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育成塾講師・箱崎浩大/学んだことをどう活かすか…

2016.03.29

学んだことをどう活かすか。成果は2~3年後だと思います

一般社団法人 日本能率協会/女性農業次世代リーダー育成塾 事務局/箱崎浩大さん

事務局として様々な調整をしてきたほか、販路拡大に関する講義を担当し、FOODEX出展の手助けも終えた日本能率協会の箱崎さん。卒業式の直前にお時間をいただき、この1年の総括を伺いました。



■自分の事業と向きあう時間をできるだけ提供したかった

農女新聞
2期を振り返っていかがですか?


箱崎
1期と比べると参加する方も多様な方が集まりましたし、僕らとしても新たに学びがありしました。そんな中でたくさん変えていかなきゃならないところもあったし、前回以上にたくさん話はしましたね。


農女新聞
早めにゼミ分けをしましたよね。


箱崎
そうですね。他の講師の方も言われたと思いますが、「自分事」にするには自分の事業を見つめなおさないといけないので、全体講義をするよりなるべく個別に時間を割いてあげたいというところがありました。受講生でありながら事業経営者であるということは、目の前の自分の事業に目を向けなきゃいけないのでね。

1年と言っても10回しかお会いする機会がない中で、自分の事業に向き合って何をしなきゃいけないか真剣に考えていくということは、なかなか難しいこと。だから極力、その人達が自分の事業に向き合う時間と、それを考えていく促しと、考えた内容に関して僕らがアドバイスできる回数を増やすことには注力しましたね。


農女新聞
かなり個別に受講生の相談に乗っておられましたよね。


箱崎
去年より10人増えているというのはかなり大きいことなんです。僕らの伝えている内容とその理解度に幅が出てきてしまうので、なるべく早く個別の対応をすることが必要かと。事務局としては、講師の方々にはかなり負担をかけてしまったなというのはあります…。でも負担をかけるということは受講生と向き合う時間も増えていると思うので、その点ではある程度満足してもらえてたらいいなと思いますね。



■「勝てる事業モデル」で利益を追求する

農女新聞
受講生も最初とずいぶん雰囲気が変わりました。


箱崎
授業に来る時間をうまく使って商談しに行くとか、そういう努力をしてる人もいますしね。取引ができただけじゃなく、利益を得るためにどうしたらいいかを追求しなきゃいけないと思うので、そういう姿勢がちょっと見えるだけでも最初とは随分違うんじゃないでしょうか。やはり利益を出さないと資材も買えないし、事業は続かないですよね。


農女新聞
ゼミ分けをしてから、FOODEXの出展に関しての講義をされていましたが。


箱崎
メインの講義は高橋先生と脇坂先生にお任せして、僕は基本的に調整役で、FOODEXなど販路拡大を目指す部分だけお手伝いという形だったんですが、FOODEXで言うと、事業の全体像を捉えて自分の「勝てる事業モデル」が見えて来ないと、「売り」を作ったとしても負けちゃうんですよね。

みなさんは利益が出るからと「売り」に考えが行きがち。だけど、ベースができてなかったら逆に間違った売りを作ってしまい、事業効率が悪い中でその取引フォームを作ってしまうとさらに事業効率が悪化してマイナスのスパイラルに入ってしまうので。

僕がいちばん気にしたのは、「本当に今の事業モデルでいいのか」とか、事業モデルを知ってもらった上で「じゃあ伸ばさなきゃいけないのは何なのか」という部分。それが外からの取引を取ることなのか、内部効率を上げる事によって収益性・利益率を上げることなのかはそれぞれ違います。そういうことを真摯に捉えられるようになった時に、初めて、僕は役に立つ人間になるので。


農女新聞
具体的には「商談会シート」を細かく指導されていましたね。


箱崎
自分の中でモヤモヤっとしていたものを整理するのに有用だったと言ってくれた人もいましたね。でもそれでいいと思うんです。紙を作るだけで終わりじゃなくて、強みが何なのかということと、相手が求めていることを端的に書くということだけなんですよね。

それも、「自分ができる範囲」のことだけなんですよ。ストレッチして大きなこと、イメージの良いこと等できないことを書いたって、何にも繋がらない。自分ができることをしっかり理解した上で、相手が喜んでくれること、つまり取引に繋がることはどんなことなのかを整理整頓していく作業でしかないので。だから作ることより整理することが目的だって言ってた受講生もいましたね


