入社2年目、邦雄と学ぶ「会社の数字、基礎の基礎」

 “現場”“現物”“現実”の3つの“現”を重視する三現主義の考え方は、机上の空論ではない現実に即した問題解決を図るための戒めとして、JMAが長年にわたって重視してきた考え方です。
 ますます企業経営が複雑化・高度化する中、現実を捉えた問題解決を図るには「会社の数字」に関する知識が必要不可欠な武器となります。
 そこでこのシリーズでは「会社の数字」を利用するに当たり、必要となる知識を分かりやすく解説して参ります。

貸借対照表って何だ?

「ところで邦雄、資産と財産の違いに関心を持った理由は何かあるのか?明日は休みだし、今日は泊まっていくんだろう?なんだったら貸借対照表の方も説明しようか?」
「さすが伯父さん話が速い。教えてもらえるなら、ありがたいなあ。」
「その調子の良さ、誰に似たんだ。」
巌はそう言いながらもわが子同様の甥、邦雄と話が出来ることがいかにもうれしいという表情を見せながら、損益計算書を説明するときと同じように貸借対照表の雛型を示しながら説明を続けた。
「これを見て何か気付くことはあるか?」
「ああ。損益計算書は縦長だったけど、貸借対照表の方は横長で、しかも左右に分かれていているよねえ。あ、それと日付の付け方も違うかな?」
「そうだな。その二つの点は結構重要な点だ。」
「え、そうなの?」
「たしかに損益計算書に比べて貸借対照表は横長のフォーマットで、しかも右左に分かれている。それは損益計算書が『報告式』、貸借対照表が『勘定式』というフォーマットで作成されていることが多いからなんだ。」
「報告式と勘定式かあ。報告式というのは損益計算書の説明の時に見せてもらったから分かるけど、勘定式ってなんだか難しそうな名前だねえ。」
「そうだな。財務諸表を作るのに『複式簿記』という記録方法が使われることは知っていると思うが、その複式簿記では伝統的に左側を『借方』、右側を『貸方』と呼ぶんだ。かつては貸方と借方という呼称にも実質的な意味はあったんだが、今は単純に左と右のことだと思って差し支えない。この複式簿記では一つ一つの記録のことを『仕訳』、そして仕訳の結果を書き残しておく場所のことを『勘定』というんだ。勘定式という言葉は、この勘定の左右に分かれた体裁に由来するんだ。」
「へえ、そうなの。で、日付の記載方法の違いの方は?」
「損益計算書が一定期間の収益と費用を明らかにすることで、企業の経営成績を報告するために作成されるのに対して、貸借対照表は一定のある時点で、企業がどんな財政状態にあるかを表すために作成されるものなんだ。だから貸借対照表には損益計算書のような期間ではなく、ある特定の日付が記載されることになるという訳さ。」
「あ、そうか。それぞれの作成目的の違いから、損益計算書では期間が記載されるのに、貸借対照表では特定の日付になるってわけだ。ところで、また分からない言葉が出てきたんだけど、その『財政状態』ってどういうこと?」
「うん。企業は自分で準備したり他から集めたりした資金を、たとえば在庫、あるいは設備や建物といった資産に変え、従業員を雇ったり仕事を外注したりして事業活動を行っているだろう。そしてその事業活動から得られた成果を回収し、さらにそれを再投資するという循環を繰り返している。財政状態というのはそんな企業を巡る資金の流れ、ちょっと硬い言葉でいえば、資金の調達源泉と運用形態のことを指すんだ。まあ資金の流れのある瞬間の姿を、写真のような静止画として残した姿とでも言えば良いかな。」
「なるほど、そういうことか。ところで・・・」
邦雄がそう言いかけたところで、階下から夕食の支度ができたことを知らせる伯母利子の声が聞こえてきた。
「まだ質問がありそうだが、ちょうど夕飯も出来たようだし、続きはその後にしようか。」
(続く)

<豆知識>

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