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向井明日香/農家の労働環境を改善したい

2018.03.22


佐賀県の「明日香園」で、ご家族、スタッフと花作りをしている向井さん。短大卒業後は花屋に勤めたのち、ご実家の家業を手伝うようになったとのこと。育成塾卒業を控えた向井さんに、抱えている悩みや、今後の夢を伺いました。


■両親が苦労して改善してきたことを、さらに改善


-業務形態について教えてください。

実家は、もともとミカンなどを作っていたのですが、私が小さい頃から花の栽培の割合を少しずつ増やしてきて、20年ほど前からお花だけになっています。両親と私と弟のほか、通年のスタッフが4人、海外からの研修生もいます。その中で私は出荷を中心に担当しています。その他に事務、花屋に勤めていた経験を活かして花束を作ったり、個人的に頼まれたものを送ったり…雑用ですね(笑)。



販売先は98%がBtoBです。農協を通してではなく、北海道から沖縄まで全国20数箇所の市場に送っています。集荷に来てもらうほか、あとは宅配業者に配送でお願いしています。


-経営的には既に、しっかりした仕組みができているんですね。

もともと産地ではないので農協出荷ができなかったというのもあり、市場に直接持っていくことが多かったんです。佐賀だけでなく県外の長崎などにも、車で持って行っていました。でも、朝早く市場に持って行って、戻って昼間は農作業をしてというのが、親世代にはきつくなってきたので、配送を頼むようになったんです。配送ならどこでも送れるんじゃないかということで、だんだん市場を増やしていった感じです。



-お話を伺っていると、経営については考えながらやって来られた印象を受けます。

まだ改善するところはあると思いますが、比較的やってきている方だと思います。うちはけっこう両親が苦労してきているんです。お花を作り始めた時も、儲けが出る時と出ない時の幅が大きく、儲からない時は本当に一山100円だったりと、苦しい時代を経てきているので…。だから経費を削減したり、農協は挟まず直接市場に売ったり、以前から考えながら経営はやってきた方だと思います。


-しかし育成塾に来たということは、悩みがあった?



そうですね。うちはユリとケイトウを作っていて、ケイトウはオリジナルの品種で2年前ぐらいから利益の取れる商品になってきたんです。でも、20年ぐらい生産を続けてきたユリの方が、ここ数年で値段がすごく下がり、なかなか利益が取れなくなってきたんです。


ケイトウが作れない冬場に、どうしたら利益が取れるのか。ユリで利益を取るのか、他の作物に変えるのか、売り方を変えるのか…何をしていいのか分からなくて、そういうところを勉強してみたかったんです。



-実際に受講してみていかがですか?

まだまだ模索中なのですが、聞いてみたら当たり前のことなのに、知らなかったり気づいていなかったところに気づけたのが、いちばん大きいと思います。例えば「最終的な目標を立てる」ということも、意外と忘れていたり。学生の頃は、試験前には当たり前のように計画を立てていたはずなんですけど、仕事では、当たり前のことなのにやってなかったですね(笑)。


「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」の話にしても、聞いてみると当たり前だけど、どうしても売上を上げることだけを考えて、経費を下げることは疎かになっていた部分はあったのかなって。答えは出ないけど問題点に気づけたというのが、一番大きかったと思います。


-実際に行動に移せたことはありますか?

まずは「これからどうしようか」という話が、家族やスタッフとできるようになったということですね。あと、「5S」のことをそのまま言うのは難しいけど、「こういうことを習ってきたよ」と切り出すと、ワンクッションあるので言いやすいんですよね(笑)。自分の考えをそのまま言うより、講義のことを伝えると、「私達も一緒に学んでいこう」という雰囲気になるので、話しやすい環境ができたのがいいですね。


■「農家」が子ども憧れの存在となるために…


-入塾された時、以前は労働時間が長かったのが、17時に終われるようになってきたので、その部分をもう少し進めたいとおっしゃっていましたね。

そうですね。今は比較的うまく回るようになってきて、8時~17時で終わるので時間が作れるようになったんですけど、それこそ昔の両親は、早朝から夜の9時、10時まで働いて、朝3時頃から市場に行ってという生活で、そういうのを見てきていたので…。今聞くと、「余裕がない時は、先のことが考えられなかった」という話もしてくれるんですよ。若くないとできないし、やっぱり無理をしていたようで、よく病気もしていたんですよね。


従業員についても、最初はパートさんだけだったんですけど、それでは集まらなかったので、通年で働けるような環境を作ってきました。でも、農家で8時~17時だと珍しいけど、ほかの業種と比べると、休みが日曜だけだと少ないんです。まずはそういう条件面でほかの業種と並ばないと、就職の選択肢のひとつとして見てもらえないから、優秀なスタッフに入って来てもらうためには、今から改善して行かないといけないと考えています。



働く人からしたら、8時~17時で終わって、給料も良くて休みもあれば、農業でもいいという人はいると思うんですよね。仕事の内容は魅力的だけど、給料や労働時間で悩む人も多いと思うんです。だからそういう環境づくりはやっていきたいですね。そのためには、まずは儲からないと、給料も上げられないので(笑)。


-では最後に、今後の夢はありますか?

子供の将来の夢、やりたい職業として、「農家」が挙がってほしいですね。今は、家が農家だったからとか、結婚して始めたりすることがほとんどなので、「親は会社員だけど、私は農家がやりたいんです」という人が出てくれたらうれしいですね。


もし農家をやりたいと言う子供がいて、親が会社員だったりすると、反対されることが多いと思うんです。農家って、儲からないイメージがあるから…。でもほかの商売と一緒で、儲かる時も儲からない時もあって、いい時も悪い時もありますけど、自分のやり方次第で儲けることもできると思うんです。


そこで儲けることができて、農家じゃない子供がやりたいと思えて、親世代も「農家ならいいね、やってみたら?」みたいに言ってくれる環境になったらいいなって思います。





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