FOODEX JAPAN 2025 / 第50回 国際食品・飲料展

海外出展者インタビュー 駐日トルコ共和国大使館
ムカッデス・ヌル・ユルマズ 一等商務参事官

ムカッデス・ヌル・ユルマズ 氏
簡単にご自身の紹介と大使館での主たる任務について教えてください。

私は2022年8月22日から、駐日トルコ大使館の一等商務参事官として4年の任期で赴任しました。今の職務に就く前は、トルコ貿易省で25年間勤務し、最後の5年間はフリーゾーン局の副局長として働いておりました。トルコには18ヶ所の活発なフリーゾーンがあり、輸出中心の投資と生産を促進し、総貿易額は270億ドルに上ります。私の任務は、トルコのフリーゾーンで事業を行いたい国内外の企業にライセンスを発行すること、また、フリーゾーンの開発に関する政策の実施や管理責任者として従事しておりました。
前職の任務中、私は極東を足繁く訪問する機会がありましたが、残念ながら日本を訪れるチャンスに恵まれませんでした。日本に来るのは今回が初めてということで、これから4年間日本で過ごせることにワクワクしています。
トルコ大使館商務部の私たちのオフィスには、3人のローカル・エキスパートと1人の商務官が一緒に働いてくれています。私たちの主たる責務は、製品とサービスの両部門で対日輸出量を増やすこと、そして貿易の不均衡を是正し、商業外交に貢献し、トルコへの直接投資を誘致することにあります。

トルコと日本は、これまで良好で友好的な二国間関係を築いてきました。2015年には「海難1890」という日本・トルコ合作映画が製作されました。今後の両国の経済関係についてどのような期待をお持ちですか。

今後の期待に触れる前に、歴史的背景に目を向けることが大事かと思います。エルトゥールル号の海難事故は、当時、互いに近づき緊密になろうとする2つの大帝国の努力のはざまで発生した悲しい出来事でした。この残念な事故は、一方では深い悲しみを残しましたが、他方では、日本人の優雅さと気高さに気づかせてくれました。イラン・イラク戦争が続いていた1985年、トルコ政府の決定により、爆撃中のテヘランから215名の日本人乗客がターキッシュ エアラインズによってイスタンブールに運ばれた事実は、私たちの共通の歴史にトルコ人のエレガンスと気高さの印として素晴らしい足跡を残しました。
世界経済の中で、この偉大な美徳を持つ両国が共に成し遂げることができることはたくさんあると私は信じています。

しかし、経済関係における数量をみますとそのポテンシャルをはるかに下回っています。私たち二国間の貿易額は、2021年に約48億米ドルでした。トルコからは5億米ドル相当の製品を日本に輸出し、一方、トルコは日本から43億ドル相当の製品の供給を受けています。

二国間貿易における最も重要な問題の1つは、両国間の貿易不均衡を是正することです。現在の通商関係の持続可能性は、相互貿易のバランスを確保し、全体としてそれを増大させることにかかっています。

私どもの貿易省は、日本とバランスの取れた方法で経済関係の改善を図ることを重要視しています。私たちの新たな戦略として、基本的に先ずは、遠く離れた国との経済関係を深めること、言うまでもなく、日本はその意味において重要な国の一つです。それに伴い、見本市やバイヤーミッション、貿易ミッションプログラムの参加拡大、セミナーやイベント、新たな貿易・協力分野の開拓など、多くの活動を実施する予定です

私は、トルコと日本のビジネス従事者の経済協力が増大し深まることで、よりバランスが取れ、かつ、より全体的に持続可能な貿易に移行する必要があると信じています。私たちの商務部の主な責務は、これらの目的を果たすことにあります。

日本人は「寿司」が大好きで、マグロは人気の寿司ネタの一つです。トルコからは相当量のマグロが日本に輸入されています。トルコから日本に輸出されているその他の主な食品や飲料にはどんなものがありますか?

