、酒米で行くのか? 米農家も自分で戦略を作らなければ行けない時代」

そんな時代だからこそ、しっかりしたビジョンを持ち、数多くの関係者の協力を得ていく必要があるのです。


さて、それでは実際に、グループワーク! 自分で選んだコミュニティのテーマについて、今回の講義のため事前課題で出したものをベースに、5分間書いてから発表です。ここでも夢を具現化していった参考事例が紹介され、塾生の筆も進みます。真剣に黙り込んで書いている塾生に、金子先生がひとこと。

「みなさんが会議するとき、こういう黙る会議も大事です。整理してまとめる時間を作るのは大切。喋りっぱなしで”記録なし”って、結構よくあるんですよ(笑)」

これには心当たりのある人も多かったようです!


塾生の発表に対し、金子先生のコメントもとても具体的なものでした。

「ここは仲間づくりが勝負になってくる」「一般的に有機栽培は広域ネットワークを作っているものだけど、逆に地域で実現できたらすごいね」「これはそうとう事業性が高いね」「これは県や市が主導することも多いから、それに乗っかるのか自分たちでやるのかは、考えてみてもいいかも」



参考事例から具体的な実践案まで、すぐにトライできそうなアイデアでいっぱいだった第1回の初日の研修。2日目はビジョンをさらに煮詰めて自習も促され、内容は盛りだくさん。第2回の研修も楽しみです!