- 「先行生産技術の開発」
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2009.11.25
製品生産マスタープラン
1. マスタープラン型開発製品開発期間が短縮化されている中で、タイムリーに先行技術を開発するためには開発作業を効率的に行う必要があるが、その際、開発した技術をできるだけ多くの製品に活用するという視点が重要だ。そのためには製品を群としてとらえ、その中で開発した技術をどの製品に、どのタイミングで適用するかということを計画的に行う必要がある。それらを計画的に進めるのが「マスタープラン型開発」(図表3-9)である。
図表3-9 マスタープラン型開発
マスタープラン型開発で描くのは技術開発の計画だけではない。生産技術という立場で見ると、将来の目標コストを睨んだコスト削減法や、将来の生産量確保や物流という観点から生産量の拡大方策、生産拠点の展開策……などを中期的な売上や生産計画を基に計画していくことが重要である。
まとめると、マスタープラン型開発とは「事業戦略・顧客開発戦略・市場開発戦略にもとづいて、中期的な技術開発・商品開発・生産革新のロードマップを描き、効果的な進め方を構想すること。自社開発のみならずアライアンスを含めた総合的な開発・生産革新戦略とその計画」である。
多くの企業で「中期経営計画」や「中期事業計画」を作る。マスタープランは、それをそれぞれの機能の関連を明確にして表にまとめたものと考えると理解しやすい。中期的にお客様にどのような価値を提供していくか、そのためにはどのような商品を提供し、どのような技術を開発し、生産拠点をどのように展開していくことが必要か、連携した計画を作成して実行していくということである。
現実の計画作りでは、関連付けを明確にしている企業は少ない。各部門では、関連部門との関係が十分に検討されず、実現するための課題も検討されないまま、絵に描いた餅になりそうな計画を提出しているのが現実である。
対外的には、ステークホルダーに対して、どのように企業価値を高めていくか計画を示すものであるが、重要なのは計画を実現することの社内的意味である。中期的に経営計画や事業計画を立案する意味をもう一度考えて欲しい。
激しい開発競争の中で、競合他社に先行して商品を上市するためにマスタープラン型開発は不可欠の要素である。中期の商品展開を展望し、必要となる技術を先行して開発し、技術の引き出しを準備する。そしてユニット、キーパーツを先行開発し、組合せ対応により、タイムリーに多機種を市場に投入できる。リソースという観点で見ても、商品群全体を捉えた開発を実施するために開発資源の有効活用が可能となる。(図表3-10)
図表3-10 マスタープラン構築
製品生産マスタープラン
2. マスタープラン立案における基本的考え方マスタープラン立案において、スタートは。
1)将来の顧客への提供価値から検討する
2)固定/変動化構想は商品を群で捉えた中で進める
3)顧客に先行し、他社に先行し、商品開発に先行するの3つの基本的考え方がある(図表3-11)図表3-11 マスタープラン立案における基本的考え方
1)将来の顧客への提供価値から検討する1つは、「検討のスタートは将来の顧客への提供価値」ということである。生産技術部門にとっては「顧客」は遠い存在だが、どのような商品を提供するかの前に、どのような価値を提供するかが大切なのである。
何年サイクルでモデルチェンジする、などは企業側の言い分である。最終消費者は入手できる情報量が拡大し、知識も豊富になっている。企業側の都合など見透かされる。「顧客にどのような価値を提供したいのか」がまず重要なのである。この「顧客にどのような価値を提供したいのか」の議論には、最終消費者から遠い生産技術部門からでは入りにくいと思っている人が多いかもしれない。しかし、成熟化した商品が多い今の世の中では、差別化に繋がる技術や、低コストを実現できる技術のネタを持った生産技術部門は非常に重要な役割を担っている。
2)固定/変動化構想は商品を群で捉えた中で進める2つ目の基本的考え方は「商品を群でとらえた中での固定/変動化構想」である。限られたリソースの中で効果的に、タイムリーに技術開発を行うには、「プラットフォーム」という考え方を取り入れることが重要である。
マスタープラン型開発ではプラットフォームを、
①製品プラットフォーム、②生産プラットフォーム、③技術プラットフォームの3つに分けて捉えている。① 製品プラットフォーム