農女新聞
やはり自分の事業の全体図を分かってないと書けない、と。


箱崎
そうそう。FOODEXに関しては、自分たちの「勝てる事業モデル」というか収益を得られる事業モデルを持っている人でないと、やっぱり出展は難しいかなと思っています。これは来年度も同じかな。今回も極力そういう方を選びました。



■失敗を認めることが次のステップに繋がる

農女新聞
出展1日目に「このブースではダメだ」と気づいて、講師に相談して2日目に全部直したという方もいらっしゃいました。


箱崎
出展した人には「どんどん失敗しなさい」とは言ってあるんです。失敗を認めることが次へのステップなので。


農女新聞
なかなか「失敗していい場」はないし、貴重な体験ですね。


箱崎
でも事業をやっている中では「失敗」は常にあって、むしろ失敗を失敗として捉えないのが問題で、ごまかしをしていくとやっぱり会社って傾くし。素直に失敗と認める。経営者として口に出さないようにしているところもあると思うんだけど。でも、そんな立場の人でも失敗したことを理解した上で、是正や改善って必ずしてると思うんですよね。

本人の中ではちゃんと整理できてて、うまく行っていない場合はすぐ次の手を実践するのは非常に大切だと思うので。そのためには何の目的で来たのかがちゃんと明確になっていれば、何かを変更しなきゃいけない時も判断がつくじゃないですか。

だから基本的に僕は「判断すること」からお願いしていて、決して「こうしなさい」「ああしなさい」と強要することもしないし。やはり全体の講義一つのテーマは「自主自立した事業経営者をひとりでも多く輩出する」ことなので、講師を頼ってちゃダメなんです。

失敗してもいいし、もちろん成功すればそれはそれでいいし。ただ成功の中にも何か絶対改善点はあると思うから、その改善点をどう活かすかとか。次にどうしなきゃいけないかを自発的に考えていく。育成塾は繰り返しそれができる訓練の場だと思っているから。



■授業のおかげじゃなく、
 みなさんが質の高いものを作っているから

農女新聞
FOODEXに出展した塾生の成果をどう考えておられますか?


箱崎
出展した人から「取引も取れた」という話はもらっているんですけど、それは授業のおかげじゃなくて、やはり作ってる物がいいからなんです。みなさんが質の高いものを作ってるから取引ができているだけで、「どう見せるか」をほんの少し伝えるだけで十分に戦っていけるんです。

その点に関してはトップの方なんだから当然地域の中でも秀でているし、だったらもっと事業の経営を知れば本当の事業経営者になっていけるという人はいっぱいいると思うんですよね。本当にいいものを作っている人がこういう場で事業経営を学んでくれれば、自主自立した経営者がどんどん生まれていくんじゃないかなと思います。



■他人との比較ではなく、
 自分の事業モデルに合っているかどうか

農女新聞
なるほど、育成塾はいくつも試行錯誤して改善をしていく訓練の場なんですね。


箱崎
なので、たとえば出展した人たちっていうのは、目的に対して達成度は、人によっては80点だったり、そうかと思えば10点って言う人もそれぞれいて。取引って他人から評価されるものじゃないから。自分の事業体に合わせた形でどういう取引ができたかということが一番重要で。

高橋さんも「自分の事業モデルに合う形で事業モデルが作れてれば、利益はちゃんと得られるわけだから、他人との比較じゃないんだよ」っておっしゃってて、僕も本当にそのとおりだと思う。それがもう一番で、だからこそ、自分と面と向かってもらうと、今得られる事業利益などもそれぞれが絶対違うはずなんですよ。



■みなさんがここで学んだことをどう活かすかに注目したい

農女新聞
これまで活動を支援してきた塾生に、メッセージをお願いします!


箱崎
卒業式で中長期の計画などの発表があると思いますが、僕はそこに注目したい。それをちゃんと実践してこれからやり続けるかどうか。そこを僕は心から期待したいし、授業の成果か出るのはこの場じゃなくて、ここから2~3年後だと思うから。

だから活動は見ていくし、受講生と講師の関係は一応ここでは終わるのでなかなか手助けはしづらくなると思うんだけど、でも、必要な機能が箱崎にあるとか、高橋さんや脇坂さんにあるというのであれば、ビジネスライクに付き合っていける関係はあると思うので。

2~3年後、みなさんがここで学んだことをどう活かすかってことだけだから、あとは実践すること。みんな計画を発表してるんだから、それをその通りにやることがまず第一だと思うので、まずは3年後に向けて頑張ってって思います。

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