TECHNO-FRONTIER 2020 技術シンポジウム 幕張メッセ・国際会議場 TECHNO-FRONTIER2018 技術シンポジウム 企画委員特別小冊子ダウンロード

第27回 バッテリー技術シンポジウム
委員長・副委員長インタビュー

委員長
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 教授
金村 聖志氏

副委員長
九州大学 先導物質化学研究所 先端素子材料部門 教授
岡田 重人氏


2018年開催のテクノフロンティアシンポジウムは、リーマンショック以後、最大の参加者を記録しました。現在、2019年の「バッテリー技術シンポジウム」に向けて、開催内容の検討が進められています。前回のシンポジウムの振り返りや、バッテリー技術の現状について、委員長の金村氏と副委員長の岡田氏にお話いただきました。

蓄電池研究の変化


---まず、昨年のバッテリー技術シンポジウムを振り返ってみたいと思います。昨年のシンポジウムはいかがでしたでしょうか?

(金村)来場者が増えたのは、電気自動車で電池が盛り上がっていることが理由でしょうね。トヨタ自動車さんが「固体電池でやるぞ」とアナウンスしたのも大きいです。

---昨年度、トヨタ自動車さんにご講演いただきましたが、100人を超える来場がありました。

(金村)NEDOさんも今年からLIBTECの中に固体電池の国家プロジェクトを作りましたしね。そういう影響もあると思います。

---2018年は自動車関連テーマの反響が非常に大きかったということですが、自動車関連以外で注目されている分野はありますか?

(岡田)これは電池に限らない話になりますが、AIを使った材料開発ですね。ビッグデータ、データサイエンスを使った分野です。
(金村)確かに一つの流れになっていますね。計算科学の研究が今まで以上に用いられるようになってきています。

---AIを生かして、新しい材料を作るということでしょうか?

(金村)新しい材料ができて、新しい革新電池につながっていくということですね。
(岡田)創薬の分野ではすでに始まっていますが、電池分野でもAIによる新材料開発支援が今後本格化するのではと期待しています。
電池は元来、そういうことがやりにくかった分野なんです。固体、液体系がごっちゃになっていますから、計算がしにくい。そういう意味では全固体電池は、計算がしやすいかもしれないですね。
(金村)確かに、そうですね。計算科学の結果と実験の結果が一致しやすいと言えるでしょう。液系だと計算科学と実験結果が異なることが多くあるのかもしれません。
昔は、実験科学の研究者と計算科学の研究者は別々の世界だったんですけれども、今は垣根がなくなってきています。
お互いにコミュニケーションするようになってきています。
僕らがやっている次世代蓄電池(ALCASPRING)はまさに、そんな感じですね。
計算科学で全部やろうとするとできないので、ある程度の方向性を実験科学者が示す、そういう方向で研究開発が進んでいます。


インフラとしての蓄電池


---蓄電池の最近の傾向はいかがでしょうか?

(金村)私が思うに、IoT技術が進んでいると感じます。昨年よりも今年、今年よりも来年という感じがしますね。電力業界でもIoTが進んでいて、IoTのための新しい畜電池が求められているのです。例えば、太陽光です。太陽光で発電した電気を蓄電するため、蓄電池の活用が求められています。
その意味では、岡田先生が研究されているESS(電力貯蔵システム)が今後、さらに重要になっていくのかと思います。

---ESSの活用とは、どのようなものになるでしょうか?

(岡田)これまでは家庭内での大型蓄電池のニーズはあまり高くありませんでした。
しかし、今後は電気自動車の急速充電のためにも、バッファとしての大型蓄電池が必要とされるはずです。電気自動車でネックだった航続距離の問題は、搭載電池容量を増やすことで解消されつつあります。12年前に市販化された世界最初のリチウムイオン電池搭載量産型EVであるi-MiEVでは16kWhの電池容量で航続距離100km前後でしたが、4年前に発売されたテスラモデルS100Dでは100kWhの大容量蓄電池で600kmもの航続距離が達成されています。ところが、日本の一般家庭では、最大契約電力100V×60Aの制約があるため、この大容量蓄電池を充電するのに16時間以上もかかってしまう新たな問題が生じます。そこで各家庭に100kWhの定置用蓄電池を設置し、24時間充電しておけば、契約電力量の制約を受けることなく、この定置用蓄電池から大電流で一気に電気自動車を急速充電することも可能となりますよね。
(金村)そうなれば、太陽光が発電できない場合でも、電気供給への影響が少ないわけです。
一つのソリューションとして、分散型の電池をたくさんおくことが考えられています。電気自動車の開発が進めば、自ずとESSが頑張らないといけなくなるはずなんです。

---一家に一台ESSみたいな時代が来るということですか? 蓄電池の値段が気になりますが?

(金村)蓄電池を長持ちさせるよう改良していかなければいけないと思います。電池を一回リプレイスすると50万円ぐらいかかりますが、5年持つのか20年持つのかで費用が全然違いますよね。普及させるためには、電池寿命をもっと長くしないといけないと思います。
(岡田)それにセカンドユースですね。電気自動車の電池が余っていきますから、再使用できるようにしないといけない。そういう意味では、電池のリサイクルを主眼にした企業が、もっと市場で求められていくと思います。


蓄電池の未来


---いろんな面で蓄電池が変わってきているということですね?

(金村)そうですね。これからの時代は、蓄電池はインフラになっていくと思います。社会全体のインフラとして重要な役割を果たす。電力系統の確保のためにも、蓄電池の活用が必要になっていくと思います。
産業全体で見れば、産業構造自体がモノからコトへ変わってきて、サービスへシフトしています。製品ではなく、サービスで稼ぐ時代になってきている。
既に自動車のシェアサービスが広まっていますが、そうなると蓄電池も自分の使用量だけを払っているとも考えることができます。
また、私たちを取り巻く環境変化も重要です。電気自動車のように蓄電池に対する期待が大きくなっている分野もあります。
米中貿易戦争の推移も気になるところです。中国製品に関税が強化されれば、日本製品の方が安くなる可能性もあります。
このように市場や規制、環境が変わっていますので、蓄電池も大きく変わっていく可能性が高いと思います。
今年のシンポジウムでも、技術のみならず蓄電池の未来を語るようなものにしたいと思っています。


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