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育成塾の入門編『地域女性講座』レポート

2017.12.20

■地域女性講座は2回で完結する入門編

11月29日、東京都内で「地域女性講座」が開催されました。これは、より多くの人に学びの機会を持ってもらいたいと、10回ある育成塾の要点をギュッと2回の講義にまとめたもの。今回は関東地区(栃木、茨城、千葉、埼玉、群馬、東京、長野、山梨、静岡、神奈川)から19名が参加されました。

まずは講師を務める箱崎浩大先生に、講義の目的を聞きました。



「10回出席するのはムリでも、2回なら出られるという人のための、育成塾講義の凝縮版で、『入門編』のような位置づけです。この2回の講義は、出来不出来を求めることではなく、ご自身の“事業”に向き合ってもらうための研修です。「野菜を作って販売する」という生産者のみなさんがやっておられることも、事業です。その事業のかたちがどうなっているのか、しっかり向き合い、考えてもらう。そしてそれを“自分ごと”にしてもらうために、宿題も出ます。2回通ってこそ完結できる講義なので、今回参加した方はぜひ2回目も参加してくださいと伝えています」


講師は、育成塾の第1期から現在開講中の第4期まで、約100人の塾生と向き合ってきた高橋澄子先生。



さまざまな業種の企業を相手にコンサルティングを手がける高橋先生は“経営”の専門家。「事業を成功させていくために、基本的に必要なことは同じ。それは農業も一緒です」と話す高橋先生の講義を、まとめてレポートします。


2回の講義のうちの1回目の講義内容は、現在の事業の姿を「図」と「言葉」にして紙に書けるようになってもらうこと。


「人は考えていることをうまく言えなかったりするし、特にうまく行ってない時はごちゃごちゃしていますよね。これから始める人も、まずはそれを紙に書けるようになりましょう」(高橋先生)


「紙に書く」というのは、「事業モデルシートを作成する」ということ。その前に授業を通して「農業を事業として考える」という意識改革が求められます。


  

■「事業」と「経営」の違いとは?

「事業」と「経営」の違いとは何か? お客さまに、お客さまの求める商品やサービスを提供し、見合った対価を得て、十分な利益を残して継続することが「事業」。その事業を成功させるため、集団や組織を円滑に運営する方法や仕組みを決めることが「経営」です。


「厳しいようですが、良い品質のものを作っていることも、お客さんがおいしいと言ってくれるということも、事業として見れば最終ジャッジにはなりません。最終ジャッジは利益が残っているかどうかです」(高橋先生)


生産物の売上から、パートさんの人件費や資材の購入費などの経費を引いたものが「利益」。ではなぜ利益が必要なのか? それは家族が食べたり暮らしたりするため。なかなか利益が出ない時もありますが、それはイレギュラー。基本的には利益を残し続けること。突然事業をやめてお客さんを失望させないように、どうにかして続けること。お金がなくなって困る前に、いろんなやり方があるはずなのです。


  

■体力を使わず儲けるには?


「みなさん、自分の時間はタダだと思っていませんか?」(高橋先生)


農業では、朝から晩まで働き、さらに睡眠時間を削って野菜を作ろうとしている人が多いと、高橋先生は感じてきたそう。


「自分と家族の時間を使う方向性で考えている人が多いけど、それだと誰かがケガや病気で休むと、パートさんに頼むことになる。そのパート代が出せないから、死ぬ気で頑張ろうとなる。するとどんどん忙しくなる。これだと1〜2年、3年は頑張れるかもしれないけど、10年頑張れるかな?」(高橋先生)


疲れ切ると事故が起こりやすくなるし、病気で倒れやすくなってしまいます。そうならないために、経費の中に、自分の人件費を入れて考えてください。


「昔は自分たちが働いただけ儲かるという時代だった。でもそのやり方では、今は儲かりません」(高橋先生)


時間や体を使って儲けるのではなく、「頭を使って、できるだけ体力を使わずに儲ける」というのが、この講義のテーマなのです。


「時間とお金の余裕があれば、楽しく暮らせるし、家族とケンカもしませんよね(笑)。また、将来の夢にもお金が必要。しっかり稼げる作物で利益を出して、自分の夢の実現につなげるのが理想です」(高橋先生)


また、それを考えるときに大切なのは「人と比べない」ということです。


「自分のところの状況は、自分にしか分かりません。それに、外にはうまくいっているところしか見せないもの。人と比べて焦るのは全く意味が無いので、それは今日からやめましょう!」(高橋先生)


■グループに分かれてワークを実施!

講義のあとは、グループに分かれて自己紹介。そして自農園・自社の事業モデル作成実習です。


事業モデルを書く時は「どんなお客さまに」「どんな商品・サービスを提供し」「対価をいただいているのか」を見えるように書いていきます。記入例を見ながら書き込んで行く参加者のみなさん。質問もどんどん飛び出します。


高橋先生からは、「消費者に直接売るBtoC」、「事業者に売るBtoB」の違いも解説されるなど、ビジネスの基本がどんどん知られるという、まさに“入門編”な講義に、教室の熱気も上がります。そして、次の段階では「なぜお客さまに選ばれているのか」を考えます。


「物が売れるには理由があります。自分たちの商品がなぜ売れているのかを知り、そこを磨けば、今のお客さんだけでなく新しいお客さんに売れることになります」(高橋先生)


書き終わったら、グループで発表! 刺激的な講義を受け、意見交換も盛り上がります。グループによっては事業の悩み相談会が始まるなど、活発なワークが行われました。


■取材を終えて

今回、参加されたみなさんの動機は、「女性の経営者をターゲットにしているところはなかったから」「父の跡を継いだばかりで、少しでも知識をつけたいと思ったから」「朝から晩まで働いている現状を変えたかったから」「このままではお金が続かないかもしれないと不安だったから」とさまざま。なかには「東京に講義を聞きに行くなんて、友達に誘われるまで思いもしなかった」という人も。親子で参加している人もいらっしゃいました。


1時間講義を受けただけで「自分のところはこの部分(経費)の計算がめちゃくちゃだと分かっただけでもすごい収穫!」「農家は家計と農業の資材とかを一緒にしがち…。どんぶり勘定をやめたい!」など、たくさんの意見が飛び交いました。


みなさん、講義が始まる前と後では、表情がまったく違います。イキイキした表情で話し合うみなさんを見ていると、境遇が似た人との意見交換が、いかに気づきが多いかということが伝わってきます。「周りには新規就農で始める人がなかなかいなくて、今日は新規就農のみなさんといろんな情報交換ができてよかった」という意見も。


同じ境遇の人が近所にいなくても、集まれば出会うことができるんですね。この研修は、地域ごとに行われているので、お近くの研修に参加されてはいかがでしょうか? 1回目に来られなくても、動画を見てから参加できますので、2回目だけでもOK! 2回目の講義では「どうしたらより儲かる形にできるか」を、家族と話し合って考えていきます。きっと悩み解決のきっかけが見つかると思います。