マスタープラン型技術開発では、個別の商品ではなく、将来の複数シリーズにまたがったシリーズでの企画を考える。その中で、あるユニットを共通でいくか否かを予め検討しようというのが、製品プラットフォームである。
「固定/変動化」とは、製品および生産の構成を、市場ニーズに対応して変動させなければいけない部分(=変動部)と、設計や生産の効率化を重視してできるだけ固定化させたい部分(=固定部)を明確にするということだ(図表3-12)。この固定/変動化の狙いは、市場ニーズと生産ニーズの矛盾を解くことにある。この「固定/変動化」を検討する際にはいくつか注意しなければいけないことがある。図表3-12 固定/変動化
[注意点1] 変動部から検討する
マスタープラン立案の基本的な考え方は、「顧客への提供価値がすべてのスタート」なのである。「変動部」とはその商品の個性を表す部分である。最終消費者のニーズの違いはどこなのか? そこが明確に異なるからこそ複数の商品ラインナップが必要であり、そこが不明確なラインナップは不要なのである。そのため、まず「変動部」はどこなのか、あるいは どのように変動させることが顧客への提供価値につながるのか……を明確にすることが重要なのである。
[注意点2] 固定部には寿命がある
数年にわたり固定部として生かし続けるためには、技術の成熟度をよく考慮しながら固定部を設定することが必要になる。対象ユニットや部品の技術の成熟度を見たときに、まだ技術として発展中であり、異なる方式が次から次へと見出されているようなときには、そのユニットや部品を固定化することは難しい。
また性能で見ても、そのユニットの性能が商品競争上の重要ポイントであり、性能競争が非常に激しいような時には固定化することは困難である。
[注意点3] 製品と生産を連携して固定/変動を考える
3つの注意点は「製品と生産を連携して固定/変動を考える」という点がある。ここで2つ目のプラットフォームとして、「生産プラットフォーム」の設定が必要になってくる。(図表3-13)図表3-13 製品・生産マスタープラン
②生産プラットフォーム
生産プラットフォームとは、製品プラットフォームに対応して、生産拠点・ライン・工程・設備の固定/変動化をどのようにするのかを描いたものである。
製品プラットフォームと生産プラットフォームを連動させてデザインしないと目標コスト達成は難しい。いくら製品側で固定にしたからといって、生産側でそれを考慮したつくり方になっていないと、安いコストではつくれない。セットで考えるということが重要なのである。ここで生産技術部門に重要な姿勢が「受身にならない」ということである。③技術プラットフォーム
そしてもう1つのプラットフォームが、これらのベースとなる「技術プラットフォーム」である。有名なものにアメリカの3Mのテクノロジー・プラットフォームがある。「接着」「不織布」「画像」など30~40のプラットフォームを定めて、それぞれの分野で強化に取り組んでいる。
どのような技術プラットフォームを作るか、どの水準まで技術プラットフォームを上げるかを将来の消費者への提供価値を基準にしながら、製品プラットフォーム、生産プラットフォームと連動させながらデザインしていくことが重要なのである。ここでデザインするプラットフォームは、製品に関わる技術だけではなく、生産技術についても同様に計画・開発・蓄積していくことが重要である。
3)顧客に先行し、他社に先行し、商品開発に先行する3つ目の基本的考え方は「消費者に先行し、他社に先行し、商品開発に先行する」ということである。マスタープラン型技術開発により狙っているのは「市場と技術を同時に開発する」ことである。新しい技術に基づいて新しい市場を作っていくのである。消費者にどのような価値を提供していくのかを描き、それを実現する技術開発計画を同時に立案し、潜在ニーズへの新しい価値をタイムリーに提供することにより、新たな市場を創造していくのである。(図表3-14)
図表3-14 マスタープランの狙い:市場・技術の先行同時開発
製品生産マスタープラン
3. 製品マスタープランに基づく生産戦略製品マスタープランと生産マスタープランの連携の必要性について、ここでもう少し詳しく見ていきたい。生産マスタープランとは、生産のプラットフォームを描くことで、事業計画や製品プラットフォームをタイムリーに実現するためには生産プラットフォームを先行的、計画的に作り上げることが重要である。
事業計画を受けて、どの地域にどの商品をどのくらい提供するのか、それに対応した生産能力を確保するには生産拠点・物流拠点・労働力をどのように確保・整備するかを描く。事業計画に対応した材料や部品の調達を行うための外注企業や購入先企業との連携をどのように展開するかを計画することも必要である。
