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育成塾講師・金子和夫/人の心を動かして巻き込んでいく!

2016.03.16

人の心を動かして巻き込んでいくのがコミュニティリーダー

次世代コミュニティリーダー育成コース担当/金子和夫事務所株式会社/金子和夫さん

コミュニティリーダーになるということは、個の活動を越え、地域で仲間を作ってそのリーダーに立ち、集団で地域の問題点を解決していくこと。「次世代コミュニティリーダー育成コース」の講義を担当する金子先生にお話を伺ったところ、事業経営とは違うノウハウがわかってきたのです…!



地方の停滞の原因の一つは「事なかれ主義」

農女新聞
まず「次世代コミュニティリーダー育成コース」の3人の塾生はどんな方か教えてください。


金子
3人とも特色があって、全然違うんですよ。

奈良県の松田さんはクールな人で、地域の人とベタに親しくなるのではなく、地域を愛して外から入ってきた人、Uターンの人たちとつながって、地域密着型ではなく広域連携型のプラットフォームを作ったんですよ。そして古い郵便局の建物を買い取ってカフェをしています。


つくば市の大曽根さんは反対に地元密着の人なんですけど、農家の嫁として入ってきて、男社会なのに農業委員に立候補して、女性の目線でつくばを若者が頑張れる街にしたいと、そういう思いが強い人ですね。


竹岡さんは愛媛県の大洲市出身で、東京の大学を出て外食産業で働いた後に故郷に戻り、森林組合で働いている。僕はたまたま、その街で会議をやった時に知り合ったんだけど、おじさんたちが「う〜ん」と黙っている中で、彼女はズケズケとものすごく意見を言うんですよ(笑)。これは期待できる若者だなと思いました。こういう人たちが新しい活動を起こして、地域に波風を立てて欲しいと思いますね。

(写真左から…講師・箱崎浩大さん、竹岡寿理さん、大曽根京子さん、金子和夫さん、松田麻由子さん)


農女新聞
波風を立てるとは?


金子
地方の停滞の原因の一つは「事なかれ主義」なんですよ。地方の人は実は豊かで、公務員をやりながら、田んぼをちょっとたまに耕せばコメはできちゃうわけですよね。ある面、変化しないんです。

それは「茹でガエル」の理論と同じで、いい気持ちだと思っている間に茹で上がって死んじゃうわけです。だからそこで「それはおかしいんじゃない?」って言う人たちが、地域に風穴を開けることは大事じゃないかと思いますね。



コミュニティリーダーは優れたファシリテーター(進行役)であるべき

農女新聞
おおまかに言うとどういうことを勉強してきたのでしょう?


金子
自分の農業経営はしっかり行っているという前提で、個の経営を越えた活動をしようということ。地域の中で仲間を作ってそのリーダーに立ち、集団で地域の問題点を解決していくことです。

講義では、まずは3人の地元に行って、仲間を集めて話し合いをしてもらい、その上で何が必要かを順に考えていきました。テーマが広いので、それをどうやってデザインしていくかは難しい。その手法をずっと話してきた感じです。


農女新聞
いわゆる「コミュニティデザイン」ですね。


金子
実は今、コミュニティデザインはちょっとしたブームで、各地で取り組んでいますよね。理由のひとつは、地域社会が少子高齢化して担い手が少ないこと。昔で言うと、女性たちが集まって味噌を作ったりとさまざまな地域活動をしていましたが、そういった方々が高齢になり代替わりする必要が出てきています。もうひとつには地域の人間関係も変わってきたということもあります。


農女新聞
人間関係が変わってきたというのは?


金子
昔からある町内会や老人会、婦人会など既存の団体の付き合いだけじゃなく、今は趣味のサークルや生涯学習などたくさんのコミュニティがありますので、既存のコミュニティだけでは対応できなくなってきた。その中で新しいタイプのコミュニティ活動が求められています。

そこで、まずワークショップの実習をやりました。コミュニティリーダーとして地域をまとめるためには、いろんな人の意見をまとめて集約する「コーディネーター」の力が必要なんです。


農女新聞
「リーダー」というと自己主張が強いイメージですが、人の意見をまとめる「コーディネーター」となると、まったく別のスキルが求められそうですね…。


金子
コツは「しっかり聞くこと」です。10人集まれば意見は全員違うので、まとめるのは大変です。そうなると「この指とまれ」とか「俺の意見に従え」とかいうタイプのリーダーだと無理ですよね。

まちづくりにおいては、みんなが思う存分意見を出したところで、意見の違いをすりあわせて整理・構造化し、みんなが「そうだ、その通りだよ」と言うまとめにして合意形成を取ることが求められます。だからワークショップでいろんな意見を集約していく技術は重要なんです。


農女新聞
なるほど。中立的な立場で人の意見を聞けるようにするってことですね!