トルコには日本と同じように四季があり、ミネラル豊富な土壌によって多種多様な農産物を生産しています。
トルコの食品産業は、2021年には合計229億ドルをドイツ、アメリカ、ロシア、イタリア、イラクを中心とする223カ国に輸出しています。2021年の主たる輸出部門は、ハードシェル・フルーツ、チョコレート・菓子類、生果実、植物油、漁業・水産養殖などでした。食品部門での対日輸出額は約1億6,000万ドルと、日本の食品輸入総量に占める割合においてはまだまだ少ないと言えます。
マグロは、長年にわたる日本への主要な輸出品の一つです。マグロに加え、近年はサーモン・トラウトの輸出も行っています。日本の皆さんにマグロやサケ・マスをお寿司に使っていただき、その味を気に入っていただけて大変嬉しく思っております。
寿司に加えて、トルコは多種多様な食品・食材でもって日本料理に貢献しています。パスタ、トマト缶、オリーブオイルの輸出は顕著です。トルコは、レーズン、干しイチジク、干しアンズ、ヘーゼルナッツの日本における主たるサプライヤーです。鶏肉や冷凍野菜、チョコレート、キャンディー、フルーツジュース、またグレープフルーツやレモン、オレンジ、ミカンなどの新鮮な果物は、トルコの日本への輸出品の一部です。
Foodex Japan 2023の展示会にはトルコ全土から企業が出展します。Foodexのトルコパビリオンに日本企業の皆様をお招きし、是非、トルコ産品を見て味わっていただきたいと思っています。

更なる日本に向けた新たな輸出戦略製品やカテゴリーはありますか?

日本市場での今のトルコの存在感を高めることを目指しています。特に、綿とウールの布地、繊維産業のシーツとタオル、そして品質と価格の面でトルコがその強みを誇るアパレルです。
食品分野では、フルーツジュース、冷凍食品、チョコレート・菓子製品、柑橘類、乳製品、加工肉や鶏肉が大きな可能性を秘めています。
さらに、キッチン用品、ガラス製品、白物家電、小型家電、機械、自動車のスペアパーツ、家具産業がトルコ国内での発展が際立っており、これらの部門のアイテムも対日輸出に向けた大きなチャンスと見ております。
日本では、自然と地球が極めて重要視され、SDGsとカーボンニュートラルの重要性が強調されます。この考え方が全世界の人々に共有されていることは言うまでもありません。日本の消費者は、SDGsなどのデリケートな問題のニーズを満たすトルコ製品を何の躊躇いもなく取り入れてくれるのではと思っています。高度な安全性と品質基準に準拠した、トルコの確立された品質管理システムをしっかりと日本に向けてご紹介をさせていただいたいと考えます。

日本市場参入に伴う難しさや課題は何だと思われますか?

伝統的に、両国は地理的に近いため、貿易に重点を置いてきました。よって、これまでのところ、貿易の性質としては私たち両国間に向けたものではありません。
日本の経済界においては、トルコとの歴史的な繋がりやロケーションから大きな重要性と経済的可能性があることは認識されていますが、現在のトルコの生産能力や経済力についてはあまり知られていません。トルコは、柔軟で多様な生産能力を持つ工業国です。日本では、トルコを農業経済国として捉える傾向があるのではないでしょうか。
わが国の生産力は、必要なときに迅速に連携できる組織力を備えた中小企業を基盤としています。日本の全企業の99.7%はトルコと同様に中小企業です。
一方、中小企業よりも、日本では数少ない老舗の有名商社が国内市場や海外貿易において大きな存在感を示していることがうかがえます。それらの商社は主に物量が伴う製品を求めています。
日本およびトルコの中小企業が国際的な供給や貿易、協力に追いつくよう両国の関心を高め合うことは、日本・トルコ間のビジネスおよび経済関係を深める上で重要な結果をもたらすものと思われます。
トルコと日本は、多くの点で互いに補完し合い、一体化できる可能性を秘めています。

