- 「これからの製造現場がもつべきインテリジェンス」
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2009.1.26
製造業における経営改善とは?
製造現場をご存知でしょうか? 当たり前のことですが、製造現場とは製品を製造する現場のことです。ただ、近頃は半導体工場に代表されるように、クリーンルームに自動設備がズラッと並んだ先進的なイメージばかりを持たれる読者が多いようですが、そんな最先端の半導体工場でさえ、今も昔も製造現場を動かすのは結局のところ人なのです。
頑固な親父さんが、咥えタバコで旋盤を回します。まるで魔法のように美しい曲線が描かれ、軽く触れた指先でサブミクロンの表面粗さまで感じ取ってしまう。単なる小さな部品の一つに過ぎないはずなのに…という思いが消えてしまうのが製造現場。そして、それが日本の製造業を根底から支えてきた現場力と呼ばれる元々の姿でしょう。
とはいえ、製造現場に居るのは、そんな立派な親父さんばかりじゃありません。顔にまだニキビの跡をいっぱい作った若者だって居ます。若者はまだまだ駆け出しですから、もっぱら切り屑を集めるのが仕事で、旋盤にはまだ触れることも許されていないのです。若者はもう何年もこの現場に居ますから、親父さんがどんな手順で旋盤を回すかぐらいは知っているつもりでした。でも、親父さんが若者に旋盤を触らせないのには、ちゃんと訳があります。「あいつは、まだ仕事の勘所が分かってない」親父さんはそう言ってまたタバコに火をつけました。
ある日、親父さんのところへ社長が慌ててやってきました。どうやら急ぎの仕事が飛び込んで来たようです。何でも大事なお客様から親父さんの腕を見込んでの依頼のようですが、このところ、この手の飛び込みの仕事が多く、親父さんは頭を痛めています。
突然、仕事の段取りを変更しなければいけないということが、製造現場にとってどれほど大変なことか賢明な読者の皆さんにはお分かりでしょう。生産計画の変更と単純に表現することも可能でしょうが、実はここからが親父さんのもう一つの腕の見せ所です。
素材在庫の確認、仕掛品の退避、設備の段取り変えなど、それだけの下準備をしたうえで、ようやく加工の条件出し。社長の目からは「旋盤加工の名人」としか見えない親父さんが、実は現場を回しているのです。飛び込み品に対応し、それが終われば、いつの間にか当たり前のように普段の仕事をこなしています。親父さんが若者に求める「仕事の勘所」とは、一つには旋盤の状態を自分の目や耳でセンシングしながら加工する技術ですが、親父さんは、同じように大事なこととして、現場には実際の加工作業以外にもやらなければならない多くのことがあることを知って欲しいのです。旋盤加工をしている時の親父さんの姿は、若者にとって眩しい限りで、早くあんな加工ができるようになりたいと、若者は羨望の眼差しで親父さんを見つめます。光の部分だけに目が行くことで、その影に隠れた大事なものが見えていないのです。
間もなく引退する親父さんは、若者に加工技術だけでなく、現場を引き継いで欲しいと思っています。社長は相変わらず現場を「指示すれば作ってくれる加工の場」としか思っていませんから、実際に現場で何が起こっているかも知らずに、高品質の製品をもっと早く大量に作ることしか求めてきません。それが「経営の視点から見た改善」指示であり、日本の製造現場はそれを「現場の改善」に噛み砕いて実践することで現場力を磨いてきたのです。
現場から親父さんの数が減り、また大量生産を余儀なくされる環境の中で、日本の製造現場は「現場改善」の活路をIT技術に見出そうとしています。しかしながら、親父さんのように上手くいかないのが現実です。それは単に加工が複雑化したとか生産数量が膨大になったからという理由だけで説明できるものではないのです。
次回は、親父さんが現場で何をやっていたかを考えながら、どうしてIT技術の適用が思うように進まないのかを考えたいと思います。(2009年2月25日配信予定)











