- 「これからの製造現場がもつべきインテリジェンス」
-
2009.3.25
製造現場で求められるデータとは?
社長の鶴の一声「IT技術で生産革新だ」で始まった親父さんの会社の情報化は、今日も朝から情報屋さんとの会議で始まりました。情報屋さんの実務リーダは、今年35歳になる中堅社員Aさんです。
Aさんが説明を始めます。「当社のMES(製造実行システム)を導入頂ければ、製造現場のムダを削減し、大いに生産性向上を図ることができます」。若者は興味津々で、カッコいいコンピュータの画面例を眺めながら「親父さん、やっぱりITって凄いですねぇ」と親父さんに話しかけます。親父さんは、手にしていたノギスを差し出しながら若者に言葉を返します「おまえ、生産管理システムってのは、このノギスと同じだって分かるか?」。若者は言います「親父さん、何言ってるんすか? 生産管理システムってのはコンピュータっすよ。こんなちっぽけなノギスと同じわけないじゃないっすか」。親父さんは笑いながら言います「おんなじなんだよ」。
確かに、コンピュータ上に構築されるMESとノギスを「おんなじ」というのは、少々無理があるかもしれませんね。でも、どちらも所詮は「道具」であり「使い手しだいでどうにでもなる」という点で同じ物、親父さんはそう言いたいのです。
前にも書きましたが、親父さんはMES導入をとても楽しみにしています。コンピュータシステムとはいえ、道具である以上、使いこなさなければ何の役にも立たない。職人気質の親父さんらしい考えです。親父さんがAさんに話しかけます。「あのな、MESってのが色んなことができるのは分かったんだが、そんな『丼物』みたいで何でもできるって表現はそろそろ止めてくれないかな?」 驚くAさんに親父さんが続けます「製造実行システムとか、生産性の向上とか言われても、俺たちが何をやればいいのか、ちっとも分かりゃしないよ」「製造現場のムダを削減って、どのムダをどんな風に無くすんだい?」
これまで一方的にシステムの説明をしてきただけのAさんは慌てて答えます。「ええっと、例えばですね、設備の稼動状態を監視することでムダの発生を見つけることができたり、設備の異常発生をいち早く見つけることで生産を止めないとか、検査データを管理することで不良品を発生させないなどのムダ削減を図るのです」「それから・・・」と続けるAさんに親父さんは言いました。「Aさん、あんたは製造現場で働いたことがないみたいだね? 現場を知らないままコンピュータの力だけに頼ったって、良い物はできないよ」 親父さんは諭すように言います。「俺はね、ITの力を上手に製造現場に導入したいんだよ。現場とコンピュータが仲たがいしたような代物じゃ、誰も使えやしないし、何の役にも立ちゃしない」「製造現場を理解したシステムってのを作れないものかい?」 それは決してITを否定する頑固親父の文句ではなく、Aさんがこれまで出会った誰の言葉よりも前向きの言葉でした。親父さんはAさんとの議論を具体化するために、まずは製造現場のデータについて考えようと提案します。視点の取り方は幾つかあるのでしょうが、親父さんはまず、細かいデータ種別を議論するのではなく、製造現場ではどんなデータが必要とされているのか?を自分の仕事に照らし合わせながら語ります。(図表-1)
図表-1 製造現場が必要とするデータ分類

図表-1に示された4つのデータレベルは、親父さんがデータを活用するレベルであり、収集・加工・蓄積・解析のプロセスの中でデータを抜き出すレベルとも言えます。
データレベル① : それ自身が直接的に目的を表現できる生データ
データレベル② : データ同士の比較等によって導かれる比較データ
データレベル③ : ある期間に渡って蓄積されたデータの集合体 データレベル
④ : ③の解析結果として得られるデータ
レベル①に示される生データの収集は、製造現場にとって収集が当たり前のもので、製造現場が稼動している限り常に計測されています。但し、これまでの製造現場では、大部分のデータは人間の五感で計測されており、それは設備の稼動音や振動であったり、仕掛品の溜まり具合や作業者の顔色だったりで、ノギスや温度計で測定されるデータように定量化されたものは極めて少ないことから、これらのデータ活用には、親父さんが持つような長年の経験が必要となります。また、計測器を使って測定するデータでさえ、測定者によるバラツキや、人による計測の限界によりデータ活用に難しさを伴います。
レベル② ③でのデータ活用は、基本的にはレベル①におけるそれと同じです。加工・蓄積されたデータを利用することで精度を向上させることが狙いですが、生データの段階での精度の低さがここでも作業者の経験に大きく依存するのが現状です。
レベル④は、ある意味、親父さんの夢でありコンピュータに対する期待です。製造現場から集められたデータを、コンピュータが自動的に解析し、現場にどうすれば良いか答えてくれる。そんな夢のような、また無責任な想いが「自動的」という言葉に隠れているのを親父さんは知っています。
ITの活用は「自動的」を求めるものです。親父さんは「自動的」を求め、Aさんは「自動的」を提供しようとしています。二人の「自動的」の違いを認識し、個々の違いを具体化しながらシステムの仕様を定義すること。それがいわゆる「要件定義」ですが、現実の要件定義は「情報屋さんの仕事に偏り過ぎてるな」と親父さんは感じています。
現場のことが分からなければ、適切な指示を出せはしない。まずは目的を明確化したうえで、相互に影響を及ぼす様々な状況変化の中から、目的に対して必要なデータは何かを定義し処理する。親父さんは、そのために必要な仕組みは何かを情報屋Aさんと一緒に考えたいのです。次回は、製造現場のデータ分類を勉強したAさんが、親父さんの絵を情報システムに置き換えながらシステム構成を提案してくれます。