トルコ産の製品を日本市場にさらに根付かせるための計画は何でしょうか。

第一に、トルコ・日本の経済連携協定は、両国の経済関係の発展にとって重要なステップになると信じています。包括的なものになるでしょう。製品やサービス、投資における自由貿易を対象としています。したがって、貿易障壁を排除し、投資と海外サービスのためのより透明で予測可能なルールを提供いたします。EPAは、関税と非関税障壁を撤廃または削減します。農産物や食品の分野は関税が高いため、EPAが締結されるとトルコからの輸入コストが削減されます。これにより、日本企業、特に中小企業は、トルコの中小企業からより多くを購入するようになるでしょう。EPAの発効に伴い、日本とトルコの中小企業間の貿易と投資はさらに自由になると考えます。
それ以外にも、トルコ企業が日本での展示会や見本市に積極的に参加することを奨励しています。こうした展示会等を介して、日本市場の真の期待と最近のトレンドを観察する機会を得ることとなり、トルコ企業が日本のパートナー候補と会うことができます。
ビジネスパーソン同士の関係を深めるためのもう一つの活動として、“トレード・コラボレーションセミナー”があります。2022年3月、大阪商工会議所様のご協力により、オンラインセミナーを開催し成功を収めました。コロナ前は対面イベントを名古屋、神戸、大阪で開催しました。
また、トルコで開催される国際展示会へのバイヤーミッションプログラムも開催しています。これらのイベントを通じて、可能性のあるインポータさんにはトルコ製品の品質と多様さを目の当たりにしてもらえるようトルコへの訪問を奨励しています。宿泊と移動手段をこちらで用意させていただき、バイヤーさんの希望に応じて、トルコへの国際航空券も用意いたします。
言うまでもなく、私たちの最も重要な機能は、日本企業と連絡を取り、トルコ本国の要求に応えることです。また、特定のセクターの輸出業者のリストの共有や日本企業の皆さんの頭の中にある質問に対して最善の解決策を見つけるためにベストを尽くすことです。

トルコは、エーゲ海輸出企業協会の下で、「Foodex Japan」に長年に渡って出展しています。フーデックスジャパンに何を期待されますか?

Foodexは日本で最も重要な食品見本市の一つであり、トルコ企業は30年近くこの展示会に出展しています。トルコパビリオンとしての国全体の出展は10年以上になります。
Foodexは、多くのトルコ企業にとって、日本のビジネスパーソンとの関係を築く場所だけではなく、日本の食品市場の重要な情報をこの展示会を介して得てきました。また、出展企業の市場での認知度や知名度も年々高まっていることがうかがえます。
Foodexに参加することで、人との出会いが強力な貿易パートナーの関係に変わり、消費者とインポータの両方の間でトルコ製品の認識と需要が高まることを期待しています。

日本での目標は何でしょうか。

さて、私は少し前に日本に来たばかりで、オフィスでの任期は4年です。この4年間で、EPAの一連のプロセスを前に進め、日本・トルコの友好に値するバランスのとれた均質な貿易関係の発展に貢献できることを願っています。
先ほども触れました通り、私たちの貿易量は均等に分配されていません。長年にわたる不均衡をより公平で持続可能なレベルに引き上げるためにお互いが協力し、プロジェクトを前に進める必要があります。そのためには、あらゆる分野で日本との協力を発展させ、深めたいと考えています。私の最大の目標の 1 つは、これをサポートするプロジェクトを実施し、日本のグローバル企業や中小企業がトルコの経済能力についてより多くの知識を得られるようにすることです。
私はトルコと日本のビジネスパーソンの協力は非常に良い結果をもたらすと信じています。最近の例としては、2019 年 11 月にトルコと日本の間で締結された、第三国の建設産業分野での協力に関する覚書が挙げられます。このメカニズムにより、第三国における日本企業とトルコ企業の間で重要な協力関係が形成されました。自動車、食品、繊維などの伝統的な分野に加えて、重工業分野、中・高技術生産分野、物流など、さまざまな分野で日本とトルコのビジネス界の間で同じことが実現できると信じています。
日本企業のトルコへの投資も非常に重要であると考えており、こうした投資を増やすことにも貢献したいと考えています。

