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育成塾講師・箱崎浩大/育成塾9ヶ月間の総括

2015.03.30

■事業モデルがしっかりしていれば「モノ」がなくても経営はできる!

事業成長につなげる展示会有効活用研修担当/一般社団法人日本能率協会/産業振興センター
マネージャー/箱崎浩大さん


今回のインタビューは…この育成塾を運営している「日本能率協会/産業振興センター」のマネージャーを務める箱崎浩大さん。それぞれ抱えている状況が異なる塾生ひとりひとりに対して、的確に経営者としての道へ導く姿は、まさに経営育成のマエストロ(筆者が勝手に呼んでいます)!そんな箱崎先生に、この育成塾を通して見えたこと、経営者に必要なことについてお聞きしました!


■一人前の経営者まであと少しのところまで成長してもらえた

農女新聞
まずは、この育成塾の9か月のプロジェクト、お疲れ様です!


箱崎
ありがとうございます。と言っても、プロジェクトのまとめなど、僕自身の仕事はまだあるんですけどね。


農女新聞
あらためて、この育成塾の全カリキュラムを終えての総括をお願いします!


箱崎
そうですね…最後の講義で、塾生の皆さんに今後事業を行っていく覚悟を宣言いただきました。宣言は受講生自身の企業理念や事業理念に通じる内容で、皆さん1人1人が1人前の経営者として近いところまで成長してもらえたと思います。あとはその理念に沿ってぶれずに活動して欲しいですね。


農女新聞
印象的だった塾生などいますか?


箱崎
いえ、特に誰というのはないです。というのも、もともと1人1人が抱える経営状況や、目指すスタイルは違うので、それぞれが自分の課題をどう解決するのか、考えながら自立していくことが大事だと思います。そんな意識の中、この塾を通して、塾生の方々は、自分の事業に正対することはできたと思います。


農女新聞
なるほど。では正直、育成塾がスタートしたときの塾生達の印象はどうでした?


箱崎
う〜ん…正直、僕達が想定していたよりも事業経営者としてのマインドや持っているノウハウをバリバリと自身の事業に活かしているレベルではなかったですね。


農女新聞
例えばどういうところですか?


箱崎
例えば、今の自分の事業モデルを話して欲しいと言っても、それを明確に説明できる人がほとんどいなかった。皆さんは、それぞれの地域で活躍して、選ばれてきた人達なので、それなりに説明ができるレベルと思ったいたのですが、意外と整理ができていないことがわかりました。そういう意味では、本当に基礎的なところから講義をリビルドしました。


■なぜ開講当時、塾生たちのマインド、ノウハウが低かったのか?


農女新聞
なぜ、地域を代表してきているメンバーにも関わらず、基本的なことが身についてなかったのでしょうか?


箱崎
おそらくですが…彼女達は、能力や学ぶモチベーションは高く、これまで地域で開かれた講義などは相当受けているはずなんです。ただ、その講義の内容が1度限りとか、事業経営するために必要な知識として断片的で、講義内容がぶつ切りで復習する機会もない。また学んだ知識があやふやなので実事業につなげられない。ただ「学んだだけ」になっていたんだと思います。さらに疑問点を整理すらできていないので実業に生かすことは困難です。講義や知識を提供する側の意思だけが先行した講義を受けていたために、下手をすると用語すら理解できていないわけですから、事業モデルと一言言われても困ってしまうのだと思います。


農女新聞
なるほど。


箱崎
例えば…経営を考えるとき、農業においてはまず自分はどの作物を、どのくらい作って、どのくらい売って、どのくらいの収益を上げたいのかを考える。その後、それを実現するにはいつから準備しなきゃいけないのか、どんなモノが必要でどんなアクションが必要なのかを考え、実行する。計画を立案し計画に沿った活動が必要なわけです。年度ごと、中長期の計画書があったのか?


農女新聞
まずは、自分が何をどのように、いつまでに、いくら儲けるのか、をハッキリさせることスタートなんですね。


箱崎
そうです。この整理をした上でどのようにして儲けるか(事業モデル)。そして“じゃあどこでどうやって売る?”というマーケティングの話になって来るんです。彼女達は、今話した儲ける方法(事業モデル)や事業計画が不明確なかたが多かったですね。おそらく受講生皆、アイデアウーマンではあるとはおもいますが、アイディアはアイディアで経営とは同意語ではありません。アイディアがあってもそれを切り盛りする力(経営力)がなければ意味がないです。


農女新聞
なるほど。それは日本の農業界全体が抱えている見えない問題かもしれませんね。


箱崎
そうかもしれないですね。ただ、今回の育成塾で、そのギャップを知ることができたのは成果だと思っています。今後、育成塾のような研修を実施する場合は、まずは参加者の経営者としてのレベルの見極めが必要ですね。そこで、ノウハウをきちんと補えれば、彼女達のアイデアを活かせる伸びしろは十分あるはずですから。


■モノが無くても(試食する商材がなくても)取引は生まれる!