金子
ワークショップでリーダーをやるためには、あくまで優れたファシリテーター、つまり優れた進行役であるべきなんです。だから、自分の意見はシナリオとしては持っているけれど、口には出さない。そしてみんなで話していく中で、自分のシナリオ通りになっていくというのが理想のコーディネーターですね。



ビジョンを持って説明し、人を巻き込む!

農女新聞
コミュニティリーダーとしていちばん大切なことは何でしょう?


金子
先ほどと矛盾するような言い方ですが、やはりビジョンを持つことでしょうね。次に、人を巻き込む力です。一人ではできませんから、ビジョンを説明して人を巻き込むことが大事だと思いますね。

例えば、大曽根さんは「給食の地元自給率を上げる」という問題に取り組もうとしていますが、すると範囲がすごく広いんです。地産地消のルートを調べ、教育委員会や管理栄養士、教員や生産者の考えも聞かなきゃいけない。農協ではなく給食センターに出すための規格やサイズ、衛生基準などの確認もある。それらすべてを議論しながら進めなきゃいけない。


農女新聞
大変な作業ですね!


金子
だから大曽根さんは、「地産地消の給食は正しい」というビジョンを持ち、それを周りに説明できなきゃいけない。そして気持ちを強く持たないといけません。それでないと、できない事情や理由を説明された時に、その都度くじけちゃいますよね。


農女新聞
なるほど。


金子
竹岡さんも「若い農業者を応援する」と頑張っているけど、売ってあげるだけでは良くなるとは思えないよね。その商品がいい商品というなら、それを糖度何%とか見える形で証明できているか、それが消費者に情報発信できているか。そういう現状整理を一個一個して、農業者や消費者のニーズをしっかり聞いたうえで、何のためにやるのかしっかり計画を作らなきゃいけないよね。


農女新聞
人を巻き込むには、ビジョンと強い気持ちを持って、人に説明できないといけないんですね。


金子
あと、まちづくりが成功したあとは、それを続けるために持続可能なビジネスモデルを作ることです。大切なのは、自分もハッピー、地域もハッピーということ。自分も儲かる、そして地域も儲かる、そういう仕組みにして行かなきゃダメだと思いますね。


農女新聞
ビジョンを持ったうえでロジカルに考えることが大切だということですね


金子
そうですね。僕もよく先輩に「cool head and warm heat」と言われましたが、冷静な頭と温かい心で、ということです。人の心を動かして、人を繋げていってほしい


農女新聞
講義を振り返っていかがですか?


金子
3人とも、コミュニティリーダーをやるという思いを持っているのは素晴らしいことだと思う! 自分が儲かればいいという視点ではなく、地域のために自分に何ができるかを3人ともしっかり考えていて、そこはすごいことだと思います

講義では人を巻き込んでコミュニティデザインをしていく手法を伝えてきたわけですけど、少人数でケース・バイ・ケースで一緒に議論してきて、伝えたかなという満足感はありますね。

でもこれは説明しただけではわかるものではないので、もうひたすら実践! あとはこれを続けていく持続力を持っていただきたいですね。



農女新聞
塾が終わっても続けていくことですね。


金子
コミュニティって別に忙しければやらなくていいから。それでもやるってことは、よっぽど強い気持ちや自分の中にゆとりがないとできないので、大変だと思います。でも、取り組んでいくことに価値はあると思います。というのも、私自身もこういった仕事を30年やってきてますが、やっぱり地域づくりやコミュニティづくりは楽しいですよ!


農女新聞
ほほー!


金子
一人で動けるのも楽しいけれど、みんなでひとつのことをやり遂げるとより大きな感動があると思うし、仲間を作って議論をして、ひとつの大きなビジョンを共有して成し遂げるというのは、その人にとっても成長が達成できる。そういう意味では本当に楽しいと思いますね。


農女新聞
難易度は高いけど、達成感はあるんですね!


金子
あと、今の日本の若者は、人のこと、地域のことを心配するという人が増えていますよね。阪神淡路大震災や東北大震災などのボランティアなどを通しても、自分のことだけじゃなくて人に思いを馳せるという人が増えていると思うので、そういう意味では今、コミュニティというのは、多くの人が心に持っている、意識しているものなんじゃないかな。


農女新聞
そういう思いの人をうまく繋げてまとめると。


金子
そうそう。自分一人でやるんじゃなくて、人の心を動かして巻き込んでいく、そんな人になって欲しいと思います。