入社2年目、邦雄と学ぶ「会社の数字、基礎の基礎」

 “現場”“現物”“現実”の3つの“現”を重視する三現主義の考え方は、机上の空論ではない現実に即した問題解決を図るための戒めとして、JMAが長年にわたって重視してきた考え方です。
 ますます企業経営が複雑化・高度化する中、現実を捉えた問題解決を図るには「会社の数字」に関する知識が必要不可欠な武器となります。
 そこでこのシリーズでは「会社の数字」を利用するに当たり、必要となる知識を分かりやすく解説して参ります。

利益って何だ?

<プロローグ>

邦雄は入社2年目の新人サラリーマン。一連の新入社員研修も終わり、会社にもようやく馴染んできたところだ。そんな邦雄が不意に伯母の利子の家にやってきた。
「おばさん!!おじさんいる?」
「ええ、いるわよ。久しぶりじゃない。どうしたの?」
利子は邦雄の父昌輔の姉で、子供がいないこともあり邦雄を我が子同然にかわいがっている。歩いて行き来が出来るほどの距離ということもあって、伯母の家は邦雄とってわが家同然だが、社会人になって忙しくなり、ここしばらく足が遠のいていたのだ。
「ちょっとおじさんに教えてもらいたいことがあって。」
リビングでくつろいでいる伯父、巌の前に座るやいなや、邦雄はさっそく話を切りだした。
「部内で各人、新製品のプロモーションの提案をすることになったんだけど、上司に『お前、この商品の利益率が分かって提案しているのか!! 』って、えらく怒鳴られたんだ。
で、自分なりに色々調べたんだけど、一口に利益率と言っても色々あるみたいだし、正直よく分からなくって。伯父さんは経営とか経理とか結構詳しそうだから、少し教えてもらおうかなって思って。」
「そうか。じゃあ聞くが、邦雄は利益ってどんな風に理解しているんだ?」
「利益って、商品とかが売れると出るよねえ。」
「まあそうだな。でもそれだけじゃあ良くて50点って所だ。例えば1万円のものが売れたとしたら利益は1万円か?」
「そんなことはないよ。商品をお客に渡しているんだから、その分は引かなきゃ。」邦雄は馬鹿にするなと言わんばかりに口を尖らせながら答えた。
「そうだな。たとえば売れた商品の仕入れ値が8千円なら差額は2千円だ。でもその2千円は本当に利益か?」
「僕の給料とか、考えていないってこと?」
「そうだ。その他にもお前の上司をはじめ、サポートしてくれている他の従業員の給料とか、本社や営業所の建物や設備を利用するための費用とか諸々掛かっているだろう。」
「そうか。そういう費用も差し引かないと本当の利益は分からないって訳だ。で、そういう費用にはどんなものがあるの?」
「損益計算書って知っているだろう。あれを見るとそれがよく分かようになっているんだ。」
「どういうこと?」
「損益計算書は、企業がどうやって利益を上げているのかを説明するために作るものなんだ。単に利益を計算するだけなら、例えば売上全体から費用全体を引くだけでもいいだろ。でもそれじゃあ、その利益がどうやって出てきたものかがよく分からない。だから企業の活動を通して、利益がどのように出ているのか分かりやすく説明するために、費用をグループ化して、売り上げから順に引いていくという仕掛けになっているんだ。この、費用のグループ化のしかたや差し引かれる過程に、お前の疑問のヒントも隠されているってわけさ。」
そう言うと、巌は書斎から会計学の本を一冊持って来て邦雄の前に広げた。
(続く)

<豆知識>

会社の数字を知るための資料の入手方法(その1)・・・個別企業の経営指標編

1,上場企業
・有価証券報告書
上場企業等は金融商品取引法の規定により有価証券報告書を金融庁に提出する義務があるので、それらを利用することが可能。
かつては政府刊行物センターなどを通じて印刷されたものを購入する必要があったが、いまでは金融庁のシステム「EDINET」から簡単に入手できる。

・決算短信、四半期財務状況
各証券取引所で運用している「適時開示情報閲覧サービス」から入手が可能。
※各社のホームページにはIR(インベスターズ・リレーション)の一環として、上記の経営指標の他に、株主説明会で使った資料や説明会の動画等が掲載されているところがあるので、それらもあわせて利用する事とよいだろう。
2,非上場企業
公表が義務づけられている上場企業等とは異なり、簡単に入手する事はできないが、官報や全国紙あるいは自社のホームページ上に財務諸表や経営指標を公表している場合もある。
また公表義務が無い場合でも会社法上、計算書類(貸借対照表や損得計算書など)の作成義務はあるので、取引の開始に当たって登記簿などとともに相手に提出を求めることも一つの方法だ。