中期経営計画をしっかりと作っている企業はこの点はできているだろう。事業計画が与えられれば、生産部門でもある程度は立案できるが全体最適に繋がるような計画を立案し、効率やコストの厳しい目標を達成している企業は少ない。これを実現するのが製品・生産マスタープランである。
そうした製品・生産マスタープランを作るためには、製品・ユニット・部品・材料レベルの固定/変動化に対して、生産拠点・ライン・工程・作業レベル……で、どのように固定/変動化を実現していけば、もっとも全体最適な低コストの生産構想が描けるかを検討しなければならない。生産技術部門や製造部門としては、それを受身で行うだけでなく、目標コストを達成するための提案なども行うことが必要である。
さらに技術開発をタイムリーに行って製品開発につなげるという観点では、生産マスタープランにはどのような生産技術を開発していくかも明確にすることが必要である。製品マスタープランで設定された製品の機能・性能目標やコスト目標の達成のためには生産技術の先行開発が欠かせない。
製品生産マスタープラン
4. コストダウンからコスト開発へ商品開発期間が短縮化するなか、商品開発・設計段階で大幅なコストダウンを実施することは難しく、製品の短命化が進む現在、量産段階でのコストダウンはさらに困難である。「設計段階でコストの大半が決まる」とよく言われるが、最近の商品開発では、設計のもっと前でコストの大枠が決まっているのが現実だ。
商品開発・設計段階の「コスト設計」や量産段階での生産や調達の改善による「コスト改善」は重要だが、大幅なコスト革新をしようとするとその段階ではなかなか難しい。最近の商品開発では設計段階でのコスト革新余地が小さくなっているのである。そこで重要になってくるのが「コスト開発」という考え方である。
コスト開発とは、中期的な商品戦略、利益計画に基づき、将来の目標コストを達成するために、商品開発に先行して、各部門が連携、併行してコストを作りこむ取組みをいう(図表3-15)。「コスト開発とはコスト可能値を高める」こと。コスト可能値とは、商品開発がスタートする段階で、今回の商品ではどれくらいのコストダウンができるかという可能性の値をいう。
コストダウン目標は、通常は、コストダウン競合他社との関係や市場での値頃感と、どれだけ利益を出したいかの必要性から設定されるが、結果としてできた商品のコスト実現値はコスト可能値とほぼ同じになることが多い。ということは、大幅なコストダウンを実現しようとすれば「コスト可能値」を高めるしかない。この「コスト可能値」を高める取組みが「コスト開発」なのである。
コスト開発においても重要なのは、製品マスタープラン、生産マスタープラン、技術マスタープランの3つのマスタープランを、将来の目標コストに連携させることである。この3つのマスタープランを連携させて計画し、実現していくことが「コスト可能値」を上げていくことに繋がるのである。
図表3-15 コスト開発の定義
製品生産マスタープラン
5. コストイニシアチブを高めるコスト開発を進めるために重要な視点として「コストイニシアチブが取れているか?」ということがある。部品や材料を調達する上で、自社が交渉主導権を保持しているかどうかである。コストイニシアチブの度合いが低いとなかなかコスト目標が達成できないということになりがちである。コストイニシアチブを取るためには4つの視点がある。(図表3-16)
① 調達量を増加させることによりイニシアチブをとる
② コスト把握水準を高める
③ 内製化できる同様の技術を持つ
④ 技術の内外作を検討する図表3-16 コストイニシアチブ
① 調達量を増加させることによりイニシアチブをとる1つ目の視点として「調達量を増加させることによりイニシアチブをとる」ということがある。調達先に対して、調達量の比率が低いとなかなかイニシアチブは取れない。その場合に、「固定/変動化」も一つの有効な手である。不要なバラエティを削減することにより、1品あたりの調達量を増加させる方法である。さらに自社だけでなく、世の中の標準品を多く使用する、あるいは、もう一歩進めると会社間での共同購買という方法もある。
② コスト把握水準を高める2つ目の視点としては、「コスト把握水準を高める」ということがある。コストを把握するということは「コスト発生要因」を把握するということであり(図表3-17)、単に購入価格を把握するのではなく、なぜそのコストになっているのかということを把握することである。
