ものづくり応援ニュース一覧

「ものづくり立国日本のための"設計力の改革"」

目次へ

2009.4.24

製造業を取り巻く環境の変化

BRICs・アジア各国の台頭、顧客志向の多様化、環境配慮/循環型社会のためのものづくりへの要求など、近年、製造業を取り巻く環境が大きく変化している。この環境の変化に対し、製品品質向上はもとより、コスト削減、市場への製品投入時間の短縮が製造業に携わる設計者に求められている。これらの課題を解決する方策として、一部の企業では「3次元データを中核としたデジタルエンジニアリング」を推進し、十分な効果を得ているが、いまだに多くの企業では従来の設計プロセス/設計手法から脱却しておらず、「3次元データを中核としたデジタルエンジニアリング」は、まだまだ十分に普及したといえる状況ではない。

図1は、製造業リコール社告件数の推移を示したもので、近年、リコール社告件数が急激に増加していることがわかる。

図1) リコール・社告件数の推移(独立行政法人製品評価技術基盤機構発表資料を基に作成)

この背景には、メーカーのリコール隠しを発端とした「リコールを行わないことによる社会的批判」を回避しようとする動き、「経営戦略として製品品質を重要視する」姿勢など、市場での品質に対する関心の高まりがリコール社告件数を増加させているとの見方もある。しかし、新聞/TVニュース等で報告されているように、実際の製品事故が増加していることも事実である。リコールは、企業の設計/生産部門など製造業のすべての部門に関わる事象であるが、ここでは「3次元データを中核としたデジタルエンジニアリング」の上流にあたる設計部門での設計品質にフォーカスして話を進める。

図2) 設計品質が低下している要因
(「日経ものづくり」2007年1月号アンケート結果(有効回答数:669))

「設計品質が低下している原因は何処にあるのか」とのアンケートの回答を図2に示す。開発期間の短縮で十分な検討時間がない、試作回数が減って検討が不十分になっている等、開発期間の短縮に起因するもの、厳しいコスト削減要求により信頼性の低い部品や材料を使わざるを得ない等、コスト削減に起因するものなど、まさに、多くの企業において、製造業を取り巻く環境の変化に対応できていない状況を如実に反映したものであることがわかる。また、設計者のスキルが全体的に低下している、機能が複雑化・高速化して従来設計のスキルでは品質を確保できなくなっている、機能や性能を満たそうとして設計の堅牢性が犠牲になっている、など「設計スキルの低下」に起因する理由があげられている。確かに近年、製品自体が複雑さを増す一方で、開発期間は益々の短縮化が要求されていることから、設計部門に対する負荷が上がっていることを伺わせる。一方、「設計ミスを洗い出すための体制が整っていない」など、組織、体制に起因する要因もあげられている。

「日本のものづくりは強い」「製造立国日本」などと言われて久しいが、設計部門/生産技術部門/製造部門/品質管理部門など、ものづくりに携るすべての部門が相乗的に影響し合うことにより、これまでの強い日本製造業が成り立ってきたと考える。設計スキルの低下、設計ミスを洗い出す組織の不在など、日本の製造業にとって忌々しき問題が露呈しつつある現状を直視するときである。日本の製造業の強さを今後も維持し続け、その競争力を益々強化して行くために必須となる“設計力の改革”をテーマに、本連載で日本の製造業の発展に貢献できれば幸いである。

(次回では、「設計現場の現状」より連載を展開。 2009年5月25日配信予定)

目次へ

ページトップへ