- 「これからの製造現場がもつべきインテリジェンス」
-
2009.10.27
生産革新の本質を思い出そう ~最終回~
ものづくりの「明日を読む」 そんな未来を語るべきサイトで昔話とも思える戯言を綴ってきたのは、どうしようもない違和感のせいだったかもしれません。
次々に新しい技術や考え方が生まれ、そして新しい仲間が加わっていく。製造現場、設計オフィス、いろんな場所で多くの人々が懸命に働く姿を目にします。誰もが主人公のはずなのに、そこには不思議と「物語」が見えません。[五現主義に基づき、真の原因を掴むための相関を整理し、実データに基づくPDCAを回すこと]
これが生産革新の本質であり、この本質を貫く力があるのが日本の製造現場だと教えられたのは、もう20年以上も昔のことです。いつしか「現場力」とも呼ばれるようになったこの「本質」を耳にすることが少なくなったのは何故でしょう。
親父さんは「何にも変わっちゃいない」と言います。それは、親父さんがこの本質を大事にしながら製造現場を育ててきたからに他なりません。設備が新しくなっても、どんなに複雑になっても、常にやるべきことは同じ。「自動化」「情報化」そして「見える化」、製造現場を取り囲むキーワードたちは、全てが手段・道具であって目的ではありません。技術がもたらす機能を追いかけるあまりに本来の目的を忘れてしまう。シーズ志向で企画された商品がマーケットで長続きしないのと同じように、生産革新全体の取組みをデザインしないままIT技術に寄り掛かったところで「継続的にPDCAを回すこと」が求められる生産革新には繋がらない。
多くの事例を参考にするのは大事なことです。ただし、個々の取り組みに目を奪われるだけでなく、同時にその向こうにあるグランドデザインに目を向けることが必要です。親父さんは「ものづくり一流化」という目標を掲げQCDE×4Mの取り組みとして整理することで、個々の取組みが同じ目標に向かう要素であることを示しています。
人がいないから、設備が古いから、メーカ任せで作った設備だから… 生産革新への取り組みを難しくする理由は幾らでもありますが、視点を一段上げることで見えることも変わってきます。「生産革新」「ものづくり一流化」が目的であり、製造現場を良くするためにやるべきこと、親父さんは特性要因図として示し、同時に、膨大なデータの存在に頭を抱えていることを伝えることでIT技術への期待をAさんに伝えました。親父さんの前に初めて現れた頃のAさんは、具体論に関する説明がなく、アウトラインだけ言えば、あとは聞き手が具体論を埋めてくれるだろうという甘い考え方を持っていたわけですが、一般的に聞き手は『何も考えなくても、それを使えば答えが出る』と思い込み、またそれを期待しているのですから、本当は「そんな便利なものはありません」と説明してあげるのが一番初めに必要なことだったんですね。
今、Aさんは「実データ」「真の原因を掴むための相関」を考えながら「五現主義」に基づき、製造現場データの関係をER図(Entity Relationship Diagram)として記述し始めています。
図表-9 生産革新のためのデータ構造

一見複雑に見えるこのER図は、親父さんから貰った特性要因図をAさんの得意な表現方法で書き直したものであり、ITの世界で言えばシステム内のデータ構造に相当します。プログラムの中で使うデータの構造として使うか、このデータ構造をデータベース構造として一部もしくは全部を外部に置いて使うかはシステム設計者が判断すれば良いことです。大事なのは「ものづくり一流化」という目標から外れてしまわないことであり、これが「データの一元管理が必要」と言われる理由です。データ構造は一つの「物語」です。そこには目標があり、目標に到達するまでの過程が描かれます。特性要因図もまた同じです。
製造現場が持つべきインテリジェンスとは、新しい技術を生産革新の本質へと繋ぎこむ努力であり、それは道具である技術に求められるものではありません。最先端の半導体工場でさえ、今も昔も製造現場を動かすのは結局のところ人なのです。生産革新をテーマに新しい技術という道具で「物語」を描き、新しい考え方という登場人物を躍らせること、親父さんがそうしてきたように、夢と期待を形に変える取り組みは「何もかわっちゃいない」んですよね。
残念ながら今回で連載は終了です。当たり前のことを当たり前に記し、みなさんに何ら新しいものをお届けすることはありませんでしたが、久し振りに生産技術の教科書の冒頭でも眺めてみては如何でしょう? 本質に出会えるかもしれませんよ♪
以上