例えば、1,000円である部品を調達している場合に、なぜその部品は1,000円なのかということを徹底的に追究することである。1,000円になっている原因は必ずある。そこをどれだけ把握しているかで、交渉の仕方も変わる。コスト競争力が高い企業の調達部門は間違いなくこの力が強い。図表3-17 コスト発生要因例
③ 内製化できる同様の技術を持つ3つ目の視点として、「② コスト把握水準を高める」の延長になるが、いざとなったら内製化できる同様の技術を持つということである。すべての部品について内製化技術を持つことは困難だろうが、オープンイノベーションの時代には自社だけでの技術開発にこだわる必要はない。コストウェイトが高い部品や材料については外部との連携も含めて技術開発を進めることも必要な場合がある。
④ 技術の内外作を検討する4つ目の視点は、技術の内外作の検討である。
先行技術開発テーマを検討する際に問題になるのがリソースである。重要性は高く、先行技術を開発しないと商品開発に間に合わないがリソースが足りない、という場面はよくある。その場合、どのテーマを社内で開発し、どのテーマを社外と連携して開発するかを検討するために内外作評価が必要となる。
通常は、その技術は差別化のキーとなるような重要な技術なのか、あるいはそれほど重要ではない技術なのかという「技術重要性」によって内外作を検討する。重要性の高い技術は差別化の上でキーとなるような技術は付加価値が高く、商品開発計画に大きな影響を与える場合が多いために、タイムリーにマネジメントアクションが取れるように自社内で技術開発を行うことになる。
しかし重要性の高い技術でも、一時的な「割切り」が必要な場合がある。それは「重要だが、自社内のリソースで開発していては商品開発のタイミングに間に合わない」というような場合である。あとで社内に取込みたい重要技術なら、割切ってその時だけは外部を活用するという決断が時には必要である。将来を考えた時に重要技術を外に依存するのはデメリットが大きいからである。
ここで、技術の内外作について整理しておくと、メリットとしては、・開発人員や資金などリソースを重要な部分に集中化できるので、社内に残す コア技術の強化をより効果的に進めることができる・外部に委託した技術に関しては社内で技術開発を行うより時間、および費用 をかけずに手に入れることができる・商品開発にタイムリーに適用できる・これらを通じて研究開発費を抑制できる……などがある。 一方デメリットとしては、・外部に委託した技術については技術がブラックボックス化してしまう・技術の将来像が把握できず、開発戦略が自社で検討できない・品質的な問題が起きたときに自社では対策が打てない・コストが見えなくなり、コストイニシアチブは取れなくなる……など、ブラックボックス化することで、中身が見えなくなり、それが開発の途中であれば開発に遅れを生じるし、市場投入後であれば市場からの評価を大きく下げることになりかねない。製品生産マスタープラン
6. マスタープランによる機能連携製品・生産マスタープランのポイントは「中期的な技術開発・製品開発・生産革新の連携」であり、その効果を最大限にするには各部門別に中期計画を作成するのではなく、マスタープランを軸にして共同で作成することである。作成したマスタープランの例を図表3-18に示すが、できればこのように一表にまとめると良い。
この例では左部分に、製品マスタープランとしてこの何年間かで計画している製品群とそれを構成するユニットに対する「固定/変動化構想」を描いている。真ん中にそのユニットにおいての機能・性能目標やコスト目標を実現するためにどのような技術テーマが必要かという技術マスタープランを描いている。そして、右部分にそれを製造する中でのコスト目標や品質目標を設定し、事前にどのような改革を検討していくことが必要か、どのように進めていくのかを明確にしている。これらを明確化し、意識をあわせていくことが重要で、一表にまとめようとすれば、共同で検討しなければならなくなるのである。
また、このような開発の進め方をしようとするとスタッフ部門の役割も重要になる。部門間が効果的に連携を取れるようにするのがスタッフの役割である。スタッフとしては、とかく自部門の利益や都合を主張しがちな部門に入り込み、全体最適の視点で意見を述べたり、具体的な解決案を提示したり、調整をしたりする本来の役割をしっかりと果たすことが大切である。
スタッフ部門の一人ひとりが「自分自身が横串だ」という意識で、部門を横断的に動き回るように心がけなければならない。
図表3-18 「製品」「技術」「生産」マスタープランの連携











