農女マップ

輝く農女新聞内で特集された情報を紹介しています。

「閉じた質問」と「開いた質問」で会議を円滑に

2021.1

仲間の本音を引き出す「傾聴」とは?

農業の世界からコミュニティの女性リーダーを生みだすべく、約半年間にわたり研修を重ねていく「女性農業コミュニティリーダー塾」(実践編)。
1月13日、第6回リモート型クラスの授業が行われました。これで全10回の折り返し地点を回ったことになります。



まずは、高橋和美先生によるヒューマンスキルの講義から始まりました。本日のお題は、「仲間の想いを引き出す」こと。

「リーダーとなるには、『話す力』と同じくらい『聴く力』も大切です。相手の本音を上手く引き出せないと、本当は同じ想いを抱いていたのに、それに気づかずに残念な結果を招いてしまうことがあります」と高橋先生。

そのために磨きたいスキルが……
「傾聴力」だそうです!

傾聴とは、話を聞いている間「自分の考え」や「判断」を挟まずに、相手の話を「ありのまま」受け止めること。傾聴の姿勢で聴くことにより、相手は自然と本音や想いを話したくなるそうです。 傾聴力が高まると、お互いの信頼関係が強まったり、相手の真意を汲みとった提案ができたり、話し手のモチベーションを高めてあげられるなど、メリットだらけ!

塾生のみなさんからは、「頭ではわかっているけど実行できない」「特に、夫や身近な人だと、途中で口を挟んだりアドバイスしたくなってしまう」と、苦笑いが……。 しかし、みなさんが活動をするうえで巻き込んでいきたい相手には、身近な人たちも含まれますよね。 今日は、聴き方のコツを高橋先生にたっぷり教えていただきましょう。


「閉じた質問」と「開いた質問」で心を開いてもらう



ということで、早速「傾聴力」のトレーニング!
二人一組のルームで、話し手と聴き手にわかれます。

傾聴を成功させるには、笑顔でうなずいたり、相手が話すスピードや仕草にあわせるなども必要ですが、「効果的な質問」を使い分けるのもコツだと高橋先生。
「話し始めは、イエスかノーで答えられるような『閉じた質問』がよいでしょう。これは相手の考えがまとまっていなくても、答えることができるからです。 ただそれだけだと、相手の考えを引き出しづらいので、後半は『〇〇についてどう思いますか?』など一つの単語では答えられない『開いた質問』に切り替えていきましょう」

質問の応用系としては、
・「AとBのどちらにしますか?」など、選択肢を示す方法
・「メリットとデメリットは?」など、両極を示す方法
・「満足度は100点満点中、何点?」など、点数化する方法
なども効果的だそうです。



研修では事前に配布されたカルテを使い、相手の抱えている課題や今後の目標などを「面談」で「傾聴」するワークも行いました。 ワークの後には、話し手と聴き手が「ここはよかった」「もっとこうしてほしかった」など互いの感想を交換します。 普段の会話ではこうしたフィードバックはないので、貴重な経験です。

ワークを実践する中で、「話を聞いてもらって、自分の夢がクリアになった」「話すときや聴くときの自分のクセがわかった」という声もあり、様々な発見があった様子。

学びを深めていく中で、塾生からは
「農業や食について、思想がまったく違うコミュニティに入ってしまうと『自分の意見を言ったら否定される』と話せなくなってしまいます。かと言って、黙っていると同意したと受け取られるし……」
という、農業従事者ならではの悩みも出てきました。
そんなときは「視点を変えるといいですよ」と高橋先生。
「カテゴライズされた表面上の思想だけでなく、色々な面をもった『個人』として接すると共通点が見つかるかもしれません。思想の是非が話題になると、コミュニケーションもつらくなりますよね」
そのあたりの会話力や発信力は、次回の研修で学ぶとのこと。リーダーとして相手の長所も引き出す、さらなるコミュニケーションスキルの向上が期待できそうです。


ビジョンを実現するため「アイデア」を整理しよう!



