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渡辺佳子 夫は継ぎたくないと言っていたケド…

2015.02.26

■「もったいない!」…自分の一言から始まった就農

渡辺佳子  (福島県須賀川市 渡辺果樹園)


渡辺果樹園は、福島県須賀市で80年にわたり梨を栽培してきた地元では有名な果樹園。そんな老舗の果樹園に渡辺さんが就農した理由は、当時お付き合いをしていたご主人に、つい言ってしまったある一言からでした。渡辺さんは以前、「戸別訪問レポ」でもご登場されていますので、ぜひ、そちらをお先に読まれてから、こちらの記事を読んで頂けたらと思います。


農女新聞
改めて、就農の経緯について教えて頂けますか?


渡辺
主人と付き合い始めた頃(18歳の頃)、実家が農家なんだという話になったんです。その時、主人が「自分は絶対継ぎたくない。公務員になる!」と言ったんですね。私は彼の実家が彼で4代目になる立派な梨農家だと知っていたので、その時「そんなに立派な実家を継がないなんて、もったいない!」と言っちゃったんです。これがことの始まりなんです。私としては、自分が継ぐつもりはなく、主人が継いだらという意味で言ったのですが…。主人は、私のその一言で農家を継ぐことを決心しちゃったんです(もともと、自分が継がないと…という気持ちもあったのかもしれませんが)。


農女新聞
でも、そのままご主人の実家に嫁いで就農したわけではないですよね。


渡辺
もちろん。その時、自分が就農するなんて考えていませんでしたから。その後、短大を卒業して旅行会社に1年半ほど勤めていたんですが…子供を授かり通勤が難しくなったので会社を退職しまして…その後はあれよあれよという間に結婚の段取りが進んで、主人の実家に同居することになったんです。最初のうちは、子供がまだ小さいのを理由に1日3〜4時間程度しか働いていませんでしたけど、気が付けば毎日フルで8時間働くようになっていました。


農女新聞
なるほど、気が付いたら就農していたみたいな感じなんですね。とはいえ、就農に対して抵抗はなかったですか?


渡辺
実は、結婚まで3年くらい付き合っていたんですが・・・農繁期など彼の実家が忙しい時に、ちょこちょこお手伝いをしていたんですね。忙しいけど活気があって、お客さんもいっぱい来て、出荷作業は見ていて楽しそうだったんですね。それに、年上の人ばっかりで、かわいがってもらえるし、居心地がよくて、その時は農業もいいなぁと思っていたんです。


農女新聞
なるほど…。で、実際に就農してみてどうでしたか?


渡辺
果樹園って、1年間ほとんど休みがないんですね。常になにかしらの作業をしているんです。もちろん、雨だから休みということもなく…。雪でも…1年間過ごしてみて、初めて「農業って大変!」って感じました。



農女新聞
やはり、ギャップはありましたか…


渡辺
就農する前、私が描いていた農家や田舎の生活のイメージは「アルプスの少女ハイジ」だったんです。緑の中で寝転んで、「わぁー、きもちいい!」っていうイメージでした。実際、梨畑には雑草が生い茂って緑がいっぱいで「わぁー、きもちいい!」ってホントに寝転んだんですけど・・・主人や義母から「そこ、汚いよ。堆肥がいっぱいだから」って言われた時に、私の農家=アルプスの少女ハイジ的なイメージがガラガラと崩れました(笑)。


こちらが、その寝転んだ梨畑です。


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ちなみに、お休みとかお給料はどうですか?


渡辺
わたしたちが就農したタイミングで「家族協定」を結んでいて、毎週日曜日は出荷などの農繁期以外は基本お休み、農閑期には1週間から10日間のお休みがドンともらえることになっているのでとてもありがたいです。


農女新聞
普通の会社勤めに近い感じなんですね…。お話の中に出てきていた「家族協定」って何ですか? お父さんやお母さん達と協定を結ぶってことですか…


渡辺
そうです。「今後のために締結をしておいた方がいいですよ」と行政の方に勧められてそうしました。


農女新聞
そういうシステムがあるんですね…。具体的にはどういうことを決めるシステムなんですか?


渡辺
簡単に言うと、家族全員の農作業と家庭内の仕事の分担を家族でちゃんと話し合って細かく決めておくというようなもので、たまに見直しもします。


*『家族協定』*
正式には「家族経営協定」というそうです。農水省のホームページにも『家族経営協定』の定義が次のように書かれています→『家族農業経営にたずさわる各世帯員が、意欲とやり甲斐を持って経営に参画できる魅力的な農業経営を目指し、経営方針や役割分担、家族みんなが働きやすい就業環境などについて、家族間の十分な話し合いに基づき、取り決めるものです』。
家族農業経営は、家族だからこその良い点がたくさんがあるものの、経営と生活の境目が明確でなく、各世帯員の役割や労働時間、労働報酬などの就業条件が曖昧になりやすく、そこから様々な不満やストレスが生まれるのを防ぐのが目的のようです。


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で、お給料の方は?


