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奥山俊枝/警察官からの転身 地域を元気にする農業を目指して…

2018.03.22


北海道「おくやま農園」奥山俊枝さんは、なんと警察官からの転身!子育てをする上で、転勤の多い警察官より農業の方がいいなと、就農しました。もともと実家は農家という奥山さん。経営に積極的に参加しなければと、知識や考えるベースを身に着けたいと、育成塾に入りました。


■経営について家族と対等に話すため、知識と力量を身につけたかった



-「おくやま農園」の今の事業形態は?

主にJAとの取引で、生産物はトマト、キュウリ、お米と育苗がメインです。両親と弟と私、それにパートさんです。農繁期だけお願いしていて、いちばん多い時期だと、延べ人数で30人ぐらいお願いしています。私の担当は、市内にできた委託販売の直売所に出荷する業務です。そこに出荷する作物の選定と、生産、出荷までは、全部1人でやっています。



-子供の頃から手伝っていた?

当時はパートさんもいなかったので、手伝わされていましたね(笑)。警察官をやっていた時も、稲刈りの時やハウスかけの時は、休みを取って手伝ったりしていました。だからまったく離れていたわけではないし、農業の作業は漠然とは知っていたんですけど、ただ、経営となるとまったく話が違うんですよね。「ものを作ること」と「経営」は、イコールじゃないんだということが分かりました。


-育成塾に来たきっかけは?

父と弟がメインで経営していて、私もそういう話し合いに参加はするのですが、経営を分からないと聞いてもピンとこないんですよね…。最初から一歩ズレてしまうのが嫌だったので、勉強しないといけないと思って育成塾に来ました。自分も積極的に経営に関わっていかなければと思っていたので、対等に横に並んで話すために、知識と力量を身につけたかったんです。


■育成塾で学び、全体を見て手順を考える目線ができた



-講義を受けて、役に立ったことはありますか?

考えるベースができて、父の経営者としての目線を理解できたことですね。以前は父の見ていた目線と、自分が見ていた目線の高さがあまりに違っていて、見えるものが違っていたのですが、「そこの高さから見ていたから、ここが大事だったんだな」と、私が理解できたというのがすごく大きいですね。


講義で学んだことを父とも話すようになり、ときどき「そんなことも知らなかったのか」と言われることもありますけど、そんなことも知らなかった自分より、“当たり前”のことをちゃんと知っていっている自分の方が、前に進んでいるはずだと思っています。まだまだ横には行けていませんが、1段違っていたのが半段ぐらいには近づけたのかなと実感しています。


-一歩進んだと実感されているんですね!

まだまだ全然足りないですけど(笑)。以前は考えるベースもなかったので、言われたことを理由も分からず「はい」とやるだけでした。でも今は、「それをやれ」と言われた時、その理由が自分の中で落とし込めてからできるようになったし、逆に分からない時は、理由を言葉で説明できて「この方が良くない?」と聞けたり、向こうも説明してくれるようになりました。


本当に基礎的なことだったんでしょうけど、全体を見て手順を考える目線ができました。今までばらばらの視点から見ていたものを、ひとつの筋を通して見るという感じ。自分の中で物事の筋道を立てて、「これからここを磨いていけたら、作業効率が上がるんだろうな」と気づけました。



-ほかにも育成塾の勉強で、役に立ったことは?

経営のベースを作る勉強をできたことですね。農業女性の集まりなどに行っても、「これをやりたい」「あれをやりたい」という話は出ても、経営のベースがないと、どう実現させるかにはなかなか繋がらないんですよね。


経営のベースを勉強できたことで、これまで自分ができなかったことができるという自信にもなったし、将来の展望が見えたっていうのかな。目標を設定した時に、邁進する道を自分で作れるなっていう、自分の中で筋道が立ったというのが、すごくありがたいですね! あとはそれを行動に移したいです(笑)。


■将来的には、地域を元気にする農業をやりたい



-今後の夢や目標を教えてください。

将来的には「地域を元気にする農業をやりたい」という思いが就農した時からあるので、そこを目指すために、まずは自分のところを潰さないようにしないと(笑)。自分の事業を活性化して、地域を巻き込んでいけるような形を取れるようになりたいです。


うちの地域は、農業ではなく商業がメインになりつつある地域なので、農業に携わる人口はどんどん減っていっています。農作業を見たことがない子供たちが多いので、小学校の稲刈り体験や田植え体験など、社会見学はうちでもどんどん受け入れています。そういう活動のためにも、自分たちの経営のベースを上げていかなければいけないと思います。


それに加えて、高橋先生の言われる「5S」を実践して、「農家って別に汚くないね」「行ったら楽しい」「農業も普通の仕事だよね」って、子供たちが思ってくれるようにしたいですね。地域の中のいろんな「業」のひとつとして、農業が成り立っていけばいいなと思います。



もうひとつ思うのは、もう少し「食べること」に関心を持てる国になればいいなということです。携帯電話が3万円しても高くなったとは言わないですが、キャベツが500円したら高いと言われます。それは確かに私も高いとは思いますけど、農業という「業」を続けていくためには、そういう価格の部分でも同じ土台に乗せたいですね。


最近は「QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)」の向上が必要だと言われてますけど、生活の質って、やっぱり自分の体あってこそ。携帯やパソコンにかけているお金を、もうちょっと食べる物にかけてもいいし、それは自分の体を大事にすることに繋がると思います。「生活の質を良くするためには、まずは体が健康じゃなくちゃダメなんだよ」と、大きな声で言いたいですね(笑)。





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