仏教と実業 (第26回一隅会より)

協和醗酵株式会社 会長
社団法人在家仏教協会 会長
加藤弁三郎氏 (当時の役職)

1972年8月19日、第26回一隅会においてご講演いただきました一隅会速記録をもとに、一部編集をしてお伝えいたします。
本講演内容は、ご自身の仏教とのかかわりをはじめ、仏念や在家仏教協会に関わる内容まで、実業と仏教のかかわりについて深い示唆を与えていただく講演内容です。

【第16回】3.私の信仰の経路 - (2)

 それで、これじゃいかん、やっぱりこういうことに対して、哲学がなにかを教えているんじゃないか。幸い京都大学は、西田幾太郎先生の全盛時代でございましたから、西田先生のお話―当時の大学は、どこの教室でもだれでも入って聞けるという、まことに自由な、けっこうな制度でもありまして、とくに京都大学がそうであったかもしれませんが。それで私なども化学屋でありながら、西田先生の講義を遠慮なく講堂に入って聞かしてもらったようなわけでございます。これは印象深いお話で、いまでもいろいろ覚えておりますが、しかしながらどうもそれによって、空虚なるもの、人生空虚なること、最後に死がきまっておる、それをどう考えるかということは、どうも西田先生の『哲学概論』を聞いたくらいではよくわからない。
 そこで、宗教はそれに答えているんじゃないかというような気がいたしまして、京都の丸善支店にまいりまして、書棚を物色して、『仏教概論』という本がありましたので、これでもひとつ読んでみようかということで買って帰りました。だがこれはむずかしくて、ぜんぜん歯も立たなかったんです。すぐおっぽり出してしまったのであります。しかしこれはのちに非常なご縁になりました。私、ほんとうにこれをありがたいことに思っておるんです。その『仏教概論』の著者が金子大栄という先生で、今日なおご健在でいらっしゃいます。私にとってかけがえのない師でございます。