- 「先行生産技術の開発」
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2009.9.28
生産技術の「想い」の明確化(受注型生産技術から提案型生産技術へ)
1. 生産技術を取巻く環境と課題ここであらためて生産技術を取巻く環境を整理してみたい。
顧客の要求が高度化してきたことにより、提供する商品の機能・性能はますます複雑・高度になってきている。そうした高機能な商品を生産するために生産技術の役割はより重要になっている。また、多様化が進み、競合他社との競争が激化してきたことから、開発の短納期化や低コスト化に対する要望も高まっている。
その中で、開発設計支援ツールである3D-CAD やCAE は導入されているものの、その機能を十分に使いこなせてはいないため、品質・開発期間短縮・コストダウンの同時要求に開発、生産ともに追いつけない状態になっている。企画・設計・生産技術・生産の連携が薄くなってきているのである。
また、海外生産の拡大に伴い、国内の生産技術者が海外の生産準備に追われ、生産技術者が慢性的に不足したり、技術の伝承が行われなかったりすることで、国内の生産技術力の弱体化を招いているケースも少なくない。熟練技術者が少なくなってきている現在、これらは生産技術部門にとって由々しき問題である。
このような環境のなかで生産技術部門が取組んでいかなくてはならない課題としては図表3-1に示すようなものが考えられる。
「源流段階から取組むことで手戻り・後だれを防止する」ためには、開発・設計と生産技術が連携しあい、技術・品質要件を整合させ、コスト要件の検討をコンカレントに実施することが必要である。また、生産準備段階では漏れのない全体最適な活動を展開し、効果的な初期流動管理を行うことも重要となっている。
源流段階からの開発設計と生産技術の連携を効果的に推進するためには、商品開発のための技術の引出し作りを開発設計、生産技術の双方で事前に実施しておくことが求められる。
「技術基盤の構築」は生産技術としてのコア技術を明確化し、自社が有する技術を体系化して形式知化し、伝承を図る仕組みを構築することの重要性を示している。それを実現するために、自社の技術の強みや弱みを明らかにして、今後必要な技術を設定し技術開発を展開する仕組みづくりが重要である。
図表3-1 生産技術課題
生産技術の「想い」の明確化(受注型生産技術から提案型生産技術へ)
2. コンカレントエンジニアリング源流段階からの取組みによる手戻りや後だれを防止する方法としてコンカレントエンジニアリングがある。1980 年代にボーイング社が、航空機の開発に適用したのが始まりである。非常に多くの部品や人員が関わる航空機の開発で、開発過程での手戻りや、やり直しが発生すると開発ロスは膨大なものとなる。また、開発設計が終了してから生産準備や生産設計、調達をしていたのでは開発期間が非常に長くなってしまう。このような問題を解決する手段としてコンカレントエンジニアリングが生まれた。
コンカレントエンジニアリングは「同時併行推進」と「機能交差(クロスファンクショナル)」の二つの概念で推進される。
同時並行は、源流段階で開発構想を明確化し、共通認識化することでそれぞれの機能部署が同時に開発に着手するということである。また、機能交差は各機能部署が仕事を受け渡すという形ではなく、各機能(仕事)のインターフェースを充分に検討しながら推進する方法で、それぞれの部署が仕事に壁を作るのではなく、充分なやり取りをしながら仕事の抜けや漏れを防いでいく方法である。
図表3- 2にコンカレント展開のイメージを示す。商品開発の過程でマイルストーンを明確にし、いつまでにどの部門が何をしなければいけないかの計画を同時並行、機能交差の視点から作成することが求められる。
図表3-2 コンカレントエンジニアリングの展開
生産技術の「想い」の明確化(受注型生産技術から提案型生産技術へ)
3. コンカレントエンジニアリングの展開コンカレントエンジニアリングは、開発の源流段階から関連部門が集まって、事前検討を実施し、課題抽出を行い、同時並行で解決活動を展開しスムーズな立上げを実現する、製造業では当たり前になった活動である。
