仏教と実業 (第26回一隅会より)

協和醗酵株式会社 会長
社団法人在家仏教協会 会長
加藤弁三郎氏 (当時の役職)

1972年8月19日、第26回一隅会においてご講演いただきました一隅会速記録をもとに、一部編集をしてお伝えいたします。
本講演内容は、ご自身の仏教とのかかわりをはじめ、仏念や在家仏教協会に関わる内容まで、実業と仏教のかかわりについて深い示唆を与えていただく講演内容です。

【第14回】2.大乗仏教 - (2)

 この大乗仏教と申しますのは、だいたい突然出たわけじゃもちろんありません。私は、お釈迦様がご在世中に、そういう部類、またそういう傾向のものはあったと思うのでありますけれども、いちおうは、仏教史のうえではっきりしてきたのは、ちょうど紀元前後ごろで、西歴紀元前後、言いかえますと、釈尊がお亡くなりになりまして約五百年ばかり経過したころにはっきりと大乗仏教というものが、これはもう文献のうえからいっても明瞭にあらわれてくるようになっております。
 いちばんその著名なのが竜樹菩薩でありますが、この方がだいたい紀元一世紀ですね。あるいは一世紀と二世紀にちょうどまたがったころのようでございます。その竜樹菩薩の著書はたくさんございますが、ここらになると、もうはっきり大乗仏教、みなさん方がおなじみの『空観』、空という教えを実によく説かれたのは竜樹菩薩で、しかし竜樹が突如としてこれを唱えたのではなくて、そのまえに『般若経』という、たいへん分厚いお経が出ておるわけでございまして、『般若心経』のほうはその『般若経』を要約したもので、今日、人口に膾炙しておりますが、あれのもとは非常な分厚いものだそうでございます。そういうものがもうできております。それを竜樹菩薩がよく読み、よくこなして、そしてそれをずっと教えた、それが空の思想、竜樹の空の思想、空論を実に巧みにやっておりまして、これは今日読みましても、実にそれは文句なしに頭がさがって、私なんか、とてもそれを反論するとか反発することはできやしません。ただもう、はあっと、仰せそのとおりだと、もういっぺんにほれ込ませられる、そういう空論をやっておるんです。このへんからもうはっきり大乗仏教というものができまして、それがずっと中国へ行き、日本へ来て、日本の今日の仏教は全部、大乗仏教ならざるはないのでございます。
 そういうようなことで今日まで来たわけでございますが、きょうは私、なにぶんにも仏教のことをなにも知っているわけでもございませんので、自分が仏教に入らしていただくようになった経路などを、お話申しあげてみたいと思うのでございます。