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岡本尚子/家業である農業を継いで初めて知った父の姿

2017.03.26

岡本尚子 (愛知県豊橋市石巻町 おかもと農園)

愛知県で「おかもと農園」を営む岡本さんは、2010年に家業を継ぐかたちで就農。お父様と一緒に、米、次郎柿、キャベツなどを栽培しています。岡本さんの目標はシンプル。それは、お父様のやり方を守りながら、利益を上げることなのです。



この業界は規模が大きいことが評価されやすい

−「お父様から引き継いだ農業を守りたい」ということを、最初に言っておられましたね。

家業を継いで初めて、父親の仕事の能力の高さをすごく感じたんです。それは今までの父親のイメージとは違う姿で、雨が降ろうが槍が降ろうが毎日「普通のこと」として続けてきて、それを誰かに評価してもらおうという期待もしていない。「これを一人でずっとやっていたのか」と思うと、本当に一生懸命農業をやっているんだなと気づいて、そういう意味では尊敬しています。

だから今、自分の家を存続させなきゃという思いがあります。こんな小さな農家でずっと続けてきた人がいるんだということに私は感動しましたし、このやり方をこのまま終わらせるのではなく、もっと知ってもらいたいなと思ったんです。



−最初から目標がハッキリしていたんですね。


そうですね。この業界はどうしても、規模が大きいことが評価されやすいんですけど、自分のところの農業にはそれとは違う価値を感じたし。だから、私は規模を大きくする気はなく、父親が気持ちよく過ごせる環境を作って、それをうまく販売していくやり方を見つけて、利益を上げていきたいと思っています。

−その利益を上げるためにやっていることは?


事業計画的には、利益の出る作物に変えていくこと。それはこの育成塾で教えていただいて、考えていることです。それが果たしてうまくいくかは分からないですけど、今のスタイルのままやっていけて、なおかつ利益がでるやり方を、簡単ではないと思いますけど、模索していかなきゃと思っています。

高橋先生の授業を受けたいと思った

−講義を受けて具体的に見つかった事業の改善点などはありますか?


利益を出せる作物が見つかってきたというのもあるし、あと、労力を測ってできないことは外注でいいんだと割り切れました。講義でそのお話を聞いてからは、仕事をしていても余計に実感するんですよ。うちにはそういうスタイルは向いてないし、そこは冷静に捉えなきゃなと。



−育成塾で学んだことで、具体的に役に立ったことなどはありますか?

私は簿記の資格も持っているので、一応数字は見られたんですけど、数字は数字でしか見てなかった。分かっているつもりで分かっていなかった部分に気づけました。あと、自分の甘さをすごく感じたんですよ。うちの存続もそうだけど、私がちゃんとしたものを作らないと、自分の子供に引き継ぐことは考えてないにしても、次に渡せないと思うし。



講義を受けて仕事を続けてというのはハードですけど、女性の講師というのも良かったですが、説明会で高橋先生のお話を聞いた時、腑に落ちることもあり、この先生の授業を受けたいと思ったんです。


−それはどういう部分で感じたのですか?

自分の農業の方向性は、ほかのみなさんと違うことは感じています。でも高橋先生は、私みたいな農家の在り方も、それはそれでアリだとおっしゃっていて。それなら私がこの授業を受ける意味もあると思いました。




女性が1人で子育てするのにも、農業はすごくいい仕事

−それぞれのケースがあって、それぞれ課題も違うことは講義でも言われていましたね。

年齢も違うし、環境も違う。私は1人で子供を育てながら農業をしているということもあって、シングルだけという人ともまた違う。ご主人がいる方のやり方と、1人でやるやり方はまた違う。だから、そういう基盤づくりだと私は思っているんです。すごく偉そうな言い方ですけど、私みたいなケースでもやり遂げれば、女性でシングルでもやっていける事業だと分かると思いますし。



−岡本さんは別の仕事を経てからの就農ですが、「農業」をどう捉えていますか?

ストレートに就農するのもいいけれど、社会人経験を経てから農業をやるのもありじゃないかと思います。いろんな経験があって今に生かされる気がしますし。あと農業だと経歴などは関係なく、社会人でうまく行かなかった人もリベンジできる。それもある意味おもしろい職種なんじゃないかと、最近思いますね。



農業って、母子家庭にはいい仕事だと思えるんですよ。サラリーマン時代にできなかったことが、農業だとできるんです。時間調整ができるので、子供のことをちゃんと見てやれる。稼ぎはサラリーマン時代より少ないんですけど、家庭はうまくいくようになったので、女性にはもっと農業をすすめたい思いはありますね。


−お子さんが大切な時期ということもあるんですね。女性が農業に従事することのハードルも感じたこともありますか?

そうですね。バリバリやればなんとかなると考えていたけど、その甘さも感じました。数年頑張ってやってみても、売り上げなんてたいして上がらないんですよ。これじゃらちがあかないとも思ったんですけど、今は子供の様子を見ながらやれていて、私自身気持ちよく過ごせているので、失敗ではなかったのかなとも思います。



−家族でやるから重労働化しがちとも言われますが、家族でやるからこその良さもあるんですね。

嫌でもコミュニケーションをとるし、父を見ていて、気持ちのいい生き方を続けるという人生もあるのかなと思ったし、いつも笑っている姿を子供に見せたいというのもあります。生活もありますが、その人の能力にあったお金を稼げていればいいし、必要以上にお金がなくてもいいと、個人的には思います。

あと、重労働でない仕事もあるんです。お年寄りの方で農業を続けている人は生き生きしていて、定年退職で気力をなくしてしまうサラリーマンもいるけど、農家はそうじゃない。私も、歳をとってもできるやり方を模索するつもりです。



他の人が見て「農業っていいな」と思えるようにしたい

−今後の事業の姿はどう考えていますか?

自分としての農業は、とにかく父親のやり方を守って、父親を全面に出していきたいと思っています。経理や経営は私が引き受けているんですけど、野菜を出したりする時は全部父親の名前にして、父には「あなたの名前で出すから責任取ってね」とプレッシャーもかけています(笑)。そんなやり取りをしながらも、父親は楽しく作物を作っていて、親子のコミュニケーションもうまく回っている気がします。



−今はすごくいいバランスで仕事をできているんですね。

私も父親もそう思ってるんじゃないでしょうか。父親ぐらいの年齢になると、絶対にマイペースで自分のやり方は変えませんし(笑)。でもそれは同時にうまくいく秘訣かなとも思います。



講師の方も言っておられますけど、普通の会社だと1ヶ月でも資金が回らなければ倒産だけど、農家には補助金があるので、悪い言い方だけどダラダラ農業してる人もいる。でもそれはしたくないし、子供達に見せたくはない。規模が小さいからこそ小回りが効くし、隙間産業みたいなものを見つけてやっていくこともできるのかなと、模索していくつもりです。



自分の子供だけじゃなく、他の人が見ていて「ああ、農業っていいな」と思えるようにしていかなきゃと思っています。