- 「ものづくり立国日本のための"設計力の改革"」
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2009.5.25
設計現場の現状 〜上長の技術伝承、流用設計の弊害〜
多くの設計部門では、設計品質/設計の生産性の向上を目指し、設計の標準化を推進してきた。設計標準は企業独自の経験を蓄積した技術の集大成であり、経験の浅い設計者にとっては、設計の基本を学ぶことができる有効な指南書であった。この指南書にある技術の本質を伝承することで、これまで設計部門は設計力の維持/向上を図ってきた。
設計品質低下の要因に「設計力の低下」が挙げられるのは、この設計標準に盛り込まれた技術の伝承がうまくいっていないことがひとつの原因と推察する。技術の伝承がうまくいかない理由はさまざまであると考えるが、基本的には、製品設計の成熟に伴って不具合の発生が少なくなったことにより、さまざまな不具合に直面し、解決してきた経験を持つ設計者が減少しているためではないかと考えられる。
以下は私自身がある不具合に直面した際の経験である。事象の解明および対応策策定に苦戦し、当時の上長に相談したところ、同氏も若い頃に同様の不具合に悩まされたとのこと。そこで、該当部品の設計部署に行き、最新の設計手法を確認したところ、上長の若いころのレポートがバイブルの如く出てきた。担当者によると、設計手法は上長の書いたレポートに基づき行っており、設計手法は変更されていないとの回答であった。まさに、不具合をはじめて経験し、その事象の解明に注力した設計者はその技術に精通するが、世代が変わり、設計標準に基づく設計を行う設計者は、不具合が発生しないために設計標準が設定されている背景を理解する必要がなくなり、このため技術の本質が伝承されなくなるという因果関係を見て取ることができる。
また、忙しい設計者に多く活用されている設計手法として、従来の設計を活用する流用設計がある。これもひとつの設計の標準化の流れと考えるが、流用設計は、過去に生産されたことがある図面(データ)をベースに設計要件の変更箇所のみの検討にとどまるために、設計期間を短縮できる有効な設計手法である。しかし、流用設計は、変更部分のみの検討にとどまるため、流用設計者を行う担当者は、変更部分以外の本質的な設計思想・技術を理解できていない場合がある。
以下は、お客様からお聞きした話である。金型設計に対して、従来どおりの設計(=流用設計)を行い、コスト削減のため海外での製造を行ったところ、金型を組み立てることができない不具合が発生した。この原因を追及したところ、従来どおりの図面公差の設定では、確かに組立ができない部分が発生することが判明したとのことであった。従来は、自社の製造部門に熟練した作業者がいて、その熟練作業者が金型構造を理解していたために、部品の組み合わせ状態を認識した上で加工が行なわれていた。熟練作業者に過度に頼った製造も問題ではあるが、流用設計を行うことで設計者が設計要件に基づいた図面公差の検討が漏れていたことは、設計上の大きな問題である。
近年の3次元CADは、データ管理システム(PDM)と連携して、企業のノウハウを蓄積し活用する設計の自動化が可能である。このような、設計標準、流用設計、設計自動化の流れは、短期的な設計の生産性を上げることは間違いないが、設計技術の弱体化を招来する恐れがあることを十分に認識しなければならない。
話は変わるが、近頃、設計検証に関するセミナー、特に、構造解析、公差設計・解析に関するセミナーが人気を博している。構造解析では、これまで多数の“設計⇒試作⇒実験”を通して決定した設計プロセスで“試作⇒実験”の回数を減らし、設計期間を短縮することが可能となる。また、公差の設定は、部品の製造方法,製作期間(=コスト)に大きな影響があることから、公差設計・解析への意識の高まりがみられている。これらはともに3次元CADデータを利用することで、極めて容易に、これまで設計者が検討できなかった領域の検討が行えるようになっている。
エンジニアの本質は技術の本質を追求する“探究心”にあると考えている。3次元CADの設計検証機能を有効に活用することで、「これまでわからなかったことがわかる」、「検討できなかったことが検討できる」ようになってきている。「設計力の革新」には、製造業を取り巻く環境の変化に対応するとともに、エンジニアの“探究心”を満足させることが必要である。
(次回では、探究心を満足させる「設計検証の重要性」について連載を展開。 2009年6月25日配信予定)