渡辺
お給料は、普通のサラリーマンよりは少なめですが、年に2回ボーナスもあります。


農女新聞
ホント、会社みたいですね。


渡辺
そうですね。とても恵まれていると思います。サラリーマン気分で、ウチたちは関係ないみたいな…ちょっとそういうズルいところもあったかもしれませんね。でも…


農女新聞
でも?


渡辺
実は今年、親から経営移譲を受けたので、金銭面のやりくりはすべて私たち夫婦が行うことになったんです。なので、お給料がどうなるかは、今年から、収穫次第、私たちの頑張り次第なんです。


農女新聞
もちろん、プレッシャーもあると思いますが、やりがいはありますよね?


渡辺
そうですね。経理面とかわからないことだらけで大変ですが、モチベーションは上がっています。


農女新聞
仕事をしていて、やりがいってどんな時に感じられますか?


渡辺
1年間手塩にかけて、出荷できるところまでもっていって、いざ、お客様に出した時に、「1年間待ってたよ」とか「渡辺さんのところのを食べちゃうと、他のが食べられないよ」とか言われると、心の中で「でしょ」と思うんです。でも表面では「そうですか…」とクールに言いながら自分たちが育ててきた果物を販売できる時ですかね。




農女新聞
手塩にかけた自分の娘を嫁に出す時、みたいな感じでなんですかね…。ちなみに…今回、渡辺さんに事前にアンケートを書いてもらっていたんですが、「農業をやっていて幸せを感じる時は?」という質問に、何と書かれていたか覚えていらっしゃいますか?


渡辺
なんて書いていましたっけ(笑)


農女新聞
「大好きな旦那さんと、ずーっと一緒にいられること。ほんとに、ずーっと一緒にいるので、日曜日のお休みは、家族サービスをしなくてもいいよ、お互い好きなことをしましょう、と言えること」


渡辺
そんなこと書いていましたっけ(笑)


農女新聞
これまで農女のみなさんにインタビューしてきて思うんですが、どうして、みなさん夫婦仲がいいんですかね?


渡辺
一日中一緒にいるので、言いたいことを言い合えているのがいいのかもしれませんね。逆に、旦那さんがすごく遅く帰ってきて、子供とも会えなくてという生活が想像できないですね。ウチの子供たちは、お父さんお母さんはもちろん、おじいちゃんおばあちゃんも傍にいるし、私たちが働いている姿も見られるし、こういうことを考えると、自分の子供たちはなんて幸せなんだろと思います。はい。



農女新聞
最後に…ご主人は最初、「公務員になる」と、おっしゃっていたそうですが、今、公務員の嫁と、農家の嫁、選べと言われたら、どっちを選びますか?


渡辺
どちらのお嫁さんも大変さでは同じだと思いますが、家族という枠で見たときに、子供たちが育つ環境を考えると私は断然農家の嫁!を押します。
通常サラリーマンの家庭では、子供たちに親が働く姿を見せることはまずないと思います。でも、農家の場合、親が働く姿を間近で見ることができるし・・・一緒に働くことで、仕事をする大変さ、お金の重みというものも、一緒に感じることができます。これは、自営業にも言えることですけどね。最近では、うちの長女(中学2年)は「お手伝いするよ。時給850円」と、ふざけたことを言ってきますが(笑)。そんな時に、時給850円を稼ぐ気でいるのなら…と、結構厳しく仕事をさせたりもします。そうすることで、お金を稼ぐ大変さが伝わる気がするからです。また、子供達からすると、祖父母・曾祖母の他に、従業員の方、梨を買いに来てくださるお客様とも接する機会が多く、いろんな方に良くしていただいているので、近隣の方と疎遠になりがちな現代でたくさんの人に接することができる環境で育つ娘たちは幸せだと思います。というわけで、私は農家の嫁がいいです!


農女新聞
素敵なご回答、ありがとうございました。よかったです。公務員じゃなくて(笑)


実は、インタビュー前、渡辺さんから「自分は私は今時の農業をやりたくて農業女子になりました!という人間ではないので、少々マイナスイメージになるような発言になってしまうのではないか」と心配されていたんですが…実際にお話を伺ってみると、農業に対してとても愛情をもっていらっしゃることが伝わってきました。間違いなく「輝く農女」でした。