ものづくり応援ニュース一覧

「ものづくり立国日本のための"設計力の改革"」

目次へ

2009.9.28

新たに求められる設計検証要件 ~公差解析で設計力に差をつける!~

ものづくりの現場では、図面を用いて生産に必要となる情報を伝達している。図面には、設計意図が示され、材料情報をはじめ、設計基準、寸法、バラつきの許容値を示す公差が記載されている。この図面にもとづき、生産部門では、部品作製の段取り・加工方法・組立方法が決定され、ものづくりが行われる。特に公差設定の技術は、企業独自の製品設計のノウハウであり、材料選定、製造方法、製造時の工程能力、組立方法等の包括的な知識・経験が要求されるため設計力そのものであると言える。また、公差の値は、部品の製造・組立方法と密接な関係があり製品コストに大きな影響を与える。この製品設計で重要となる公差を検証する機能として 「TolAnalyst」(=公差解析ツール)がSolidWorks CADソフトウェアに備わっている。設計者が日常的に使用している表記方法で3次元CADモデルに “寸法”、“寸法公差”、“幾何公差” の情報を与え、組付手順を設定することで、指定部位のバラつきと、各関係する寸法のバラつきに与える影響度を出力することができる。3次元CADデータを用いて公差解析を行うことで、単純な2次元(平面)のバラつきだけでなく、製品全体の3次元(立体)でのバラつきを把握することができるしくみである。「TolAnalyst」を用いたキャスターの公差解析の事例を図8に示す。

図8) 「TolAnalyst」を用いたキャスターの公差解析の事例

近年、既存製品の公差情報をそのまま使用する流用設計を繰り返し行ってきたことで、製品設計の根幹となる“公差”を設定するための知識とノウハウの伝承が途絶える恐れがあると懸念されはじめた。このような背景から、“公差”の設定に有効かつ効率的に取り組むことができる“公差解析”は、注目度の高い設計検証要件となっている。先にも述べたように、公差情報は製品設計のノウハウであるために、単純に製品単体を分解して部品を計測しても公差情報を得ることはできない。これは、模倣品を安易に作ることができないことを意味する。公差設定を入念に行うことで、模倣品対策に効果を上げた事例がある。ある企業では、高い精度が必要となる部位に調整機構を設け調整することで性能を得ていた。しかしこの種の製品と同等の性能をもつ模倣品の製造は難しくないために、市場には類似品が出回り易い。そこでこの企業では、公差解析を実施し、適切な公差設定を行った結果、高い精度が必要となる部位の調整機構を排除することでコストを削減し、精度調整のノウハウを公差設定に埋め込むことで、模倣品の氾濫を食い止め、製品の競争力を高めることに成功した。まさに公差設計を通じ、設計力が市場で認められた典型的な例であると考える。

また、近年注目されている環境への影響、特にCO2排出量を設計段階で検証することは、今後ますます設計時の重要な要件となると見られている。製品設計を行なう機械系エンジニアには、CO2排出量を定量的に把握する手段も経験も乏しく、環境によりやさしい設計案を選択することは困難であった。SolidWorks CADソフトウェアに搭載される「SustainabilityXpress」は、部品の材料、製造方法、製造地域、使用地域を指定することで、CO2排出量、エネルギー消費量、酸性大気汚染、水体の富栄養化などの環境への影響をリアルタイムに設計者にフィードバックすることができる。これにより、設計者自身が設計する部品の環境に与える影響を包括的に、かつ極めて容易に知ることができる。SustainabilityXpressの使用手順とGUIを図9に示す。

図9) SustainabilityXpressの使用手順とGUI

製造業を取り巻く環境の変化に対応するために、製品品質の向上、コスト削減、市場への製品投入期間の短縮が設計者に求められている。これらの課題に対応するには、設計者が設計力を向上させることが肝要である。これまで、設計プロセスの中でタイムリーに設計検証を実施できる環境として3次元CADシステムを活用することが設計力の強化につながることを実例とともに述べてきた。設計力革新の主役である設計者サイドでの話を進めてきたが、次回は、ものづくりに携わるすべての部門が3次元CADデータの情報を円滑に共有し、活用するための方法について述べさせていただく。

(次回は、「部門連携と3次元データ活用」について連載を展開。 2009年10月26日配信予定)

目次へ

ページトップへ