トルコ料理について少し教えてください。

トルコ料理を語る上で、真っ先に思いつくのは多様性です。トルコ料理は世界最高峰の料理の一つで幅広い料理文化を有しています。よって、トルコ料理のどの部分に言及すべきかを決めるのは非常に難しいです。トルコ料理には、オスマン宮廷料理からイスタンブールの屋台料理まで、数千種類を数えます。
トルコ料理では、トルコの文化的モザイクの影響を容易に垣間見ることができます。トルコ料理は、地中海、東ヨーロッパ、オスマン、セルジューク文化の影響を色濃く受けています。前提として新鮮な野菜や果物、穀物があり、肉が重要な位置を占めます。糖蜜、ヨーグルト、ブルグルなどのトルコ料理で生まれた製品は、料理レシピの重要部分を形成しています。
地域ごとに異なる料理は、特別な日やお祝い事、儀式などで異なった意味を持ちます。これらの重要なイベントに応じて、食事の提供の仕方も変わります。
例えば、基本的な違いとして、黒海地方では魚中心の食事が主流ですが、エーゲ海地方ではオリーブオイルを使った軽食、南東部では肉料理が多く見られます。
一日の食事を見ると、朝食は最も重要なものと考えられています。オリーブ、チーズ、トマト、グリーンハーブ、ナッツ、さまざまな方法で調理された卵、ペストリーが朝食の基本となります。もちろん、ハチミツや各種ジャムもあります。
先ほどもお話しをした通り、トルコ料理を説明するのは非常に難しいです。私は日本の皆さんが食べ物や食文化をとても大切にしていることを実感しています。さまざまな食を試したいと思う方には、是非トルコを訪れてトルコ料理をその場で直接味わってみることを強くお勧めします。ガズィアンテップ、ハタイ、アフィヨンカラヒサールは、美食観光の私たちのお気に入りの都市であり、トルコの国境を越えて評判が高い数千種類のトルコ料理を味わうことができます。これらのトルコの都市は、美食の分野でユネスコ創造都市ネットワークプログラムの対象となっています。日本の皆様には是非これらの都市にお越しいただき、素晴らしい美食体験をしていただきたいと思います。

最後の質問です。日本食は何が好きでしょうか?

典型的な答えかもしれませんが、日本にいるときには天ぷらがとても好きです。衣は薄くてパリッとしていて脂っこくなく、日本人の繊細できめ細やかな性質を反映している印象があります。

旬の野菜をふんだんに使っている点も興味深いです。トルコにいる時は、よく家族で日本食レストランに寿司やラーメンを食べに行きました。日本料理「和食」が無形文化遺産に登録されているのは、日本人の自然への敬意を表したものであることを以前から知っていました。

日本料理はトルコ料理とは大きく異なります。トルコ料理は、最初の瞬間に強烈な味わいを感じさせます。日本料理は、繊細な味の違いと優れた視覚的側面に基づく高度に発達した料理のように見えます。微妙な味のニュアンスを感じながら味の違いを発見していく、素敵な旅のようです。

まだ出会ったことのない日本ならではの旬の食材に出会える機会を楽しみにしております。私は日本に赴任してまだ3ヶ月ですが、これからどんな日本食に出会えるか大変楽しみです。ありがとうございました。

トルコの産品

  • ブドウ
  • みかん
  • レモン
  • ドライフルーツ
  • オリーブ
  • オリーブオイル
  • サーモントラウト
  • チェリー
  • ドライイチジク
  • ドライフルーツ・ナッツ
  • ピスタチオ
  • ピスタチオ
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