- 「これからの製造現場がもつべきインテリジェンス」
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2009.2.25
製造現場で何が起こっているのか
昨今「ものづくり」という言葉を目にする機会が随分と多くなったような気がします。IT化が進みコンピュータ化された自動設備が増加する世の中に、この原点回帰とも受け取れる言葉が溢れるのは何故でしょう? どこからともなく聞こえてくるのは「何かが違う」「こんなはずじゃなかった」といった不満と後悔の声。みんな何かを思い出したいのかもしれませんね。
昼休みに親父さんが弁当を広げていると、例の若者が雑誌を見せながら話しかけてきます。「親父さん、ものづくりをテーマにした記事がありますよ」若者は親父さんに、少しは勉強しているのを自慢したかったのかもしれません。 すると親父さんは、若者に視線をやりながらこんなことを聞いてきます。「お前は何が楽しみでものづくりをやってるんだ?」若者は親父さんの意外な質問に戸惑ってしまいます。親父さんに褒められるようなカッコいい答えを探すのですが、日頃そんなことを考えたことがない若者には即答は難しいようです。「う~ん」と唸っている若者に親父さんが「ものづくりには色んな楽しみがあるよな」と話を続けます。
新しいものを創る楽しみ、若者が成長して行く姿を見る楽しみ、親父さんは幾つかの楽しみを挙げながら「ものづくりの一番の楽しみは、使ってくれるお客さんの喜ぶ顔を見ることだよ。それが嬉しいから続けられるんだ」と若者に話します。親父さんが長年培ってきた自信と、お客さんから得た確かな信頼に裏打ちされた言葉です。それは「ものづくり」を考え始めた若者への重要なメッセージなのですが、若者がこの言葉の意味を理解するにはもう少し時間がかかりそうです。若者にとって「お客さん」とは文字通り「お客さん」であり、市場に居る人々すなわち製造現場の外に居る人という固定観念しかありません。勿論これは間違いではありません。ただ、親父さんは「製造現場の中に居るお客さん」も同じように大事にしているのです。
親父さんは一人で働いているわけではありません。若者をはじめとする同僚と共に幾つかの工程を分担して作業しています。素材からの切り出しに始まり、切削加工、組立、検査と続く作業は、どこかの工程で遅れが生じれば全体の工程が遅れてしまいます。どこかの工程で作業ミスが発生すれば、他の工程がどんなに頑張っても性能が出ません。
基本的に個々の工程は、お互いの信頼関係の上に成立しています。すなわち、前工程は次工程へ正しい物を届けることを前提に作業し、次工程は予定された計画での作業を前提に前工程から物を受け取ります。お互いが「お客さん」の関係にあり、届ける側も受け取る側も相互に依存関係にあります。工程間の良好な関係を維持し、全体工程の流れに乱れを生じさせないこと。そのためには、大きく「人」「物」「設備」に分類される製造現場の変動要因を管理する必要があります。例えば「設備は常に正常に動作する」といった勝手な仮定は許されず、そういった仮定を採用するには、正常な設備状態を維持するための取組みが必要です。同様に、素材を無限に手持ちすることも許されないことから適正な在庫量の維持や、また固定的な尺度での管理が最も難しい人の作業性を管理した上で工程内に乱れを生じさせないことが必要となります。
さすがの親父さんもスーパーマンではありませんから、全ての装置や人の状態を事細かに管理していることはできません。例えば設備の始業点検を定型化し、できるだけパラメータを固定しながら経験の中から設定した「目安」との比較を実施する。変動要因をできるだけ大まかに扱える工夫をすることで、本来の目的である工程間の良好な関係維持に必要な情報を得ています。大事なのは親父さんの設備管理のための工夫や手段ではなく、目的がいつも「お客さん」同士(工程間)の関係維持にあることです。そして、それが製造現場の外の「お客さん」との関係維持にも綿密に繋がっているのです。親父さんは、現場の変化を常に肌で知っています。だから、社長の無茶な飛び込み仕事でさえ何食わぬ顔で片付けてしまうのです。この連載のタイトルは「これからの製造現場が持つべきインテリジェンスとは?」としましたが、ひょっとしたら「製造現場が忘れてしまった知能とは?」とした方が良かったかもしれません。
どうやら親父さんの会社にもMES(製造実行システム: Manufacturing Execution System)が入ることになったようです。社長は「IT技術で生産革新だ」と意気込んでいます。親父さんはと言えば「楽しみだな」と一言。決して否定的には捉えていないようです。そりゃそうです。親父さんは人による生産管理システムを構築してきた立派なアーキテクトなんですから。次回からは、親父さんと若者のMES導入奮戦記を眺めながら、製造現場と情報屋さんとの言葉の違いや、それぞれが持つ固定観念などについて考えたいと思います。(2009年3月25日配信予定)