続いては、金子和夫先生と林聖子先生による、コミュニティづくりの研修です。
みなさんには宿題として地元でワークショップを開き、「次世代に産地を引き継ぎたい」「マルシェを開きたい」などのビジョンを実現するために、課題やアイデアを話し合ってきていただきました。


その結果をもとに、今回のワークショップでさらにアイデアを広げ、整理していきます。 Googleの「Jamboard(電子ホワイトボード)」とZoomを併用したワークショップの形式にも、みなさんだいぶ慣れてきたようです。


ポイントを絞るとアイデアの「深堀り」ができる



2人の提案者を軸に2つのグループに分かれます。そして、ワークショップの開始!
ファシリテーター(進行役)や記録係を決めた後は、提案者(兼発表係)が地元でのワークショップの報告を10~15分ほどで行いました。 その中には、提案者のビジョンや課題がたくさん詰まっています。

提案者のビジョンの中には、「子どもたちに〇〇〇を引き継いでいきたい。そのために、まずは自分たちが楽しんで農業をしたい!」というものもありました。 それを実現するために地元の農家さんで集まって、アイデアを出し合ったそうです。

アイデアの集約された表を見ながら、説明を聞いていた金子先生は…
「議論したいアイデアの線引きをしている点がいいですね。自分たちでどうにかできるものやそうでないもの、 また『お金の話は後にする』など指標が定まっていることで、議論もポイントに絞って深めやすくなります」 「では、〇〇と△△の2分野に絞ってアイデアを出してみましょう」とアドバイス。

提案者の想いを受け取ったメンバーは、ビジョンを実現するためのアイデアを緑色のカードに書いてJamboardに貼っていきます。青いカードは、分野を示すものです。



「本音に触れる質問」でアイデアは広がる

ここでも活きてくるのが、前半で高橋先生から教わった質問スキル。 「〇〇の分野についてイメージわかないのですが、もう少し情報をいただけますか?」など効果的に質問することで、 提案者のビジョンに寄り添ったアイデアを出すことができるようになります。

イメージを広げるために、提案者への金子先生の質問も炸裂。
「□□さんは、お金儲けについては興味ありますか?」
「うーん、ないですね」
「じゃあ、稼いだお金が全部自分たちのものになって、そのお金で海外旅行に行けるとしたら?」
「それはいいですね!」

実は、このやりとりには深い意味がありました。
「お金を後回しにしたり、家族のためになりたいという理由は、とてもきれいな考え方ではありますが――、それではビジョンも広がりません。 『私がスターになりたい』『〇〇な楽しみのために稼ぎたい』など、もっと発想を柔軟にすることが大切です」と金子先生。 この話に感銘を受けた塾生は、「そうなんです! 私そのためにリーダー塾に来たんです」と一皮むけた笑顔をのぞかせていました。


面識のないメンバーと仲良くなる方法



こちらのグループでは、会話が弾む中からたくさんのアイデアが生まれています。

「ある農作物でつくった加工品を通販したいけど、形状がデリケートなため発送が難しい……」という提案者の悩みについては、
「あ、私△△△の方法で発送しているのを見たことがありますよ」
「それはアリですね! でもその後の食べ方はどう説明しよう?」
「やっぱりライブ配信でしょ!」
「読み返せるように□□という形もいいですね」
など、さまざまな背景を持つ人が集まることで、多角的な意見が飛び出してあふれそうです。

アイデアのカードが増えて混乱しそうなところで、林先生が助け舟。
「では、関係をわかりやすくするために、付随するアイデアは黄色いカードに書き足して、大元の緑のカードにつなげていきましょう」
一気に、全体が俯瞰して見通せるようになりました。



ワークショップを終えてみて、「最初のアイデアから、ここまで広がるとは驚き!」「すぐにでもアイデアを実行したい」など、塾生からは数々の感動の声が飛び出しました。

「コミュニティに協力してくれそうな人は複数いるのだけど、その人たちには横の繋がりないので少し不安」というお悩みには、金子先生が有効な手段をアドバイス。
「まずは、みんなで小さなことを一つやり遂げてみるのはいかがでしょう? 例えば、子どもの運動会をみんなで手伝ううちに仲良くなることもあります。 何でもいいので共通の小さな体験をつくるとよいでしょう」

このように、リーダー塾の研修で学んだことを日々の活動に落とし込んでいくことで、3月の卒業までに大きな変化を体感する塾生さんも現れそうです。後半戦に向けて、いよいよ気合が入ります!