日本の能率を築いた人びと

執筆者:社団法人日本能率協会常務理事 中嶋誉富(当時)
本記事は、1987年「JMAジャーナル」において連載されたものを編集して掲載しています。
記事中の役職名や数字などは当時の原稿どおりとしています。

堀米建一 IE普及に賭けた鬼 4

堀米イズムとIE教育

生産期間短縮の徹底  鉄道時代に生産期間短縮をたたき込まれた堀米は,生産工程全体を総合的にアプローチして,物の回転,場所の回転,資本の回転から,徹底的に無駄排除の追求をやることがIEの第一歩であると考えていた。
 戦後,堀米は約60社のコンサルティングをするが,そのほとんどで,生産期間を大幅に短縮して,営業強化,生産管理,資材管理,資金管理に多大の好影響を与え,新利益創出に大いに役立ったのである。

IE教育の思想  堀米イズムは,知識,手法,ノウハウを教えるより,手法の体験を通して,IEの本質,仕事の本質をたたき込み,人間は成長し,会社もまた成長するという基本的な経営認識の中に,物を造るProcessとは何か,その成果を支配する人間の考え方,行動とは何か,そのための人間の仕事や,システムを改善するというIEの本質とは何かを訴えつづけたのである。これが実習を重視する堀米教育なのである。
 手法は知識として教えられても,仕事とは,管理とは,経営とはを教えるには,実体に迫った体験から訴え,語りつぐしかない。ここに堀米教育の真髄があったように思う。
 IE教育は知識教育では駄目だ。“Get the Facts, 事実を把め”の知識,方法はわかっても,“事実とは何か,事実を本当に把めたか”はやってみなければわからない。“事実は仕事の現場にある,現場で自ら把め”これがIEの基本的な態度なのである。このために,堀米は現状調査,事実の把握は「金のわらじを履いて」ということを,繰り返し徹底して指導したのである。
 堀米自身も立川飛行機の現状調査の時,3足の革靴を履きつぶしたといっているが,逆に現場調査と称して,さしたる準備もなしにタイムスタディーをする愚かさを戒めている。つまり必要な事実を,金のわらじを履いてでも現場で把め,それがIEerの根性だと教えたのである。

IEこそマネジメントの基本  堀米が毎日毎日,請負制度に悩み,生き甲斐さえ失っていた鉄道工場時代,IEの導入でそれが解決され,仕事とは何だったのかと考えた。
 人は自分の力を思い切って仕事にぶつけられ,自分を出し切ったときに充実感を覚える。これは,時代の変遷にも職種の違いにも関係ない。人は仕事によって自分の存在を確かめようとしているはずである。そのような仕事の理解と人間の理解があってはじめて,マネジメントはできる。それが工場管理であり,人事管理であり,マネジメントの基本なのである。IEはそのための仕事の研究であることを心から実感し,それを伝え続けたのである。
 この堀米イズムは,現在の日本能率協会コンサルティング技術の中に流れているが,堀米は昭和20年4月応召し,終戦後は日本能率協会には戻らず,個人で約60社の経営コンサルタントや会社経営者,団体役員などをしたが,昭和45年,71歳で世を去った。

  • 参考文献
  • 『IE』日本能率協会
  • 堀米建一追悼録『もおしょん・まいんど』

文中敬称略(つづく)