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「これからの製造現場がもつべきインテリジェンス」

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2009.7.27

システムに魂を吹き込もう

親父さんは職人気質の頑固者ですから、あんまり歯の浮くようなスローガンを掲げることはありません。でも、そんな親父さんが若者たちに向け、敢えて口にするのが『ものづくり一流化』という言葉です。
それは、製造現場を見つめる視点の取り方を教えるものであり、製造現場を管理する個々の要因との関係を示すものでもあります。 親父さんはAさんに向かって声を掛けます。「あんた達が好きなシステム構成図ってのがあるだろ?」 Aさんが苦笑いしながら頷くと親父さんが続けます。「あのシステム構成図ってやつは、個々の機能やら役割は記述されてるんだが、どうも全体としての目的が見え難くていかんな」「だから、結局、あんたらが何をやってくれようとしてるのかが分からんのだよ」

今のAさんには親父さんの言葉の意味が良く分かります。Aさんは親父さんに答えます。「はい、仰るとおりだと思います」 Aさんは親父さんが製造現場のデータを分類してくれた絵をもとに、データ活用の視点から情報システムの機能分類として書き直した図面を見せながら「目的に向かって流れていくデータを、上手に『進化』させる仕組みが必要なんですよね」と説明します。「ああ、その通りだ」親父さんは満足気にAさんの説明に頷きます。

親父さんが若者を呼びつけます。「おい、お前、Aさんに『ものづくり一流化』の説明をしてやれ」 若者は親父さんとAさんの話しに入りたくて仕方がありませんでしたから、喜び勇んで飛んできます。「いつもの『あれ』を説明すればいいんですね!?」 親父さん、若者が『あれ』と言うのが少しばかり可笑しいようですが、「そうだ、いつもお前たちに叩き込んでる『あれ』を説明してくれりゃいいんだ」と若者の肩を叩きます。
 恥ずかしげに若者が「講義」を始めます。「Aさん、いいっすか?」「俺たちの現場には『ものづくり一流化』っていう目標があるんすよ」 Aさんは笑いそうになりながらも、若者の講義に耳を傾けます。 若者は続けます。「さっき、『高性能化』と『維持・管理』を基本としたカイゼン活動ってのがあるって説明したでしょ?」「これは『ものづくり一流化』を実現するための手段なんだ」「でもね、周りが見えないままに、いきなり手段を考えようったって、そんなこと土台無理なんだよね」
 若者の「講義」は、あまりにぶっきらぼうで、Aさんはちょっと戸惑います。親父さんが助け舟を出します。「Aさん、ちょっとこの絵(図表-3)を見てくれるかい?」

図表-3 ものづくり改善活動の特性要因図(1)

それは、『ものづくり一流化』という目標を記したものづくり改善活動の特性要因図です。製造現場を見つめる上で基本となる大きな視点(「品質」「コスト」「納期」「環境」)と、個々の要因(「人」「部品」「設備」「方法」)の関係に加え、それぞれの要因ごとに「ファンダメンタル」と「安定稼動」から成る小さな視点が必要であることを示しています。

「Aさん、いいかい? こいつ(若者)は、あんたに製造現場の中での活動の視点が一つじゃないってことを知って欲しいって言いたいんだよ」「共通の視点(ファンダメンタルと安定稼動)で異なる要因ごとのカイゼンを施し、それらの組み合わせが一つの大きな視点に対応したカイゼンへと繋がる。さらに、ここに挙げた4つの大きな視点同士も実は相互に影響し合うのが製造現場なんだ」
 Aさんが口を開きます。「この絵の枝がデータの流れと進化を表しているんですね? そして、現実の製造現場ではもっと小さな枝まで分解されるんだろうな・・・ってことが分かります」「分かってくれてんじゃん!」若者が声を上げると、親父さんは苦笑するしがありませんね。
 親父さんが続けます。「Aさん、あんたのシステムに魂を吹き込もうや」親父さんがもう一枚の絵(図表-4)を示します。「これは、さっきの絵に細かい枝を加えたもんだ」「それぞれの枝の上半分は『ファンダメンタル』、下半分は『安定稼動』を目指した取組みの例が書いてある」 Aさんは何とも言えない緊張感に包まれながら、親父さんの絵を見つめています。 親父さんが言います。「Aさん、今回あんたと一緒にやりたいのは下半分、すなわち製造現場の『安定稼動』を担う部分だ」「ここには膨大なデータがあるからよ、人の手じゃどうしようもねぇんだよ」

図表-4 ものづくり改善活動の特性要因図(2)

Aさんは今、製造現場におけるITの役割を強烈に感じています。「システムに魂を吹き込む」親父さんの言葉が知らぬ間にAさんの頬を紅潮させていきます。「何を作るべきか、システムに魂を吹き込むとはどういうことかが分かりました」Aさんは、親父さんに一礼すると、若者の腕を着かんで呑み屋に連れ出しました。「なんだよ、俺も連れてってくれて構やしないのにな… ま、若い奴のほうが色々と聞き易いか」笑いながら親父さんは煙草に火をつけました。

次回は、Aさんの頑張りと新たな苦悩をテーマにお話しましょう。 そうそう、残すところこの連載もあと2回ほどですから、そろそろ本題のブレークスルーについてもお話せねばなりません。そのためにもAさんには、もうちょっとだけ悩んで頂かねば・・・ ごめんね、Aさん。

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