農女新聞
課題と同時に大きな可能性も感じさせてくれたわけですね。そんな中、講義ではどんな工夫を?


箱崎
押しつけにならないように意識しました。あとは彼女達が自分の状況を整理できるように丁寧に進めて行きましたね。こういう風に時間を掛けてバックアップの環境を作れたところも、育成塾の強みなのかもしれません。


農女新聞
確かに1回の研修だけだと、なんとなくわかったつもりで終わっちゃうことも多いですしね。さて、そんな講義を経て参加した「FOODEX JAPAN」。どんな手応えがありましたか?


箱崎
「FOODEX JAPAN 2015( フーデックス・ジャパン)」に出展した人は、自分がどういう事業モデルで、どう儲けるか、はっきりした人が多かったので、会場でもしっかり話ができていたと思います。あとはそれを継続していって欲しいですね。あと、しいて言うならば「モノ(商談対象品)がない中でも取引が生まれる」ところを知って欲しいです。つまり、その作物が展示会の時期に試食ができなくとも、生産量、品質管理、価値を伝えれば取引の話はできますから。


農女新聞
まさに説明する力と取引を増やすための計画が必要ですね。


箱崎
はい、これは農業界全体に言えることでもあるのですが、“食べてもらわないとわかってもらえない”と言う方が多いんです。でもそうではないんです。モノがなくても、自分の商品の品質とどの程度供給ができる事業モデルを経営しているかをしっかり説明できれば、バイヤーに売ることはできるんです。実際「FOODEX JAPAN」では、それを実行できた受講生もいました。消費者イベントはその場で決断してお金をいただきますから、試食が重要ですけど、取引はその場でお金は動きません。展示会と物産展と勘違いしている点がまだまだあります。


農女新聞
そこはイチ生産者で終わるか、イチ経営者として自立できるかのポイントになりそうですね。


箱崎
9月の実りの時期に売ろうと出しても、BtoCでは成功するかもしれませんが、その年にBtoBの売り上げを上げることはほぼできないでしょう。なぜならその年の商品はすでに納入先が決まっているはずだからです。食べさせることをやめろといっているのではなく、食べさせことが目的化していることが問題で、食べさせた後にBtoBの新しい取引を決めてもらうためにどうしたらいいのか?相手はどの時期に納入してほしいのか?理想的なのは実りの時期に食べていただいた数多くの要望を整理し、生産計画をたてる前までに取引有無を確定させ、翌年度から納入するサイクル回すことが必要です。


農女新聞
そうやってしっかり準備ができていれば、自分が主導する形で取引もできそうですね。


箱崎
事業計画と事業モデルがしっかり整理できていれば、展示会で試食なしに取引をつかむことはできます。また、きちっと商談を整理していけばよりよい条件のところに売ることでき、収益を上げることができるはずです。これをわかっている農業経営者もいますがその数がなんとなく少なく感じます。今回の「フーデックス」が、塾生達にはいい刺激になってくれればと思いますね。


農女新聞
最後に塾生達へのエールをお願いします!


箱崎
彼女達には、自分の事業を直視して、安定、拡大させて欲しいです。それを徹底することで、リーダーとして成長していって欲しいですね。自分のモデルをしっかり示せる人じゃないとリーダーとしては認めてもらえませんから。あと、今回、塾生の中には、旦那さんと一緒に経営しているという方も多かったですが、ぜひこの塾で学んだことをキッカケに、経営にどんどん意見を出していって欲しいですね。あとは、この塾での縁を大事にして、新しいビジネスにも結び付けて欲しいです。まずは確かな一歩一歩を。期待しています!


農女新聞
ありがとうございました!


ただ単に、経営やマーケティングのノウハウを『点』で教えるのではなく、自分は何をしたいのかを整理する「スタート」と、それを達成するための考え方「ゴール」を『線』として示した育成塾。9か月という長いサポート体制は確かに、この育成塾ならではの強みだと感じました。今後、塾生達がこのノウハウをどのように広げて行ってくれるのか楽しみです!