入社2年目、邦雄と学ぶ「会社の数字、基礎の基礎」

 “現場”“現物”“現実”の3つの“現”を重視する三現主義の考え方は、机上の空論ではない現実に即した問題解決を図るための戒めとして、JMAが長年にわたって重視してきた考え方です。
 ますます企業経営が複雑化・高度化する中、現実を捉えた問題解決を図るには「会社の数字」に関する知識が必要不可欠な武器となります。
 そこでこのシリーズでは「会社の数字」を利用するに当たり、必要となる知識を分かりやすく解説して参ります。

資産と財産の違い

「伯父さんのおかげで、一言で利益といっても色々なものがあるのは、それぞれ必要性があってのことで、各々その目的にふさわしい内容になっているんだと言うことがよく分かったよ。ありがとう。もう一つ分からない言葉があるんだけど・・・教えてくれる?」
「なんだい?」
「資産という用語と財産という用語があるじゃない。これって違うんでしょ。違うとすればどう違うのか。これも、自分で調べてはみたんだけど、やっぱりよく分からなくて・・・」
「そうか。確かに考えようによっては混乱する用語だな。」
「・・・・・」
「この二つは、日常会話の中では同じものを指しているといっても差し支えないと思うんだけど、会計の世界では明確に区別されている用語なんだ。ところで邦雄。おまえ、財産というとどんなイメージがある?」
「そうだねえ。色々なイメージがあるけど・・・買う時にはお金を払わなければならなくて、逆に売ったらお金が入ってくるってことが一番かなあ?」
「そうだな。特に財産かどうかを考える上で、換金化出来るものかどうかというのは大きな意味を持つ。それに対して『資産』は、将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的な価値のなかで、その企業に帰属するものを指すんだ。つまり資産かどうかを考える場合、換金化が出来るかどうかは必須条件じゃないってことさ。」
「換金化が必須条件じゃない・・・?」
「まだ、ちょっと首を傾げているな。じゃあ、その説明をする前に、すこし質問するけど『ゴーイングコンサーン』って言葉、聞いたことあるかい?」
「ウーン、聞いたことはあると思うけど・・・企業とか経営とかに係わる言葉だよねえ。ウーンやっぱり、よく分からないなあ。」
「そうか。じゃあまずその辺から話を始めようか。企業会計の基礎的な条件、あるいは前提条件となるもの、言い換えれば会計上のルールの適用の限界を示すものに『会計公準』というのがあるんだ。」
「会計公準?」
「一般的には、出資者からは切り離された独立の存在として企業を捉えるという『企業実体の公準』、評価の単位として貨幣額を用いるという意味の『貨幣的評価の公準』、そして文字通り企業を事業期間を超えて継続的に存在するものとして捉えるという『継続企業の公準』の3つを指すことが多い。ゴーイングコンサーンというのは、この継続企業のことだ。」
「継続企業?」
「ああ。邦雄も知っていると思うけど、昔は今のように個人や私企業が広く他人から資金を預かって、しかも継続的に事業を行うというようなことはあまり無かったんだ。冒険商人って知ってるか?」
「冒険商人?」
「ああ。マルコポーロとか、シェークスピアのベニスの商人の登場人物達をイメージすると分かりやすいかな?彼ら冒険商人はかならずしも定期に交易を行っていたわけでなかったし、そもそも次回また行われるかどうかですら定かではなかった。だから交易から帰ったら、その都度全てを清算する必要があったんだ。そのため手に入れた商品だけではなく、たとえばラクダや船などをはじめとする交易のために購入した道具などは全部売却し、得られた金銭を借入金と相殺してから残りを分配した。だから財産的価値のないものは計算上考慮に入れる必要は無かったし、財産とは別に資産という用語を作る必要性も無かったという訳さ。じゃあ何故、この二つを区別する必要が出てきたんだろう?」
「事業のやり方が変わって行ったからかなあ?」
「そうだな。たとえば邦雄の会社も事業年度毎に決算を行っているだろ。でも、だからといってその都度会社を清算している訳じゃない。それに工場の設備や建物のような財産は、元々何年あるいは何十年もの間使い続け、そこから収益を上げることを目的に購入したものだ。そういうものまで、今売ったらいくらになるかを元にして評価することは合理的じゃないと思わないか?
「確かにそうだね」
「そして事業が大規模になって工場の設備や建物のような財産の割合が大きくなるにつれ、そういう矛盾は次第に大きくなっていったというわけさ。」
「なるほど。資産という用語は、そういう矛盾を埋めるため発明されたものだってことか。」
「まあそういうことだな。どちらかが正しくて、どちらかが正しくないということではなく、前提となる見方の違いから発生しているということだ。
「見方の違いかあ」
「そうだ。目的の違いと行っても良い。そういう視点から様々な会計上の言葉や関連するルールの意味について考えたり理解したりすることは、一見遠回りに見えるかもしれないけれど理解の大きな手助けになるはずだ。、もっと広く言えば会計に関連することだけではなく、企業とか事業といったもの全般について考える際の、理解の幅や深さの違いになって現れてくると思うよ。」
(続く)

<豆知識>

代表的な会計関連用語の和英対照表です

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