ある企業では、全体構想審議会なるものを設けて源流段階で全体構想書を作成し、商品の企画内容を整合させた後、各部門がその目標を達成するために何をいつまでにすべきかを明確にした計画書を作成して、同時にスタートしている。
このコンカレントエンジニアリングを展開するためにはプロジェクトマネジメントも重要になってくる。プロジェクトマネジャー(PM)が各関連部門の進捗状態を把握しながら、プロジェクト推進上の問題や課題を明確にして、その解決を適時図っていくことになる。コンカレントエンジニアリングとプロジェクトマネジメントは商品開発を効果的に推進するための両輪である。
また、進捗状態を把握し、各部門の活動内容が見えるようにすることも重要で、管理の方法は、エクセルやスケジュール管理ツール、PDM(ProductData Management)等を活用するなど多岐にわたる。コンカレントエンジニアリングを概念的にイメージすることは簡単だが、実運用を行うためには仕組みや仕掛けが必要なのである。
生産技術の「想い」の明確化(受注型生産技術から提案型生産技術へ)
4. 集まるだけではコンカレントエンジニアリングはできない源流段階から関連部門が集まり、事前に課題を抽出し、その解決策を検討していくことで、手戻りややり直しが削減できるというのは概念的にイメージしやすい。しかし、では源流段階で関連部門が集まれば、コンカレントエンジニアリングがうまく展開できるかといえば、そういうわけではない。コンカレントエンジニアリングを展開している現場でよく次のようなことを目にする。
商品開発の構想段階で設計部門、生産技術部門、調達部門、製造部門が集まり、事前課題出しの検討を実施している場面で、設計者が企画構想を説明すると、製品のスペックは? 構造は? 図面はあるのか? などの質問が出される。構想段階は大まかで粗い。その構想に対して、他部門がこのような質問をしていたのではコンカレントエンジニアリングは成立しない。
これからスペックや製品構造を検討していく場面で、そのアウトプット自体を求めるのでは、関連部門が事前に集まって検討する意味はない。構想段階のこの場面で関連部門が知恵を出してくれるからコンカレントエンジニアリングが成立するのであって、これでは集まる意味がない。時間の無駄である。
なぜこのようなことが発生するかというと、集まった生産技術部門や調達部門が自分たちの将来構想(想い)を描いていないことに起因している。これからの生産拠点構想や新たな工法、設備の採用方針、生産方式に対する方針等を持っていないために、構想段階で開発設計に対して提案ができないのである。 有効なコンカレントエンジニアリングを展開するためには生産技術部門としての中長期視点での「想い」、すなわち生産技術戦略や先行生産技術の開発計画が必要になってくる。構想段階で関連部門がそれぞれの観点からどれだけアイデア、知恵を出せるかが決め手なのである。
生産技術の「想い」の明確化(受注型生産技術から提案型生産技術へ)
5. 役割革新の必要性コンカレントエンジニアリングを機能させるためには、自分たちの方針を明確にして、積極的に他部門へ働きかけることが必要になってくる。
このためには、既存の各部門の分業体制から各部門が役割・機能をオーバーラップさせて、役割革新をする必要がある(図表3- 3)。たとえば、商品企画部門は、従来は市場分析を通じて新商品コンセプトを立案するという役割であった。しかしコンカレントエンジニアリングを有効に実施していくためには、設計、調達と連携して新商品の各機能のコストトレンドを分析し、最適部品の選定をふまえ、商品コンセプトの立案と出荷後の売上保証まで行うという役割まで担うことが必要である。
また生産技術部門についても、従来は設計後期から参画してきたが、これからは設計初期から参画し、品質、コストを徹底的に意識し、設計部門と一緒に目標コスト達成検討を行い、生産期間短縮を工場と連携して推進するといった役割も期待されてくる。自ら積極的に他部門に働きかけるために、どのような役割を展開すれば良いかを検討することが必要になってくるのである。
図表3-3 役割革新の必要性











