仏教と実業 (第26回一隅会より)

協和醗酵株式会社 会長
社団法人在家仏教協会 会長
加藤弁三郎氏 (当時の役職)

1972年8月19日、第26回一隅会においてご講演いただきました一隅会速記録をもとに、一部編集をしてお伝えいたします。
本講演内容は、ご自身の仏教とのかかわりをはじめ、仏念や在家仏教協会に関わる内容まで、実業と仏教のかかわりについて深い示唆を与えていただく講演内容です。

【第20回】4.縁が熟する - (2)

 それから、当時、私が尊敬しておりました河上肇先生、若いときは、もう私どもが尊敬するころはマルキシズムー本やりであったんですが、そのまえには、先生、助教授時代に、大切な助教授の席を自分から辞任して無我愛運動にお入りになった。無我愛運動というのは、浄土宗の伊藤証信という先生が創設した会なのです。無我愛――己れを忘れ、己れを捨て、他を利する、これが無我愛でありますが、そういう実践運動をやった、その無我愛運動というのがあったんです。そこへ河上先生も入られた。そういうことも、先生の著書か雑誌かなんかに書かれていたことを記憶してございます。それくらいでございますから、無我という言葉なら知っておったんです。それから無我というものはどういうふうに説かれているかという筋道も、荒筋ぐらいなことなら知っておった。だがそれはぜんぜんひとごとであったわけです。要するに、知識の一片として、もろもろの知識のワン・オブ・ゼムとして無我という文字のことを知っておったというだけであります。ぜんぜん自分の問題になっていない。ひとごとなんです。ところがその日の松原致遠先生の無我の話がはじめて自分のことになっちゃったわけです。