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育成塾講師・高橋澄子/みんな地図もなく迷っていた

2016.03.03

自分で考えて動くには「地図」が必要!

事業経営者・リーダー育成コース担当/株式会社MOMO代表 高橋澄子さん

育成塾の第2期生もいよいよ卒業間近! 今回も農女新聞では、育成塾の4人の講師のみなさんにインタビューを行いました。「みんな地図もなく迷っている状態だった」と振り返る高橋さん。それはいったいどういうことなのでしょう?



1期と2期では多少、プログラムを変えました

農女新聞
1期と2期と講義を続ける中で、講師の先生方が気づいたことはありましたか?


高橋
ちょっと厳しい言い方をすると、みんな地図もなくて迷子になっている状態でしたね。


農女新聞
それはつまり?


高橋
事業や経営などの全体像を知らないし、教えてもらっていないということ。自分の状態を自覚するには経営の「フレーム」が必要なのに、フレームワークなど全体論を指導する専門家にあまり巡りあえていない感じを受けました。

POPや加工品の作り方など個別のテクニックを知っていても、全体像を知らなければそれは効果的には使えない。ほとんどの人が、自分の事業には必要ないことにお金や時間を費やしてしまっている「もったいない」状態でした。

だからまずは、農業を事業として捉え、それをうまく回すための経営とは何かを教えるよう、1期と2期では多少プログラムを変えています。


農女新聞
具体的にはどういう変更があったのでしょう?


高橋
まず最初の入塾説明会から「事業モデルシート」を書くことを選考要件にして、自分たちの事業の全体像を自覚し、認識するというテーマをより明確にしました。


農女新聞
確かに「農業を事業として捉える」ことを最初の講義から強調されていますよね!


高橋
まずは自分の「地図」…つまり事業モデルシートをしっかりと書き、自分の立ち位置をはっきりさせること。そしてムダな作業を省いて必要なことを見極められるようになることに力を入れました。


農女新聞
講義を取材していると、毎回、塾生のみなさんの熱意には驚かされました。


高橋
1期も2期もすごく優秀な人たちで、かつ向上心があって努力する人たちで…。だからこそ迷子になっちゃうっていう(笑)。



レストランを作っただけではまだ「成功」じゃない

高橋
あと、みんなの話を1期から通して聞いて、もうひとつ、「迷子」の原因に気付きました。それは、少し目立つことをしたら、すぐに周りの人達が「事業が成功した」とプラス評価をしてしまうこと。


農女新聞
えっ、それはどういうことですか?


高橋
例えばお店を出したり、加工品を作ったり、工場を作ったりする。するとまだ利益が出ていなくても「すごい!」の連呼。だけどビジネスという軸で考えたら、利益を出していない状態ではまだ評価をされないのが普通です。レストランを作ることに他の意義があるのは否定しないけど、でもそれと「ビジネスとして成功しているか」というジャッジは別。


農女新聞
講義でも「趣味なのか事業なのかはっきりさせること」とおっしゃっていましたね。


高橋
その話はみんなすごく反応してくれたけど、そこにインパクトがあることが改めてショックだったかな(笑)。事業として成功すること、事業とは何かというのを分かってないし、教えられてないということだから。事業の評価軸をきちんと突きつけるような関係者や目線が少ないことでしょうね。


農女新聞
若い力や女性の力で農業を盛り立てようという流れの弊害でしょうか?


高橋
その流れはいいと思うんです。でもまず第1に「事業としての評価軸」で物を考える、つまり収支で考えるという点は、間違えちゃいけないと思います。

例えば「地域に貢献する」ことが目的だったら、NPOを作ったほうがいいかもしれない。「事業体」というカタチは万能ではないからです。そこには長い時間をかけて研究された仕組みやノウハウがあるけれど、それはあくまでビジネスに合っているだけのもの。そこに「地域に貢献する」とか「誰かを幸せにする」とかは入れ込まない方がいい。


農女新聞
「事業としての成功」と「地域貢献」は分けて考える必要があるんですね。


高橋
地域貢献をやるなと言っているわけじゃなくて、ビジネスというカタチに合わないものもあるということです。ビジネスを通じて結果的に貢献することはできるかもしれないけど、それにはまずビジネスが成功することありきですからね。

みんなの現状を聞くと、地域貢献色が強くて収支を取ることが難しいものを、全部「事業」に入れちゃってて…、まるでごった煮の鍋のような状態(笑)。鍋やコンロが1つしかなければ、どちらを先に作るか優先順位も決めなくちゃいけない。そこを自分たちで工夫してジャッジするためにも、分けて考えることが必要なんです。



第2期の講義を振り返って

農女新聞
講義ではまず、みなさんが抱える問題の整理に時間をかけておられましたね。


高橋
整理に至るにも3ステップぐらいあって、まずは事業のフレームワークの中で自分を「振り返る」。その後で「深く考える」。そして初めて「整理する」ことができる。整理するっていうのは、実はかなり難しい行為なんですよね。


農女新聞
その難しい行為を頑張る中、第5回の講義で「夢」の大切さを説いておられたのが、塾生の原動力になっているのでは?


高橋
ああ、それはあるかもしれませんね。でも実は、まずビジョンを置いて、そこから戦略を考えていくというのは、今の経営戦略論の基本なんです。結局、経営に問題なんていつも生まれて来るんですよ。だから「どこに行きたいか」というビジョンから俯瞰して見ないと、目の前の問題を潰すだけのモグラたたきになっちゃう。それを山に登ることにたとえたら、みんなよく分かるって言ってくれましたね。

(⇒ http://www.jma.or.jp/kagayaku-nj/news/report/article037.html


農女新聞
では最後に、2期の講義を振り返っていかがでしたでしょうか


高橋
事業的には進んでいた人もいるし、これからの人もいるけど、それぞれの人がそれぞれの場所から自分を振り返り、着実に学んでくれたかなっていう実感は持っています。昨日、ちょうど前回の振り返り(宿題)を見ていたら、みんながちゃんと自分の言葉で自分を語れるようになっていて、しかも「自分はどこまで来ました」ということを伝えてくれていて。夜中に見ていて、ちょっとホロっとしました。


農女新聞
みなさんずいぶん学んで変わられたんですね!


高橋
こういう職業って、人を信じる職業なんですよね。今年は人数も多いし、みんな色んな方向を見てそれぞれ迷っていたから…。でも絶対に自分で自分を見つけていけるはずだと信じて。するとやっぱり、みんなちゃんと自分で考えていて、苦しいし時間もかかるけど、ここまで来れるんだなって。信じてよかったなと思いました。


農女新聞
旅立っていく塾生にひとことお願いします!


高橋
自分で自分を振り返りながら、人の言葉はいったん自分の中で考えて、そして動いて、その結果に対して自分で責任を取れる今の感じを忘れないで、続けてほしいなと思っています。また元の迷子に戻らないでね!(笑)

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