入社2年目、邦雄と学ぶ「会社の数字、基礎の基礎」

 “現場”“現物”“現実”の3つの“現”を重視する三現主義の考え方は、机上の空論ではない現実に即した問題解決を図るための戒めとして、JMAが長年にわたって重視してきた考え方です。
 ますます企業経営が複雑化・高度化する中、現実を捉えた問題解決を図るには「会社の数字」に関する知識が必要不可欠な武器となります。
 そこでこのシリーズでは「会社の数字」を利用するに当たり、必要となる知識を分かりやすく解説して参ります。

利益はどこからやってくる?(会計年度と売上総利益)

巌は書斎から持って来た本を開きながら邦雄に言った。
「これは経団連が公表している損益計算書のひな形だ。」(注1)
「へえ、今まであまり詳しく見たことはなかったけど、こうして見ると確かに伯父さんの言うように、何段にも分けて計算するようになってるね。あ、それに計算が進むにつれ利益の名前が微妙に違ってるね。」
「おう、いいところに気がついたな。損益計算書ではまず『売上高』の欄に、ある期間に発生した売上の総額が記載される。そこから差し引かれる項目として『売上原価』が載っているだろ。ここには売上高と同じ期間の、例えば物品などの販売業なら仕入額が、製造業の場合は売り上げた製品がいくらで作られたかを示す『製造原価』が記載されるんだ。
つまり『売上総利益』は、ある期間の売上と仕入や製造原価の差額ということになる。
同じ商品でも、ある期間ずっと同じ値段で売れるわけではないし、同じ値段で仕入れたり製造できたりはしないだろう。でも売上総利益や、それを売上高で割った額、つまり売上総利益率をみれば、期間を通した平均として売上と仕入等の差がどのくらいになるのか、あるいはそれが前期など自社の他の期間や、同業他社と比べてどうなのかといったことが分かる訳だ。」
「なるほど、そういうことか。ところで伯父さんの話にあった『ある期間』というのは、損益計算書に書かれている(自平成○年○月○日 至平成○年○月○日)の部分のこと?」
「そうだ。これを『会計年度』とか『事業年度』とかと呼ぶんだが、日本企業の場合は官公庁の年度に合わせ、4月から翌年3月までの1年間にしている例が多いんだ。」
「そうなの。で、それ以外の期間というのはあるの?」
「ああ。例えば小売業では事業の繁閑に合わせて3月から翌年2月までの1年間にする企業が多いし、社会的インフラを担う許認可事業、例えば銀行などの金融機関や電力会社などでは、その事業を規制する特別な法律によって定められている場合もある。その他にも、例えばグローバルな事業展開をする企業などの場合は、どうしても傘下に国籍や社歴の異なる多くの企業を持つことが多くなるから、決算をスムーズに行うために会計年度を暦年つまり1月から12月に統一するようにしているところもあるんだ。」
「へえ、そうなんだ。」
「一口で『グローバル化』と言っても、それが企業活動として上手く機能するためには、超えなければならない多くのハードルやリスクがある。企業はそれを上手くマネジメントするために様々な手段を講じているんだが、これもその一つの例といって良いだろうな。」

注1:日本経済団体連合会「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」43ページ
(続く)

<豆知識>

会社の数字を知るための資料(その2)・・・統計資料等

1,業種別経営指標:大企業(上場企業)
・産業別財務データハンドブック(日本経済研究所 年刊)
三証券取引所(東京、大阪、名古屋)に上場している企業の財務データを産業別に集計した資料。掲載業種数は約100で、業種毎の財務指標は連結決算、個別決算ともに60以上記載。
2,業種別経営指標:中小企業(未上場企業)
・TKC経営指標(TKC全国会 年刊)
TKC全国会加盟の税理士などが監査した約22万社の国内中小企業の監査結果を集約。掲載業種は900以上で、各業種の財務諸表の要約集計値や優良企業の2期間財務比較なども掲載。

・全国企業財務諸表分析統計(帝国データバンク 年刊)
帝国データバンクが、自社の財務データベースに収録されている情報をもとに業種別に分析。約600業種で企業規模別に約50の指標を掲載。大企業から中小企業まで網羅的な情報が得られることが特徴。

・TDBキャッシュフロー分析統計(帝国データバンク 年刊)
キャッシュフロー関連指標を集めた資料。全国の営利法人、約20万社(約600業種)を対象に、産業別のキャッシュフロー分析統計を掲載。

※その他、営利法人の基幹統計調査として統計法に基づき財務省が行っている「法人企業統計調査」がある。また上場企業や非上場の有力企業に関する情報については、東洋経済新報社の「会社四季報」、日本経済新聞社の「日経会社情報」などからもコンパクトに要約された形の情報が入手可能。